第9話 VSミノケンタウロス
『行くぞ!』
ミノケンタウロスの鋭い突きが襲ってきた。
「がぁっ……」
俺はなんとか盾でこれを防ぐが力負けして後ろに吹っ飛ばされてしまう。
「バランどのっ」
ガゼフさんが心配そうな声を上げた。
『なんだ? まだ力の二割も出していないぞ』
「ぐ、くそっ……」
手で膝を押さえながら立ち上がる。
体中が痛い。
完全に盾でガードしたのに……。
攻撃させては駄目だ。こっちから仕掛けるんだ。
「はぁっ!」
俺はクロスボウに矢をセットしミノケンタウロスめがけて放った。
びゅん。
『ぐおっ……!?』
「当たった!」
油断していたミノケンタウロスの肩に矢が命中する。
「これで終わりだ、ミノケンタウロスっ。矢にはたっぷり毒を塗っておいたんだっ!」
勝てる。
あとは毒が回るのを待つだけだ。
それくらいならなんとか盾で防ぎきれるぞ。
『ぐ、ぐあっ、ぐあぁっ!』
胸を押さえ身もだえるミノケンタウロス。
「油断した自分を責めるんだな」
『ぐああぁぁっ……!』
どうだセフィーロ。
レベル一桁の俺でもミノケンタウロスを一人で倒せるぞ。
『ぐああぁぁっ…………なんてな。演技に決まっておるだろう』
「っ!?」
さっきまで体をのけぞらせて苦しんでいたはずのミノケンタウロスは姿勢を正し俺を見据えた。
「な、なんで……?」
『オレ様には炎の耐性のほかに毒に対する耐性もあるのだ』
「そ、そんな……」
勝てると踏んでいた俺は放心状態に陥り手から力が抜けた。
クロスボウと盾ががしゃんと地面に落ちる。
『Sランクとはこの程度なのか? がっかりしたぞ』
やっぱり、俺なんかじゃ勝てるわけなかったのか。
何がSランクだ、情けない。
俺は誰も守ることなんて出来ない……ただの半端な鍛冶職人だ。
『抵抗する気力を失くしたようだな。つまらん』
ミノケンタウロスが俺の正面に立つ。
すると、
「バランどのっ、逃げてくだされっ」
ガゼフさんがミノケンタウロスの前足にしがみついた。
「ガゼフさんっ!?」
「わしらのことはいいから逃げてくだされっ!」
俺の親よりも年上のガゼフさんにそこまでされて一人で逃げる?
俺を頼ってくれた村のみんなを見捨てて逃げる?
そ、そんなこと出来るわけないだろう。
だがしかし、もうなすすべがない。
――みんな死ぬ。
絶望感に包まれたその時だった。
「おじさんっ! ぼくのエクスカリバー貸してあげるっ!」
家の外に飛び出してきたザジーが声を上げ俺が昨日あげた黄金の剣を投げてよこした。
俺はとっさに体が反応してそれを掴む。
が、
駄目だ。
剣なんかじゃヤリを持ったミノケンタウロスには太刀打ち出来ない。
いや、そもそもこの剣には刃がないんだ。
気晴らしで子ども用に作っただけのレプリカなんだ。
こんな剣じゃ……。
『死ねっ!』
ミノケンタウロスがヤリを突き出してきた。
「うおおぉぉーっ!!」
俺はやけくそになり黄金の剣をミノケンタウロスに向け構える。
同じ死ぬでも前を向いて死んでやる。
死を覚悟しながら黄金の剣を思いきり握り締めた。
するとその瞬間だった。
黄金の剣から金色のまばゆい光が放出されてミノケンタウロスのお腹を貫いた。
『がはっ……!?』
さらにその光は大きな金色の光の剣となりミノケンタウロスを完全に飲み込むと、
『ぐああああぁぁぁぁ……!!』
これを蒸発させた。
「なっ、何が……!?」
目の前で何が起きたのかまったく分からない俺だったが、直後黄金の剣から出ていた光は消え俺の持つ剣はただのレプリカに戻っていた。
「……」
ガゼフさんも何が起こったのかという感じで唖然としている。
そんな静寂の中、
「やったー、おじさん! やった、やったーっ!」
ザジーの甲高い声だけが俺の耳に届いていた。
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