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無気力少年と無感情少女

作者: 梨沙

とある少年がいた。

常に無気力な目をした少年。

周りからは楽しそうな人だと思われている。

なぜか?それは、少年の演技力が高かったから。

演技というより、我慢に近いものなのかもしれない。

自分を殺すのが誰より得意なんだ。

「多数を助けるためには、少数をギセイにしないといけない」

そんな考えを持っている。

自己犠牲の考え方と言われても仕方ない。

少年は自分をギセイにした。まっさきに。すぐに。

少年はある日思った。

「死にたい。消えたい。」と。

消えるため。死ぬために、自分の体を壊そうとした。

あまりご飯を食べない。睡眠時間を減らす。など。

しかし、思ったようにうまくいかない。体は元気なまま。

そこで、考えを変えた。

心を壊すことにした。

結果、うまくいった。

感情がなくなった。

周りを選択した少年が満足する結果。

幸せ。感情。時間。健康。自我を代償に。

誰かを好きになることなんてない。幸せがどんなものかもわからなくなった少年。

希死念慮に悩まされた。

多くの人を救っても、自分は助からない。

それどころか、救った以上の人を傷つける。

自分を捨て、周りの人を選んだ少年が行き着いた先。地獄。

何もない。真っ白で、真っ黒なセカイ。

一切の希望もないセカイで少年は生きた。

あるはずもない光を目指して。



少年はある女の子に出会う。

多くの出会いの中の一つ。

そう考えていた。

少年は女の子と仲良くなった。

ある日のちょっとしたきっかけ。

女の子に好かれた。

好きの意味なんてわからないのに。女の子と過ごす時間は楽しかった。

イミナンテシラナイノニ。

多くの時を一緒に過ごして、付き合った。

永遠を約束して。

少年は女の子にすべてをかけた。

「この人は絶対に裏切らない。」と。

人間不信の少年の思い切った行動。

結果。少年は失ったものを取り戻した。

健康。自我。感情。二度とこないと思っていた幸せまでも。

ただ、希死念慮は消えていなかった。

たまに、女の子がいない時間、少年は苦しむ。

結局、根本的なところは変わっていなかった。

「自分は死んだほうがいい。いない方がいい。」

色々我慢しながら、少年は生き続けている。

ちゃんと休むことはなく、女の子以外の人の前で感情を殺す。

未来を夢見て、過去にうなされながらも。

ずっともがき苦しんでいる。ひそかに終わりを夢見ながら。



感情を殺すことを得意とした、少女がいた。

ある事故で大事な人を失って以来感情を、表面上でしか表さなくなった。

根本的なところで時計は止まっている。

進んでいないといけない時計。

少女の意思とは関係なく時計は止まっていた。

どれだけ時間が経っても。

多くの人と関わっても。

時計は進むことはない。

止まったまま。

少女自身それで良かった。

誰かに迷惑をかけるくらいなら。周りに心配されるくらいなら。 

このまま、ずっと。

時計を止めておけばいい。

いつからか、自分自身の意思で時計を止めた。

感情なんか追いつかない。

周りが楽しそうにしていても、何が楽しいかはわからない。

知らなくてもいいこと。

知る必要がない。

知ったところで何になる?知恵?経験?

そうやって、押し殺せば。消しておけば。

誰にも迷惑なんかかけない。



ある日少女は男の子に出会う。

抱えてるものは違うけど、なにか似たような感じがした。

一人でいた少女に話しかけてくれた。

ほんの些細なキッカケ。

このキッカケがなければ、出会うことも、一緒にいることもない。

出会ってから多くの時を一緒に過ごした。

少女にある感情が芽生えた。

久しく忘れていた感情。

もう二度と、戻ることのないはずの。

『恋心』

付き合うことになった。

何をしたらいいかわからない。

どう接すればいいかも。

それでも、いつもどおりを演じた。

けど、心の中にもっと近づきたい。

彼のことを知りたいと願う。

願うばかり。

願うのはいけないこと?

心の中の時計は少しずつ。

動き始めている。

動き始めても、根本的なところは変わらない。

少女の時計は遅れをとっている。

もう今さら追いつくことなんかできない。

追いつきたいとも思わない。

周りと一緒にされるのが嫌なんだ。

普通を押し付けられたくない。



心の時計が止まった少女。

死にたい。消えたいと思う少年。

出会ったのは必然か。

偶然か。

今は、キッカケはどうだっていい。

ただ。

一緒にいたいと願う。

永遠に。

距離は遠く。それでも近い。

幸せを取り戻した少年。

幸せを自分から遠くにおいてきた少女。

二人の物語が交わる時起こるのは・・・。




抱えているモノ。

吐き出せずに溜まっているナニカ。

人には知られたくない過去。

それさえも話すことができた。

不思議だった。

どんなに仲のいい友達にさえ話せなかったこと。

それをあっさり話してしまった。

少女自身、驚いた。

「私はこんなに多くのモノを、溜め込んでいたんだ・・・。」

気づかなければよかったのかもしれない。

けど、一度気づいてしまうと後戻りはできない。

気がつくと、泣くまで話していた。

もともとの少女は感受性豊かな普通の女の子だった。

『普通』

それが何を表すかは、解釈次第。

人の普通なんか、一人ひとり違う。

君の普通を誰かに押し付けてない?

君にとっては普通でも、その誰かにとってはきっと普通じゃない。

言い換えるなら。

『考え方の違い』

誰だって嫌でしょう?

今までの自分の考え方を否定される。

私が間違ってる。周りがそう言っているからきっとそうなんだ。とか。

自分の意見を持てなくなる。

いつしか人に流され、言われるがまま。

そんな生活は嫌でしょ?

ちゃんと心はある。

それなのに、人形みたく都合のいいように扱われる。

普通を嫌う少女。

そんな少女が出会うのは、どこか危なく目を離せない少年。



『死にたい』

誰でも一度は思ったことあるんだろう。

思わない人はいるのかな。

少年と少女。

死にたい、消えたいと思ってしまう時期がある。

タイミングは違くても。


少年がある日辛いと言った。

それまで、何事もなかった。

唐突だった。

少年は落ちるところまで落ちるとなかなか戻ってこない。

感情が消えている。

最低限を残して。


頑張っている人に頑張ってとは言えない。言いたくない。

そう考える少女は尋ねる。

「君は何をして欲しい?」

と。

答えが返ってくるかはわからない。

返って来るときもある。

返って来ないときもある。

不安定。

それでも、少女はあることをした。

他愛もないことを文章で書いて送る。

その日あったこと。思ったこと。今思ったこと。これからしたいこと。

色々。

内容がまとまらない。時系列がバラバラ。

それでも、少年は読んでくれる。

だから、やめられない。

きっと彼なら・・・。

そう思う心があるのだろう。

書き始めてから、書かなかった日はないだろう。

短くても長くても。

いろんなことを書いた。

伝えたくて。

理解してほしいとは思わない。

けど、知って欲しい。

わがままなのかもしれない。

けど、それでもいいとも思った。

誰かに話を聞いてほしかった。

自分のことを見てほしかった。

ありのままの少女自身を。



少年のある日のこと。


抱えたものが多すぎて

視界が狭く。真っ暗になった。

変わることを望んで

強くなることを誓って。

変われた

強くなれた

けど、

それはなった気だった。

過去に首を絞め続けられる。

痛みは残ったまま。

辛いことから目を背けると、背けるたびに

ソレはボクの前に来る。

こっちを覗き込んでくる。

「なんで目を逸らすの?」

って。

今は頑張れないって思ってたけど、

甘えなのかと思って

またがんばりだしたら

また無理をして

結局同じことの繰り返し。

ボクの中のソレは

日が経つたび

大きくなっていく。

ねえ?キミはいつになったらいなくなるのかな。




ある日の少女のこと。


抱え込んでいたものが爆発した。

悩み。ストレス。思っていても言えなかったあれこれ。

少女自身気づいていなかった。

爆発するほど抱え込んでいたことに。

毎日ストレスは溜まる。

感情が表面上でも、それなりに思うことはたくさんある。

学校生活。アルバイト。人間関係。家族関係。

人が関わることに対してストレスをためやすい。

そんな共通点があるなんて思いもしなかった。

当たり前のように積み重なっていく。

重なって

重なって

重なって

重なって・・・

心のメーターが、限界を超える。

その瞬間に理解する。

あぁ、こんなふうになるまで溜め込んでいたのか・・・。

少女が荒れる。

声に。

態度に。

行動に。

現れてしまう。

制御ができない。

まだ、子どもなんだ。

体は大人に近づいているのに、

心は、精神面は子ども。

噛み合わない。

不調が生じる。

言動と行動のズレ。

周りが気づかない、ほんの些細な。

それでも、気づく人はいる。

少年がそうだ。

少女の些細な変化、

違和感に気づく。

いや、気づいてくれる。

少女にはそれが嬉しかった。

誰にも気づかれないと思っていた矛盾に気づいてくれたから。

少年は救ってくれた。

心にかかる負担から。

少しづつ。



少女は誓う。

彼に一生を捧げると。

持つ力すべてを使って彼を守り抜こうと。


誰も知らないこのお話は、いつか彼の目にも止まるのかな?

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