緊急事態
「おーい、リーン大丈夫?」
「はっ!?」
何となくまだ降りるのは怖いので、滞空したままリーンの額をぺちぺち叩く。
恐怖の対象が消えてやっと我に返ったらしい。
悲鳴を上げてガバッ!と体を起こした。
「うぅ………もうこんな森なんて二度と来たくないです…………」
「激しく同意」
今回は仕方がないが、帰ったらもう二度と通らないと二人して心に決めた。
Gとクモが居るだけで嫌だ。
今のところ、この森には悪い思い出しかない。
一回目はクモの大群に追いかけられ、二回目はGの大群に追いかけられ……………苦手な人からすると地獄だ。
さて、ここからは飛んで行くか……………。
ここら辺は鳥型の魔物は居ないし、その方が精神的にもだいぶ楽だろう。
この後、立て続けにクモにでも追われようものならと。
考えるだけでも寒気がする。
うわっ、見てよこれ。
鳥肌立ってる。
う〜、やっぱりGとクモはあかん。
「では、改めて目的の場所に向かいましょう。もうすぐそこまで来ているはずですよ?」
「はいよー。たしか取ってくるのって──────────っ!?」
体を前傾姿勢に傾け、いざ飛び立とうとした寸前で俺は動きを止めた。
リーンが怪訝そうな顔で俺を見つめる。
ビキッ!と鋭い痛みが頭を貫いた。
危うく叫びそうになるのをすんでのところで堪え、震えながら歯を食いしばって俯く。
なんっ、だ……これ…………!?
頭に直接響く。
脳神経を直接、剣で突き刺されたような痛みが内側からガンガン響き、うるさい耳鳴りと合わさってとてつもない負荷をかけてくる。
あまりに唐突すぎるのと激しい痛みで思考が追いつかない。
攻撃か………!?いや、これは……………!
「マシロさん!?どうしたんですか、マシロさん!!」
リーンの叫び声がほとんど聞こえない。
切迫した表情もぼやけて視界が不鮮明だ。
だが、何となくこれが何なのか分かった気がする。
頭痛?何者かの攻撃?
いや違う。
これは───────。
──────────助けて………!
これは、テレパシーだ。
魔法なのかスキルなのかは知らないが、誰かからとても強い思念が送られてきた。
あまりにも魔力と想いが強かったため、常人なら頭が爆発したのではと勘違いするレベルの負荷が脳にかかってしまったのだ。
俺は反射的に動き出していた。
よろけた体を立て直しながら飛んできた魔力の軌跡を追い、方向を見定めると共に瞬時にそちらに向かって飛び立った。
当然、予想だにしなかった俺の行動にリーンから戸惑いの声が上がる。
「ま、マシロさん!?」
「心配かけてごめん!俺はもう大丈夫。……………でも、向こうがあんまり大丈夫じゃないっぽい」
まだ頭がクラクラする。
空気を切り裂いて飛ぶ傍ら、先程のテレパシーの話をリーンに伝えた。
にわかには信じ難い現象だが、そんな能力を持つ魔法やスキルに心当たりが無い訳でもない。
しかし、あんなに過剰と言えるほど魔力や強い意志が篭っているのを見るに、よほど余裕がなかったのだろう。
制御してる暇なんてないorそもそも制御出来ていないのか。
詳しくは分からないが、とにかくこんなのを聞いて向かわない理由は無い。
「理由も話さず勝手に連れて来ちゃってごめんね」
「いえ、一刻を争う事態なんですよね?きっと私だってこうしましたから」
脂汗でぐっしょりになった俺の頬を布で拭い、リーンがギュッと首に手を回して抱きつく。
改めてお姫様抱っこしたリーンを抱きしめる腕に力を込め、全力でテレパシーの軌跡を追って飛んで行った。
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