冒険者ギルド
「最後に、ギルドに寄ってもいいですか?」
あらかた予定していた買い物を終え、両手で大きな紙袋を抱えたアイリスが向こうの冒険者ギルドを指さしてミリアに問う。
「何か用事があるんですか?」
「ええ。実は、あなたにも関係のあることなんです」
微笑んだアイリスはそれ以上言わずに、戸惑うミリアを連れてギルドの方へ歩き出す。
当然だが、ミリアはギルドに寄ることも、そこで自分に関係する何かをするというのも知らなかった。
アイリスの微笑みを見るに、きっとわざと内緒にしていたのだろう。
もちろんだからと言って断るなんてしない。
しかし、気になりはする訳で。
先を行くアイリスに聞いてみるものの、やはり「内緒です♪」、とうやむやに誤魔化されてしまった。
訳が分からぬまま手を引かれギルドに入る。
すると、目の前に広がっていた景色に驚いた。
思っていた"冒険者ギルド"のイメージと違っていたからだ。
他の場所のギルドと同じで酒場が隣接しているものの、朝っぱらから酔い潰れているような輩も居らず、楽しげに女将さんと談笑したり、パーティで食事をしていたり。
どこか落ち着いていて、温かいものがあるギルドだった。
普通冒険者ギルドと言えば、時間問わず大騒ぎしていたり柄の悪そうな奴らが居たり、執拗に絡んでくるウザイ奴が居たりと、ミリアの中ではそんなイメージが中心だ。
実際に昔行ったらそんな感じだった。
たしかに場所によってはそんな所やもっと酷い所だってあるが、大抵はミリアが想像するよりまともである。
が、その中でもこのカディア村のギルドが群を抜いて平和だと言うのは紛れもない事実。
ミリアが思わず驚いてしまったのも仕方ない。
何せこのギルドの冒険者は、手の付けられないような荒くれ者含め一人残らず、隣接する酒場の女将、メアリーさんによって一度は説教されているからだ。
元荒くれ者に「あれで改心しなかったら逆にすごい」、とまで言わしめる説教をもれなく一時間、または酷い時は数時間。
正座で足が吊りそうになるまで永遠と怒られ続ける。
しかも言ってることは的を得ている上に、時折織り交ぜてくる母性なのか何なのかで反論もしずらく、気づいたら大人しくなっているのだ。
基本的にぐぅの音も出ない。
また、メアリーさんの必殺、「娘が見てるよ?」が炸裂した暁には、もはや一人たりとも抵抗する間もなく一撃で撃沈してしまう。
皆の天使ことエマちゃんを前に、冒険者達はそろって無力なのである。
そのため、ここに常駐している冒険者達はメアリーさんに良い意味で頭が上がらず、総じて大人しい。
「おはようございます、シゼルさん」
「あら、いらっしゃ〜い!もう準備は出来てますよ〜」
受付にて、書類に目を通していた女性が顔を上げ、ぱぁ!と明るい笑顔を見せる。
のほほんとしていて、どこか掴み所の無い不思議な雰囲気の女性だ。
アイリスやリーンよりは年上だろうか。
実はミリア。
この女性、シゼルさんと会うのはこれが初めてなので。
「えっと、この人は…………?」
「このギルドで受付嬢をしてらっしゃるシゼルさんです。この方は、昔からご主人様がお世話になっているんですよ?」
「へぇ、あいつが……………」
少しの驚きとともに、ミリアは思わず目の前の女性をしげしげと見つめる。
(お世話になった……………確かにあいつ、細かい事は苦手そうよね)
図星である。
まさにミリアの言う通りで、Xランクと言う特殊な階級上、どうしても重要な書類やら何やらが定期的に来るため、そういうのは基本的にシゼルさんに手伝ってもらっていた。
その他にも礼儀を必要とする場合なども。
例えば、王族から直接指名で依頼が届いた時、最低限の礼儀やマナーをマシロに叩き込んだのは他でもないシゼルさんだ。
ものすごく、それはもうものすっっっっごくお世話になっている。
(…………………てか、胸デカすぎない?)
自然と視線が降りた先には、ミリアのコンプレックスを真正面から殴り飛ばすかのようにご立派な双丘が聳えていた。
たゆんたゆん揺れてる。
それはもうたゆんたゆんって。
大事な事だから二回言いました。
(………………………あいつ、殺す)
理不尽とはまさにこの事。
今回に関しては何の非も無いマシロへまさかのとばっちりである。
胸を眺めていたら、えも言えぬ殺意を感じたらしい。
読んでいただきありがとうございます!
ここで皆さんに一つお願いが…………。
何か感じていただけたのなら、ぜひぜひ感想やブクマ、評価などをよろしくお願いします!!(*^^*)
誤字報告や厳しいご意見もバッチコイです
下にある☆を押していただければポイントが入りますので、良ければ入れていただけると……………………………作者のやる気が上がります(૭ ᐕ)૭フニャ
"いいやん、更新されたらまた読も"と思っていただくだけでも嬉しいので、ぜひ!