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デート(4)






「じゃじゃーん!ご主人様、いかがでしょう!」

「ふむ。いつもクールなクロだが、フリルの付いた可愛らしい服もまた良く似合うな」

「ですよね!」

「んぅ…………主、恥ずかしい………」



薄いカーテンの向こうから戻って来たクロが、モジモジと珍しく羞恥で頬を染める。

それもそのはず。

なにせ今クロは、普段絶対に着ないであろう、フリル付きのシンプルなワンピース(水色)を身につけているからだ。

下半身がスースーするのが慣れないようで、仕切りにワンピースの丈を気にするように下に視線を向ける。



「クロさん、次は一緒にこれ着ましょうよ!ペアルックです、ペアルック!」

「んっ!?さ、さすがにそれは…………」

「ほら、行きますよ〜!」

「んぅ!?あ、主………」

「がんばっ」



サムズアップで返すと、過去に前例が無いくらい絶望した表情で、しゅんと耳としっぽが垂れ下がってしまった。

捨てられた子猫みたいな反応にすごく心が痛むんだが…………。

すまんクロ、実は俺も密かに楽しんでるから止められないんだ。

だって嫁が可愛いんだもの。






───────さて、ガインが頼んだ服を持ってきてくれてから三十分ほど経っただろうか。

今この服屋ガインでは、おそらく開店以来初めてであろう、女の子によるプチファッションショーが開かれていた。


主にクロが着せ替え人形のようにイナリにコーディネートされるのを、俺が遠目に楽しんでいるような感じだ。

何気に一番はしゃいでいるのはイナリかもしれない。


羞恥心であまりいつもの調子が戻らないのを良いことに、ひたすらクロに色々な衣服を着せてキャーキャー歓声を上げている。

だから時折、クロから先程のような助けを求める視線が送られてくる事もある…………………のだが。


俺もいつもとは違うクロの姿をちゃっかり楽しんでいるので、決してイナリを止めることはできなかった。

と言うかむしろ、いいぞもっとやってくれ………!


その圧倒的なフィジカルを遺憾無く発揮。

じたばた暴れるクロを脇に抱えて、イナリは鼻歌混じりにカーテンの向こうへ消えて行った。

なんか(たくま)しくなったな、イナリ…………。



「どうやら気に入ってもらえたようだな」

「俺は未だに何故、ガインがあんなに女子向けの可愛らしい服を持ってるのか……………(はなは)だ疑問だけどな」



隣で満足気にうんうん頷く巨漢に真顔で答える。

どう考えても奥さんが着るような服じゃないし、まさかお前の趣味じゃあるまいな。



「おいなんだその疑わしげな目は…………。一応言っておくが、ここ服屋だからな?」

「…………………………ああ!」

「おいちょっと待て、今の間はなんだこの野郎。まさか服屋に見えねぇとでも言いたいのか、おい」

「いや少なくとも服屋には見えないだろ…………」



むしろどこにそんな食い気味になれる要素があるんだと問いたい。

いやまぁ、あくまで店主がそう言い張るならそれを否定する気は無いけどさ…………。



「てかそもそも、なんでこんな場所でひっそり営業してんだよ。もっとメインストリートに近い所で店開けばよかったのに」



こんだけ品揃えが良かったら、普通はもっとお客さんが来てもおかしくない。

外面はともかく内装はセンスが光ってるし、完全に立地だけが悪すぎる。



「俺ぁ別に、利益を産みたくて商売してるわけじゃねぇからなぁ…………。ま、こういう難しいことは俺みたいにダンディな大人にならねぇと分かんねぇだろうよ」



ガッハッハッ!と豪快に笑い声を上げながらガインは俺の頭をバシバシ叩く。

相変わらずガインの中では俺は子供扱いらしい。


こちとらもう二百歳超えてるけどね?

ただそれを言ってないから、完全に見た目で判断されてる。

適切すぎるバチだ。



「それに、お前みたいな羽振りのいい顧客が多少居りゃあ生活には困らねぇしよ」

「さては人を便利な金ズルかなんかだと思ってるだろ」

「………………ちなみにさっきの水晶とくしのセット、合わせて金貨三枚な?」

「ぼったくりかよ。まぁ買うけどさ 」



確か前世じゃスノードームって、高いやつでも一万円前後で買えなかったっけ?

くしのセットと合わせたとしても約三万円って高すぎるだろ…………。

でも他の所じゃ見かけたことなかったし、技術的に作るのが難しかったのかな?

そう考えると妥当な値段なのかもしれない。



「毎度あり。まあ安心しろ、その分こっちの服とかは安くしといてやるからよ」

「サンキュー。たぶん大量に買うけど大丈夫?」

「おう。と言うかむしろ引き取ってくれるとありがてぇな」



ガイン(いわ)く、在庫が溜まって倉庫の面積を圧迫してしまっていたため、安くても良いからなるべく早く売ってしまいたいらしい。

服ってシワにならないようにとか気にしてると、意外とかさばるからな…………。

そういう事なら任せろ、たぶん二人が気に入ったのはほとんど買うことになるから。



「───────主、着替えた。見て……!」



先に戻ってきたのは意外にもクロの方だった。

先程とは違いずいぶんと積極的な……………さては一周回って開き直ったな?










読んでいただきありがとうございます!

ここで皆さんに一つお願いが…………。



面白いと思っていただけたのなら、ぜひぜひ感想やブクマ、評価などをよろしくお願いします!!(*^^*)

誤字報告や厳しいご意見もバッチコイです


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