創造神ノエル
「ふっふっふっ、驚いてくれたようで何よりなのだ!これは準備したかいがあったのだ」
満足気にうんうん、と頷いた神様を名乗る幼女が不意にパチンと指を鳴らすと、今まで足元に散らばっていた羽が一瞬で見る影もなく消えてしまった。
きっと凄腕のマジシャンも真っ青な芸当だろう。
おかげで俺も我に返ることが出来た。
…………落ち着いて状況を整理しよう。
目が覚めて体を起こすと、そこは自宅の寝室でも病院のベットの上でもなく、緑の広がる広大な草原のど真ん中。
所々に生えた木には見たことも無い色の鳥が数羽、羽を休めている。
よく見るとその向こうは断崖絶壁で、地面の代わりに雲みたいな白いモクモクが漂ってて……………あ、なんか孤島みたいなのもある。
ドイツかどっかにある、てっぺんが雲から突き出した何とか城……………じゃないよな。
名前忘れたけど。
あそこにはこんな広い草原なんて無かった気がするし。
まさかラ○ュタ?
んな馬鹿な。
周辺をざっと見回した感じでは、全てどこか現実離れした風景だ。
ここがあの世だったり?
そりゃそうか、目の前にこれでもかって言うくらい主張の激しい神様居るし。
改めて正面を向くと、自然溢れる草原に唯一佇むロリ女神が、へたり込む俺を見下ろしながらドヤ顔でむふーっと鼻息を漏らしている。
どうやら俺の反応が相当お気に召したらしい。
「初めましてなのだ、夢咲真白。ワタシはノエル。神の長たる創造神なのだ!」
「あ、ども…………………ごめん今なんて?」
思わず自分の耳を疑った。
軽くぺこりと下げた頭を素早く上げて華麗な二度見。
そんな俺の変な行動を、しかしノエルは首を傾げて不思議そうに見守っている。
たぶん、自分がとんでもない事を言っている自覚がないのだろう。
いや、たしかに自分のこと神様って言ってたよ?
その時点で色々とツッコミ所があるけども。
でもまさか、最初から神様の中でも一番偉い人が出てくるって思わないじゃん。
何を隠そう、俺ってば死んだばっかりで……………。
────────あ、そっか。
俺、死んだんだ。
頭の片隅に追いやられていた事実を唐突に再認識した。
目が覚めてからあまりにも驚きの連続すぎてすっかり忘れてたけど、俺は死んだんだ。
「……………」
俺の人生は終わった。
その事実を改めて認識したことでえも言えぬ感情が込み上げてくるのを感じる。
今更、何を思ったって後の祭り。
分かっているものの、やはり人間そう簡単に死を受け入れられるものじゃない。
とりあえず両親に心の中で別れを告げてから、伏せ気味だった顔をしっかり上げる。
「落ち着いたか?」
「えぇまぁ。…………えっと、ノエルさんでしたっけ」
「うむ。だが敬称はいらないぞ?マシロには名前で呼んで欲しいのだ。もちろん敬語も無しで」
「え………?あ、うん、じゃあノエル。これでいいかな」
「…………っ!う、うむ、それで良いのだ!」
いてっ!?
言われた通り呼び捨てで呼んだら、なぜか顔を赤くしたノエルに勢いよく背中をバシバシ叩かれた。
ちょ、結構痛い!?
本人は軽くやってるつもりかもしれないけど、生き物としての格が違いすぎるせいか見た目以上にダメージがある。
気のせいか、前に酔った父さんに背中を叩かれた時より痛いような………。
て言うか、なんでノエルさん…………じゃなくてノエルは自分のことを呼び捨てにするように言ったんだろう。
皆にそういう風に接してるのかな。
いや、そもそも俺の前に姿を現したのもか。
ここに来る人全員に会ってるってことはないだろうし…………。
「なんでノエルは、俺をここに連れてきたの?」
ふと湧いた疑問をそのまま口にした。
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最後に。
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