漆黒の闇の中で
全てが漆黒に飲まれ、奥行や大きさが全くと言って良いほど確認できない異質な空間。
唯一明かりを灯すのは、黒い円卓の上に置かれた一つの燭台のみだ。
鮮やかな紅い炎が怪しく揺れる。
それ以外何も無い。
いや、もしかしたら何かあるのかもしれないが、少なくとも視認は出来なかった。
そして、そんな円卓を囲むのは四人の男女だ。
それぞれの場所に設置された燭台に火が灯ると共に、少し周囲が照らされて隠されていた光景が明らかになった。
と言っても、見えるようになったものはたった一つ。
彼ら彼女らの向こう側にそびえる、巨大な繭のようなものだけだ。
背後に影を伸ばす繭からは、ドクンドクンとまるで鼓動のような音が聞こえてくる。
生きているのだろうか。
「……………あの御方の復活は近い……」
脈打つ繭に目を向けながら、ついに男が口を開いて静寂を破った。
それに呼応するように影が揺らめく。
対して向かい側の二つの影は。
「邪魔なのはエルムのやつだよな〜。あいつ、生きてたんだろ?」
「ええ。それに、原初の神も生き延びていたようね」
めんどくさいね〜!と顔を合わせ不満を漏らす。
原初の中でも上位の実力を誇る二人が敵戦力として立ち塞がるのなら、たしかに厄介なことこの上ない。
「原初の大妖魔はどうした」
「未だ封印中だってよ」
「かつて我らに相対した者がまだ……………不愉快ですわ!」
募った苛立ちを発散するかのごとく、憤慨した女性がダンッ!と円卓を叩いて立ち上がる。
一番主に心酔している彼女からすれば、その主に歯向かう奴らはただの虫けらに過ぎなかった。
虫けらが主を倒し、封印するなど………………ましてや再び主の前に立ちはだかろうなど、あってはならないことなのだ。
「……………しかも、どうやら一人……異分子が居るらしい」
「異分子?」
「ああ。原初の神のお気に入り。本気ではなかったとは言え、あのエルムと引き分けたそうだ」
「「「 !? 」」」
ガタッ!と全員が動揺を露わにして椅子を揺らした。
本来は居るはずのないイレギュラーな存在。
おそらく計画において最大級の障害になるであろう"その男"をどう始末するかだ。
「そいつ、人間なの?」
「まだ………一応な」
「ふーん………最近のやつらは雑魚ばっかりだと思ってたけど、少しはやるみたいじゃん」
「どこへ行く」
「そいつんとこだよ。たしかオルメストって国に居るんだよな」
ニヤニヤ気味の悪い笑みを浮かべて漆黒の向こうへと足を進めるのは、小柄な男女二人組。
世界を覆わんとする巨大な影の一つが今、動き出した。
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