アイリスの気持ち(2)
「なんでって、ノエルと一緒に居たいからだけど………」
「え………それだけ、ですか?」
「え、うん」
マシロさんはあっけらかんとそう言った。
逆に何がおかしいのか。
まるで自然の摂理より当たり前とでも言いたそうな表情だ。
呆気に取られて、私は思わずあんぐりと口を開いてしまう。
たったそれだけの理由で…………?
「う〜ん、なんて言ったらいいのかな…………単純にノエルを残して死にたくなかった、悲しい思いをさせたくなかった、っていうのもあるけど………。やっぱり一番は、ノエルとずっと一緒に居たかったから、かな」
照れくさそうに笑うマシロさん。
私の場合は…………仮に私が死んだとして、マシロさんは悲しんでくれるだろうか。
きっと悲しんでくれる………と思う。
だけど、マシロさんにはノエルさんとクロがいる。
私はもう既に『魔女の儀』を破棄しているから不老不死にはなれない。
でも二人は違う。
二人との思い出は日々上書きされていくのに、私の思い出だけは過去のものとしていつかは色褪せるかもしれない。
いつか私を記憶の隅に置き、二人とイチャイチャしながら過ごすのかも…………。
……………………なんか今、すごくもやっとした。
嫉妬と…………独占欲、なのかな。
うん、何となく分かった気がします。
…………………………………。
ぶすっ、と不満を体現したような顔で頬を膨らます。
「どうやら、心当たりがあったようですね」
ダグラス様が微笑ましそうに笑う。
どうやらダグラス様には私の気持ちはお見通のようですが、マシロさんはピンと来ていない様子。
違います、そうじゃないんです!
ダグラス様じゃなくてマシロさんに気がついて欲しいのに!
逆ですよ、逆!
私だってマシロさんのこと好きなのに……………て言うかクロ!
私はさりげなくマシロさんにギュッと抱きついているクロに目を向ける。
いつの間にそんなに仲良くなったんですか、そんな親しそうに!
私の方が先にマシロさんと会っていたのに…………あ、今わざともう一度ギュッてしましたね!?
なんですか、当てつけですか!
泣きますよ!?
「大丈夫ですよ、あなたにもまだ魔女になる道は残されています」
「えっ!?」
私とクロがバチバチやっていると、不意にダグラス様がそうおっしゃいました。
魔女になれる…………つまり、マシロさんと一緒に永遠を生きる道がまだある─────!?
そ、それ、どういうことですか!?
私はものすごい勢いで食い付いた。
もし本当にそんな事が可能なら…………私はどんなに辛くたって乗り切ってみせます!
「そう言うと思いましたよ。そのために〈眷属化〉という、マシロさんが所持するスキルが必要なのです」
ダグラス様の言葉を要約すると。
曰く、マシロさんの持つ〈眷属化〉というスキルは所有者の分泌物、あるいは構成物質を他人に取り込ませることで、眠った力を目覚めさせるというスキルである。
曰く、そのスキルを使えば私を昇華して魔女にすることが出来る。
曰く、そのための方法で一番確実なのはマシロさんと私が交わり、その……………マシロさんのアレを私が取り込むことである。
説明が終わる頃には、私の顔は真っ赤になっていたと思う。
"と思う"、というのは、あまりにも頭がグルグル、目もグルグルしすぎてよく覚えていないからです。
「えっと、俺が言うのもあれだけど、嫌だったら無理しなくていいんだよ………?」
………………………ふ〜ん。
マシロさん、優しいですね。
でも、ここまで来てまだ気が付かないのは…………ちょっと、ちょ〜〜〜っと!
イラッときました。
おこです!もうぷんすかですよ!
ダグラスさんが額を抑えてますがもう遅いです。
「…………マシロさん!!」
「は、はい!」
「私はマシロさんが好きです!大好きです!!」
「はい!…………え?」
「一目惚れです!あの時、助けてもらった時から好きでした!」
マシロさんは突然の告白に戸惑っているけど、堰を切ったようにどんどん言葉が溢れてくる私は喋るのを辞めない。
「共に旅をして………少しの時間でしたけれど、一緒に居れば居るほど私の気持ちはずっと大きくなって………。貴方が好きで好きでたまりません!!…………だから、ちょっと早いですけど…………マシロさんとそういう事をできるのは…………う、嬉しい……です…………」
徐々に声が小さくなる。
い、言っちゃった…………恥ずかしい………。
「……………と、という訳で!私は荷物をまとめて来ますね!」
羞恥心に耐えきれなかった私は、呆然とするマシロさんから逃げるように自室に駆け込んだ。
閑話休題。
私は悶えまくった結果、綺麗にまとめたはずのベットの上で転がり、ぐちゃぐちゃになったシーツに押し付けていた顔を上げる。
うぅ、マシロさんに合わせる顔がないです…………。
エッチな子だと思われてしまったでしょうか…………。
荷物の整理は三十分あれば終わるはずだったけど、私が部屋から出たのはそれからさらに三十分経った頃だった。
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最後に。
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