リーンのご両親
馬車を降り隊長さんに先導されて、王城のなんかよく分からんが色々な場所を通って、ある一室に案内された。
明らかに今まで見てきた部屋と違って、入口の扉に豪華な……………と言ってもあくまで派手すぎない程度だが、装飾や燭台が立てられている。
つい先程、護衛の騎士ともすれ違ったので、自ずとここの部屋が何なのか分かった。
満を持して中に入ると、そこには二人の男女が居た。
男性の方は彫りの深い厳粛そうな顔立ちに白髪を有し、いかにも吸血鬼っぽい黒のタキシードとマントに身を包んだ、実に風格のある人だ。
口の両端から牙の先端が飛び出している。
眼光が鋭すぎてすごく怖い。
対して女性はタレ目のおっとりとした雰囲気で、ピンク髪蒼眼とくせっ毛や顔の造形はどことなくリーンに似ていた。
こちらは大人しめの水色のラフなドレスを着ていて、頭からちょこんと角が、後ろでは先がハート型になったしっぽがソファーに垂れる。
なんか、すごい良い人そう。
あのアホ毛と触角はどうなってるんだろう…………。
にしても二人の雰囲気の差がすごい。
太陽と月、白と黒くらい真逆だ。
「お父様、お母様!ただいま帰りました!」
「あらあら、おかえり〜」
タタッと走って駆け寄ったリーンが、久々に会うであろう両親に向かってジャンプし、思いっきり抱きついた。
二人もまた腕を広げてリーンを抱き、再会を喜んでいる様子。
父親…………つまり王様の名前がバス、そして王妃様がユラと言うそうだ。
種族はそれぞれ吸血鬼とサキュバス。
二人共、今代だけで自国を大いに発展させた功績をいくつも持ち、魔力や戦闘面でも歴代で随一なのだとか。
こんなのんびりした見た目だが、ユラさんも相当強いらしい。
リーン曰く、怒るとそれはもう怖いそうで……………。
冗談抜きで雷が落ちたり業火が荒れ狂うそうだ。
魔法が普通にある世界なのだ、さもありなん。
移動中の馬車で話していた時のリーンの顔を見るに、これはあかんの一言に尽きる。
やっぱりお母さんはどの世界でも強いらしい。
バスさんに関しては言わずもがな。
「では、私はこれで失礼致します」
「え」
思考の傍ら、後ろから聞こえてきたそのセリフに耳を疑ってしまった。
慌てて振り返ると、既にちゃっかり入口の外まで下がっていた隊長さんがぺこりと頭を下げ、ギィィ………と静かに扉を閉めた。
閉めてしまった。
ちょ、この状況で俺一人ここに置いてくって本気!?
ものすごくアウェイなんだけど……………。
それに見ず知らずの一般人を王室に招いて放置って、警備体制がざら過ぎないか?
まぁそれを言うと、既に前科のある王族に心当たりがあるから何とも言えないんだけどさ。
さすがに今話しかけるほど空気が読めない訳では無いが、かと言って部屋をキョロキョロ見回してたら、それはそれで失礼だ。
どうしたものかと視線をさまよわせていると。
「すまないね、マシロ君。娘から話は聞いたよ」
「いえ、こちらこそお嬢様には大変お世話に─────────」
抱擁を解いたバスさんが、こちらに向かって薄く微笑みかけた。
相手は王族。
やばい、敬語ってこれで合ってる……………?
「あらあら〜、そんなに畏まらなくて良いのよ〜?」
「そうですよマシロさん。何せ私達は夫婦なのですから、遠慮は無用です」
「ちょっと待ってそれは違う」
いつの間にそんなに関係が発展したのさ……………。
驚きのあまり食い気味に否定してしまった。
いやだって、娘が帰ってきたと思ったら知らない男と結婚するって言ってるんだよ?
俺だったら「許さーーん!」って叫ぶ自信がある。
「ふむ。私は賛成だがな」
「私もですね〜」
「あれ!?」
ははは。
あらあら〜。
ほんわかと微笑み合いながら、割と前向きに…………と言うかむしろ既に承諾したみたいな雰囲気のお二人方。
孫は男の子と女の子どちらでしょうね〜?なんて話までもしてる。
気が早すぎる。
普通はこう、俺のことを娘に寄る悪い虫と捉えてもおかしくないって思ってたんだけど…………。
てっきり反対されるとばかり思っていた。
「ん?ああ、何も根拠が無くこんな事を言っているのではないよ。事後報告で申し訳ないが、少しばかり見させてもらった」
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