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釣りを楽しむ主従(2)

すみません、間違って消しちゃいました………





「噂?」



俺が聞き返すと、キラリと目を輝かせたゴードンさんが嬉々として話し出す。



「ええ。なんと、ここの湖には(ぬし)がおるそうなんですわ。それもうんと巨大な───────」

「あっ、じいちゃん!勝手に一人で行くなって言っただろ………!」



それを遮るように、向こうから一人の青年が焦ったように走ってきた。

あれ、この子は見覚えあるな。

たしか村の食堂で女将やってる人の息子さんだった気がする……………たぶん。


青年はゴードンさんにヒソヒソと一言二言何かを喋ると、俺の方を向いて突然頭を下げた。

ど、どうしたの?



「すみません剣聖様………うちのじいちゃん、何か無礼なことはしてませんでしたか?」

「ああ、そういう事か。大丈夫大丈夫、俺そういうの気にしないタイプだから」



別に敬語使ってないからって怒ったりしないよ?

と言うかむしろタメ口で良いんだけど………村の人達は頑なに敬語をやめようとしないんだよなぁ。

それだけ尊敬されてるって事なんだろうけども。



「それよりゴードンさん、さっきの話の続き聞いてもいいですか?」

「ええ、そりゃもちろんですよ」



ピッ!と竿を引いて魚を釣り上げたゴードンさんは、眉間に手を当てて頭痛を堪えるようにしているお孫さんを置いて嬉しそうに話を再開した。



「ええと、どこまで話しましたかな…………ああそうだ、"巨大な陸魚"という所まででしたな。ここの湖にはですね、家屋程の大きさの陸魚が住んどると言われておるんですわ」

「そんなのどうせ迷信だろ…………」

「まぁまぁ。それで、実際のところ釣れたことはあるんですか?」

「ヒットまではしました」



ため息とともに言葉を吐き出した青年をなだめそう聞き返すと、ゴードンさんはにやりと笑い深く頷く。

しかし、すぐに残念そうな顔で釣れた稚魚をリリースしながら。



「ただ………私の力不足で逃がしてしまいまして。とんでもない力で竿ごと持っていかれましたよ。ありゃとんだ化け物です」

「ほえ〜……ここにそんな魚が」



どうやらこの話は釣り人界隈では有名な話らしく、多くのベテラン釣り師が集まったパーティーでは、週に二、三回ここに来て主を狙うのが恒例行事と化しているのだとか。


ふ〜む………面白い情報を聞けた。

ここに主がいるなんて初めて聞いたけど、もし本当だったら面白そうだ。

俺も主目当てで定期的に釣りしに来ようかな…………。

まあ俺はゴードンさんほど上手くないから、まずは釣り自体の腕を上達させなきゃだけど。



「………それでは、今日はもう上がりましょうかな」

「お疲れ様です。たぶんまたここに来ると思うんで、その時はまたお話聞かせてください」

「ははは、私ので良ければぜひ。マシロさんも主を狙うのでしたら、気をつけて───────」



バシャッ!

バシャバシャバシャッ!!



ゴードンさんを見送ろうと湖から離れた途端、大きな水しぶきを上げて水面が波紋状ににさざ波を立てた。


振り返ると、クロが顔を若干しかめながら一生懸命竿を引いている。

繋がれた糸は誰が見ても分かるほどびぃん、と張り詰め、竿は今にも折れてしまいそうなほどしなっていた。



「おおっ、あの引きは主です!」

「え、マジか………」



青年が「マジで主なんて存在したのか……」と唖然とする。

すご………クロが本気で引いてるのにビクともしてないぞ。

むしろ、段々と突っ張った足で地面を削りながら湖の中に引きずり込まれ始めた。

冷静に考えて、魔王に圧勝するクロが力負けするくらい引きが強いってやばくない?



「っ、クロ!竿が折れそうだから、魔力で補強するんだ!」

「……………っ!」



叫んだが、クロから返答がない。

うわぁ!メキメキ言ってるって!あ、今パキッ!て音しなかった!?

絶対どこかヒビ入ったでしょ!

どうしたのクロ!?



(あるじ)、知ってるはず」

「な、何を?」

「………………………クロ、魔力操作苦手。無念」

「だああああああそうだった!!今行くぞクロ!」



そういやクロは魔力操作系の繊細な作業は苦手だったね!








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