マシロ家での日々(2)
※この話にはエロ的な展開が含まれます
苦手な人は見なかったことにしてそっと閉じてください
・□月△日
ある日の夜。
何やらゴソゴソ物音がするのを感じて、私はふと目を覚ました。
ふわぁ〜……………なに………?
寝ぼけた頭でぼーっと天井を見つめていると、再び眠気が襲ってきた。
が、途切れ途切れに微かな話し声が聞こえ、気になったので欠伸を噛み殺しつつ起き上がり、まだ覚醒しきらない意識のまま部屋を出た。
誰か起きてるのかしら……………。
下手すれば聴き逃してしまう程度の声と物音がするのは、家の奥に位置するあいつの部屋の方からだ。
「アイリスさん、もうちょっと………もうちょっとです………!」
「任せてください、私の手先の器用さがあればこれくらい…………!」
「………………あの、お二人とも何を?」
「「っ!?」」
突き当たりを曲がった先にあるあいつの部屋の前で、何やらコソコソと扉の向こうを覗こうと画作しているアイリスさんとイナリさんを見つけた。
えっと…………?
眠気も相まって、思考力が低下していた私は戸惑い気味に声をかけた。
ビクリと二人の肩が震え、振り返って私を認識した途端、ほっ…………と息を吐き出した。
「ミリアさんでしたか…………てっきりご主人様に見つかったのかと………」
「?」
首を傾げる私に、そっと近づいたアイリスさんが耳元でこう囁いた。
「今、ご主人様とノエルさんがエッチしてるんです。この際なので覗いてしまおうかな、と二人で話してまして…………」
「っ!?!!?」
言葉にならない驚愕が眠気をあっという間に吹っ飛ばし、私は顔を真っ赤に染めて思わず後ずさってしまった。
えっち中…………!?
えっ………えっ!?
今、この薄い壁の向こうで!?
あんな事やこんな事、いやらしい想像が頭の中を駆け巡り、ボンッ!と機械がショートしたように煙を上げながらへたり込んだ。
「あっ、あわ…………あわわ…………!?」
顔がそれはもう真っ赤っか。
両頬に添えた手のひらにも熱が伝わってきて、より羞恥心をくすぐる。
「………で、でも、なんで今更………?お二人とも、その…………見た事は無かったんですか?」
頭が混乱しすぎて、むしろ一周まわって冷静な疑問が湧いて出た。
とにかく今はなにか喋ってないと叫んでしまいそうだ。
「そうなんですよね………。よく考えてみると私達、お互いがご主人様とえっちをしている所を見た事がないんです。よくこんなのが気持ちよかった、って話し合ったりはしますけど」
「あ、そうなんですか……………」
さらっと生々しい情事が明らかになって、思わず声のトーンが小さくなった。
そう………よね、あいつは皆とえっちしてるんだから…………。
「ん、これで見える」
「あ、本当ですね。いい感じに隙間ができてます」
「おぉ…………さすがクロさんで────────え?」
「んぅ?」
「「「 !? 」」」
今度は驚愕で息を飲む気配が三つ。
ものすごくナチュラルに会話に参加してきたものの、本来ここに居るはずのない声に全員が度肝を抜かれた。
ばっと視線が集まった先には、アイリスさんとイナリさんの懐に体を丸めて収まったクロの姿が。
い、いつの間に…………!?
羞恥心のせいかもしれないけど、全く気配を感じなかった。
そんなに急に現れると普通に怖いから、なるべく声をかけて欲しいと思ったのは私だけじゃないはず。
そんな私達の心情は露知らず、クロは無表情のまま光の漏れるドアの隙間を指さした。
「主が見える」
「「本当ですか!?」」
二人の食い付きがすごい。
ピクピクッ、と耳を小刻みに動かしたクロにつられて私も覗く。
今まで全く聞こえてこなかったはずの音が突然聞こえてきて、びっくりした。
まるでトーテムポールのように並んだ彼女達の視線の向こうには。
「あっ、んんっ………い、いいのだ真白…………!気持ちいいのだ………!激しすぎて、気持ちよすぎてぇ……………ワタシ、壊れちゃいそうなのだぁ………♡」
ギシギシとベットが軋む音にノエルさんの大きな嬌声が混じり、すごいことになっていた。
は、激しすぎよ……………あんな獣みたいに……………ノエルさんのお腹がボコッて…………。
「こ、これは予想以上ですね………。アイリスさんの時もこんな感じなんですか?」
「い、いえ、私の時はどちらかと言うと私の方が……………っていえ、そうではなくて。もっと優しくと言うか、"愛し合う"と言った感じですから…………」
「……………でも、ノエル幸せそう」
さすがにアイリスさんとイナリさんも顔を赤くしていたが、それでも冷静なクロの一言に二人はうんうん頷く。
たしかに、とても幸せそうだ。
あんなに激しくて壊れてしまいそうなのに、顔を恍惚と蕩けさせてひたすら相手のことを求め続けてる。
あいつも…………。
私達が覗いているとは露知らず、二人は熱いキスを交わした。
ノエルさんの表情が一層蕩ける。
これ以上はやばい。
ごくりと生唾を飲み込んだ私の中で、何かが警鐘を鳴らす。
色々な意味でこれ以上はアウトだ、と。
「あ、あの、さすがにそろそろやめておきませんか?二人だってきっと……………」
「うぅ………でも、せめて最後の瞬間だけは……….!」
アイリスさんはともかく、イナリさんは頑なに離れようとしなかった。
と言うかさっきから少し様子がおかしい。
はぁ、はぁ、と熱を孕んだ吐息が荒いし、四つん這いの状態からお尻だけが持ち上がってしっぽが切なそうにフリフリと揺れている。
あ、とクロが呟いた。
「……………もしかして、発情期?」
………………………………………………………。
思わず顔を見合せた私とアイリスさんが慌ててイナリさんを取り押さえると同時に、ついに我慢の限界に達したらしいイナリさんがばっと部屋に入ろうと突進し始めた。
もうあいつ以外眼中に無い。
これはきっとやる事をやるまで大人しくならないやつだ。
「はぁ、はぁ…………ご主人様ぁ………!」
「ちょ、イナリさん!耐えてください………!」
「す、【スリープ】!」
咄嗟にアイリスさんが発動した魔法によってイナリさんの目がとろんとなり、次第に抵抗が弱くなって可愛い寝息を立てながら寝てしまった。
ふぅ、危なかったわね…………。
もし突撃してたらどうなってた事か。
「イナリはクロが運ぶ。二人も戻って」
「そうですね、さすがにこれ以上はやめておきましょう」
これで解散となった。
私も部屋に戻ってベットに身を投げ出し、ドッと溢れた疲労感に身を任せてそのまま深い眠りに──────────────つける訳ないじゃない!!!
カッと目を見開く。
眠れない。
ノエルさんの嬌声がまだ頭の中で響いていて、とても寝れる精神状態じゃなかった。
結局、もんもんとしたものを感じながら一睡も出来ぬまま朝日を拝むことになった。
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