ダグラス商館にて
「いらっしゃいませ…………あ、マシロ君じゃない!久しぶり!」
からんからんとベルを鳴らして商館のドアを開ける。
正面の受付で暇そうにぼーっと宙を見つめていた蒼髪の女性が俺を見つけ、にかっと笑いながら元気よく手を振った。
ダグラス商館自慢の受付嬢、クリスさんだ。
その明るい性格と接しやすさからお客さんからの人気も高く、スタイルも大変良いため、彼女を直接口説きに男達がやって来ることもしばしば。
「ここはそういう場所ではないのですがね…………」とはダグラスさんの談。
しかし残念な事に、今のところ結婚する気はないらしい。
この前も振られて肩を落としながら出てきた男達とすれ違って、微妙に気まずい雰囲気になった。
ちなみにそいつらは、話している間もクリスさんの体ばかり舐めまわすように見て普通に嫌だったので、そのまま出禁になったそうだ。
そりゃそうだ……………。
また彼女にはアイリスとクロがお世話になっていて、俺と出会う前は面倒見の良い二人のお姉さんとして親しくしていたらしい。
特に欲望に忠実なクロは、お菓子やらお肉やらで相当餌付け─────────ではなく可愛がられていたのだとか。
ちなみに俺も時々相談に乗ったりしてもらってる。
主に皆との情事や私生活について。
クリスさんは皆の頼れるお姉さんだ。
「まったくも〜。最近はあんまり来てくれなかったから、お姉さん寂しかったんだぞ?」
「ごめんて、なんか色々立て込んでてさ」
「ええい言い訳無用!本当にごめんって思ってるんだったら、今度皆を連れて遊びに来て!そしてもちもちのほっぺをぷにぷにさせろー!」
「はいはい、了解しました」
…………………いや、頼れるお姉さんなのは本当だよ?
仕事もバリバリ出来るし、いつも言い寄ってくる男達の前では「あらあら…………」みたいな上品な感じだし。
でもこっちが素なんだろうね…………。
この人、マジで二重人格かと疑うレベルで表と裏が違いすぎる。
表はいわゆるキャリアウーマン的なできる女で非常にモテモテなハイレベル女性。
執務だけでなく、物理的にも強いとかなんだとか。
駄菓子菓子、裏はもはやオジサンそのもの。
皆の若く弾力のあるもち肌を愛し、アイリスに至っては完全にセクハラと言わざるを得ないような事まで平気でする。
例えばさらっと胸を揉んだりとか。
ちょっと待って俺も混ぜt(((((( 殴
アイリスはアイリスで恩があるから「これくらいなら…………」と。
少し恥ずかしがりながらも断りはしない。
クリスさん曰くその顔がたまらなく愛おしいとのこと。
分かる、すごく分かる。
まぁアイリスがそれで良いなら俺がどうこう言うつもりは無いが。
……………………と言うかやっぱり俺も揉みt((((((((((殴
こほん。
うが〜!と両腕を振り上げ、じたばた暴れる御歳二十ごにょごにょ歳のクリスさん。
子供か。
かまってオーラがひしひしと感じられる。
これは絶対に、ノエル達を連れて来るまで治まらないだろう。
めんど─────────ごほんごほん、何でもないです。
「むぅ。今マシロ君に酷いこと思われたような」
「気のせいじゃね?」
「え〜…………まぁ今回はそういう事にしておこう。で?本日はどう言ったご要件………………って聞くまでもないか〜。そっちの子の事?」
クリスさんが、絶賛人見知りが発生してリーンの後ろに隠れた少女に目をやる。
羽の後ろからちらっと紅の瞳が覗き、ヒラヒラと手を振るクリスさんを捉えてまた引っ込む。
「ありゃ」
「ちょっと色々あってね。この子について聞きたい事があるんだ。悪いけど、ダグラスさんって今空いてる?」
「なるへそ…………ああ、ちょうどここ数日は何もないから、奥の執務室に居るはずだよ。呼んでくるから客室で待っててくれる?」
「了解、ありがとう」
書類を持ったまま商館の奥に消えて行ったクリスさんに対して、俺達は右側の通路を通って広々とした客室に向かう。
もう何回もここには来てるので、勝手知ったる我が家のように複雑な商館の中もスイスイ移動できる。
「それにしても、ずいぶんと静かだったね」
「うっさいわね…………」
俺に金的した時の元気はどこへ行ってしまったのか。
ご飯を食べてからと言うもの、別人かと思ってしまうほど急に大人しくなった。
別に悪いとは言わないが……………まさか空腹でイライラしてt
ゴスッ!!
「いてっ!?」
「そんな訳無いじゃない!殴るわよ!?」
「いや、もう既に殴ってるんだけど…………」
今グーで殴らなかった?
鋭い衝撃の走った後頭部を撫でながらジト目で少女を見るが、ふんっ、と鼻を鳴らしてそっぽを向かれてしまった。
何も言っていないはずなのに、読心術でも使えるのだろうか。
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