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お姉ちゃんを自称する女神


番外編スタートです!





世界を震撼させた第二次聖魔戦争から一年ほど経った。

既に多くの人々がかけがえのない日常を取り戻し、戦前と変わらぬ暮らしを送ることが出来ている。

もちろん全く変化を受けないなんて事は不可能に近く、誰しもが何かしら受け入れなければいけないことを抱えて、それでも戻って来た平穏を享受して毎日を過ごしてる。


また戦後に残っていた古代の魔物についても、まだ完全には駆逐出来ていないとの報告を貰った。

そもそもの総数を測ることが困難なため断言は出来ないが、今も世界の各所でひっそり暮らしていたり、時には山の生態系の頂点に君臨していたりと。

比較的無害(?)な個体が多いそうだ。

人間に害を成す個体は戦後すぐに俺達を中心とした冒険者や、国軍が討伐したためほとんど壊滅状態。

たまに人里の近くで暴れる魔物が居ない訳では無いが、もはやその対処もお手の物だ。

おかげで最近は「討伐を手伝ってくれ」なんて要請も滅多に来なくなった。

どうやら冒険者の平均的なレベルも急激に上昇しているらしい。

そんな訳で、我が家も存分にこの平穏を享受させてもらっている。



「ん〜」



膝の上に乗っかったクロの猫耳や髪を撫でくりまわしていると、気持ち良さそうな声とゆらゆら揺れた尻尾がぺしぺし俺の腕を叩いて絡み付けられた。

押し付けられた後頭部からはお日様の暖かくて良い匂いがする。



「真っ昼間からゴロゴロするのって最高だなぁ、クロ…………」

「ん、罪深い行為…………」



窓から差す柔らかい日差しを浴びながらふにゃふにゃに絆された俺とクロは、そのまま溶けてしまいそうな声を零しながらソファの背もたれに全体重を預ける。

自分で言うのもアレだが、これでもかとリラックスした体勢だ。

俺とクロの仕草があまりにも似ていたせいか、隣で編み物をしているアイリスと台所に居たレイラから微笑ましいものを見る目が向けられた。


…………あ〜、なんか眠くなってきた………。

日差しとクロの毛並みがあまりにも心地よすぎる。

まるで本物の猫を抱えている気分だ。

このまま二人で昼寝をしてしまおうか…………。

もはや微睡みに入りかけ、ボヤけた思考でそんな事を考えていたその時。




「──────たのも〜!…………あ、マシロ君みっけ♡お姉ちゃん遊びに来ちゃった♪」

「お帰りください」




何の前触れも無く玄関のドアを押し開け、軽快な足取りで我が家の平穏を乱そうと踏み入った女性向けて、俺は冷ややかな目で回れ右を促した。

しかし当然ながらと言うべきか。

人の話を聞かないで定評のある彼女は律儀に脱いだ靴を揃えてから、すすっ………と俺の背後に回り込み勢いよく抱きついた。

後頭部に押し付けられた特大のメロンが変形して沈み、ふわりと香る甘い匂いが鼻腔をくすぐる。



「もうっ、つれないなぁ………。そんな風に言われちゃうとお姉ちゃん傷付いちゃうゾっ!」



めっ!と細い人差し指で俺の頬をツンツンしながら、満面の笑みを浮かべた女性は上機嫌に頬を擦り付ける。

これでもかと襲いかかってくるもっちもちの感触が俺を狂わせようと画策するが、しかし残念ながらその戦略に嵌る俺ではない。

ふっ………と堂々たる仏のような表情で全てを受け流す。

もちろん、胸部に顎をくっ付けて据わった瞳をこちらに向けるクロの凍てつく視線も。



「……………」



せめて何か喋って欲しい。

普段とは違い猫のように縦に割れた瞳孔をかっ開いてじっと俺を見つめ、微動だにしないその姿はまさに野生の狩人とも言うべきか。

柔らかさと鋭さの板挟み状態だ。

そんな中でも自称お姉ちゃんは相変わらずの呑気で自由奔放な姿勢を全く崩すことなく、よしよしと俺の頭部を撫でながらさりげなくシャツをめくってすすっ………と指を滑り込ませる。

まさかの逆セクハラ。

しかしそれを見逃すクロではなかった。



「んっ!」

「あいたっ!?」



明らかに仮にも弟と呼ぶ相手に向けるはずのない感情を瞳の奥にチラつかせた事で、クロがすぐさま反応。

凄まじい反射神経で伸ばされたお姉ちゃん(自称)の手の甲に渾身の猫パンチをお見舞した。

あまりに素早く鋭い一撃。

女性は思わず手を引っこめて困ったように眉を寄せる。



「いたぁ〜い!ねぇねぇマシロ君、可哀想なお姉ちゃんをよしよししてくれる?」

「100%あなたが悪いと思います、はい」



シャーッ!と威嚇するクロから逃げるため俺を盾にしながら甘い声でそう訴えるが、仏のように全てを悟ったかのような表情の俺は敬語で聞いてない振りをすることしか出来ない。

これが唯一、「私は関係ありません」と家中から集まりつつある気配に対して出来る言い訳だからだ。


俺を挟んだキャットファイトが白熱する前に、ドタバタと一番最初にやって来た気配が勢いよくリビングに繋がるドアを開いた。

荒ぶる銀髪と神気を前に、自称姉は意地悪そうな笑みを浮かべて俺の首に回した腕に力を込め、さらにギュッと抱き締めて自慢の双丘を押し付ける。

後頭部が柔らかなものに包まれて沈んだ。

それを見て、駆けつけた幼女…………ノエルの額にビキッ!と青筋が浮かび、眼前のクロの瞳からはハイライトが消えた。



「こらぁああーーーーっ!!"ウルズ"、さっさとマシロから離れるのだ!!!」

「ん、こいつは生かしておけない。万死に値する」

「クロ、ステイ。ステイステイッ」



どこからともなく見たこともない形状の武器を取り出したクロを慌てて抱き締め、フィジカルの高さにものを言わせ押さえつける。

するとしばらく腕の中でじたばた暴れたかと思えば、次第に大人しくなり、最後にはモゾモゾ動いて俺の胸に顔を埋め丸くなった。

ゴロゴロ喉を鳴らしているのでどうやら落ち着いたらしい。

俺は額の汗を拭いつつ、これまたいつの間にか消えた先程の武器を思い浮かべ…………。


いやあれ、確実に暗器じゃなかった?


一体どこから仕入れたのか。

どこぞの暗殺者が持ってそうな隠密性と殺傷能力が高いかつ、痕跡が残りづらいそっち系の道具だった。

もしかしたら知らぬ間に身内が暗殺者になっていたのかもしれない。

そんな冗談はさておき。


ソファの背もたれに寄りかかったまま頭を傾け、逆さになった世界で後方のやり取りに目を向ける。

そこでは俺から引き剥がした女性の胸ぐらを掴み、ぶんぶん前後に揺すってノエルがお怒りだった。

些か当たりが強すぎるようにも思えるが、二人の関係性を知っている身からすると何とも言いづらかったりする。



「ちょっとぉ〜、久しぶりの再会なのに酷いじゃなぁ〜い」

「人の旦那に手を出そうとしたのだから、当たり前の反応なのだっ!」



ノエルは、天界で修行していた頃から俺をこの女性と接触させることを過剰なまでに嫌がっていた。

その理由は先程の出来事を見ていれば自ずと分かるだろう。

彼女は気に入った相手へのダル絡みがそれはもう凄いのだ。

距離感もバグってる。

そのためノエルからしたら天敵とも言うべき存在。

アイリスやクロを始めとした新しい嫁達が増えたとしても、彼女に対する接し方は変わらないらしい。

まぁ()()()()()()、色々とあるのだろう。



「…………ええと、それでウルズは─────」

「"お姉ちゃん"よ」

「ウルズは何で─────」

「お姉ちゃんって呼んでくれるまで答えてあげなぁ〜い」

「…………ウルズ姉ちゃんは、何でここに来たの?」

「可愛い弟に会うために決まってるでしょう?」



微笑みながらの答えに前後の揺さぶりが激しくなる。

それに伴って巨大な果実も激しく揺れ、それがノエルの顔面にクリーンヒットしさらに激しくなる揺れ。

もはや永久機関だ。

俺としても目のやり場に困るんだが…………。

次第に服がはだけ始めて妙に艶のある声になりつつあるウルズから目を逸らしつつ、俺は再び問う。

今度こそ誤魔化されないように言葉を付け足して。



「そうじゃなくて…………なんで()()()()ウルズが下界に居るの?って話」

「むぅ………。弟に会いたくて頑張っちゃうお姉ちゃんは嫌い?」




口を尖らせて拗ねてしまった。

ちょっと可愛い。




「せぇ〜っかくマシロ君のために良い話を持ってきてあげたのにぃ〜…………」

「ごめんて、お姉ちゃん。それで?良い話って何さ」

「"お姉ちゃん、大好き"」

「…………」

「お姉ちゃん大好きって言ってくれないと自爆するよ?」

「お姉ちゃん、大好き!」

「えぇ〜♡しょうがないなぁ〜♡」



ウルズがそれで良いなら良いのだけども。

半ば脅される形での「大好き」に頬をゆるっゆるに緩めまくったウルズは、上機嫌のままとんでもない事を口にした。






「マシロ君、お父さんとお母さんには会いたくなぁ〜い?」








皆様、お久しぶりです(*^^*)

番外編は作者の書きたいものを書きたいように好き勝手やるので、付いてきてください(丸投げ)



────────────────────────

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


誤字脱字報告、感想等やブクマ、評価などもぜひよろしくお願いします!!(*^^*)

広告の下にある☆を押していただければ、ポイントが入りますので



最後に。

次回もぜひ読みに来てください!







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