第61話 また一緒に……
「モンスターと戦うの怖くなくなったか?」
「そうですね。モンスターを前にするとまだ少し手が震えますけどバランさんのおかげでだいぶよくなったと思います」
とマリアが返す。
「別に俺は何もしてないけどな……」
本当に。
「そんなことないですよ。バランさんがそばにいてくれるだけで勇気が出ますから」
と嬉しいことを言ってくれるマリア。
俺たちは今ギルドにいて次に受ける依頼を何にしようか決めかねていたところだ。
デュラハン退治で得た報酬は会ったばかりのおじさんにあげてしまったため俺の所持金はゼロ。
生活費を稼ぐため早いとこ新しい依頼を受けたい。
「どちらになさいますか? バラン様」
受付の女性が二枚の依頼書をカウンターに置いて見せてくる。
一つは要人警護の依頼。
もう一つは錬金術の素材集め。
「どっちもモンスターに会う可能性はあるけどマリアはどっちがいい?」
「私が選んでいいんですか?」
「ああ、マリアの好きな方でいいぞ」
「じゃあこっちがいいです」
悩むこともなくマリアは片方の依頼書を指差した。
マリアが選んだのは錬金術の素材集めの依頼。
「マリアはそういう依頼の方が好きなのか」
「いえ、そういうことではなくてバランさんとせっかく一緒に冒険者のお仕事が出来るんですから二人きりの方がいいなぁと思って……」
「そ、そうか。ふーん」
『何がふーんよ、十五歳の小ども相手に照れてるんじゃないわよ。気持ち悪い』
エクスカリバーが毒づく。
「錬金術の素材集めですね。こちらはガイタホ郡のウラル山にあるマジウム鉱石とジアスコ郡のララカイ山に自生するノーム草を採ってくるという依頼です。依頼ランクはCなので報酬は少し低めの金貨六枚となっておりますがよろしいですか?」
「いいよな? マリア」
「はい」
マリアは俺を見上げうなずいた。
「かしこまりました。ではバラン団のみなさま、お気をつけていってらっしゃいませ」
受付の女性のちょっと恥ずかしい声援を背に俺たちはギルドをあとにした。
☆ ☆ ☆
錬金素材は二か所だから二人で手分けした方が早いのだが、
「せっかくなので一緒に行きましょう」
マリアが笑顔でそう言うので俺たちは二人で一緒にまずはララカイ山を目指すことにした。
移動は徒歩だ。馬車を使ったのではお金がかかるので元も子もない。
俺一人ならスカイマントで飛んでいけるがマリアもいるためそういうわけにもいかない。
まあこれがマリアとの最後の仕事だしゆっくりやればいいだろう。
「バランさん。ゾーンさんがバランさんに会いに来た時どんな話をしたんですか?」
だだっ広い草原を歩きながらマリアが訊いてくる。
「うーん、実は話らしい話はしてないんだよなぁ」
「でもわたしたちのことは話してたんですよね」
「ちょっとだけな。マリアがモンスターとの戦闘を怖がってるとか、ランドルフが自信を無くしてるとか……」
あとセフィーロがみんなに強く当たり散らしているということも言っていたっけ。
「ランドルフさん……」
マリアがうつむき加減でつぶやいた。
「ランドルフは今どんな感じなんだ?」
「……えっと、ランドルフさんはミノケンタウロスに負けたのは自分のせいだって責任を感じてしまっていて、そこにセフィーロさんもランドルフさんのせいだって責め始めて……ランドルフさん、もう盾は握らないとまで言っていました」
「そうなのか……」
無敵の盾が形無しだな。
「じゃあミノケンタウロスの一件からは四人で冒険には出ていないのか?」
「……はい」
「また昔みたいに、バランさんも含めた五人でダンジョンに潜れたらいいのに……」
俺に聞こえるか聞こえないかくらいの声でマリアが言う。
「……」
俺はそれに対しては返事をすることはしなかった。
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