第16話 予選
そして翌朝。
公園の水道で顔を洗い、リエルに持たされていたおにぎりを頬張りながら町行く人を眺めていると体格のいい男たちがぞろぞろと通り過ぎていく。
なんだ……?
そういえばさっきも剣や杖を持った奴らが通っていったっけ。
そう思っているとまた一人、縦にも横にもでかい球体みたいな体をした男がのっしのっしと歩いていく。
「格闘大会は明日のはずだよな……」
気になったので俺はおにぎりを口に押し込むと公園を出て彼らの後をついていくことにした。
歩いているとさらに人が集まってきた。
どうやらみんなお城を目指して進んでいるようだった。
俺は隣を歩く背の高い剣士に声をかけてみた。
「すいません。何かあるんですか?」
「ん、ああ。明日の格闘大会の予選があるんだよ。こいつら多分みんな同じ目的だろうな」
「え? 格闘大会って明日じゃ?」
「明日は本選だよ。大勢の観客とベルーガ国王の前で戦うんだ。ってもしかしてあんたも参加者か?」
剣士は俺の持っていたエクスカリバーを見て訊ねてくる。
「え、あ、まあ一応」
「悪いこと言わないからやめときなって。そんなおもちゃみたいな剣じゃ殺されるのがオチだよ」
おもちゃみたいじゃなく実際レプリカなんだけどな。
それにしても予選があったなんて全然知らなかった。
早く着きすぎたと思っていたが災い転じてなんとやらだな。
俺は人の流れに身を任せるとそのままベルーガ城の中庭へとたどり着く。
「おお!」
そこには既に沢山の参加者たちが集まっていた。
二百人はいるだろうか、見るからに強そうな者たちばかりだ。
とそこへ、
「えーみなさん、わくたしは大会実行委員長兼司会を務めますキスギと申します! わたくしどもの予想に反してかなりの数の方々にお集まりいただきまして誠にありがとうございます! しかしながらこの数で予選を行うとなるととても明日までには終わりそうにありません! なので大変心苦しいのですが急遽参加条件を設けたいと思います!」
マイクを持った年配の男性が一段高い台の上に立って言った。
「なんだよそれ!」
「どういうことだっ!」
「聞いてないわよ!」
集まった人たちから声が飛ぶ。
「申し訳ございません。参加条件はレベル100以上の方とさせていただきます!」
そのキスギさんの言葉に、
「ふざけるなっ!」
一段と大きな声で怒鳴る男がいた。
見ると球体のような体型の男だった。
「オレはレベル99だっ! オレを落とすって言うのか、ああっ!」
男は声を荒らげキスギさんに近寄り、キスギさんの胸ぐらを掴むと片手で軽々と持ち上げた。
「も、申し訳ございませんがその通りでございます!」
「ふざけんじゃねぇっ!」
男は腕に力をこめる。
「う、うぐぅ……」
キスギさんがマイクを地面に落とした。
まずいな。助けに入るか?
そう思った時だった。
「みっともないな」
集団から一人の男が前に出た。
あれ? あいつさっきの背の高い剣士じゃないか。
「ああ? 何か言ったかそこのヤロー」
「ぶくぶく太ってみっともないと言ったんだ」
「な、なんだと貴様ぁっ!」
男はキスギさんを地面に投げ捨てると剣士に向かっていく。
鼻息がかかるくらいの距離まで顔を寄せにらみつけた。
が、剣士は動じない。
「おれは参加条件を満たしているからさっさと予選をやりたいんだけどな」
「何を! 貴様レベルいくつだっ!」
「いいこと考えたぞ。あんたおれに一発でも攻撃を当てられたらおれの参加資格をくれてやるよ、どうだ?」
男の問いには答えず淡々と話を進める剣士。
「キスギさんもそれでいいですよね?」
「い、いやしかし……」
「大丈夫、おれを信じて。絶対こいつなんかに負けないですから」
「……は、はあ」
大会委員長でもあるキスギさんが小さくうなずく。
「だそうだよ。さあ、かかってこい丸いの」
「殺してやるぜぁっ!」
男が全体重を乗せたパンチを剣士に向けて放った。
見た目よりかなり早い。
しかし剣士はそれを難なく避ける。
男の連打はなおも続くが剣士はダンスでも踊っているかのように華麗にかわしていく。
そして連打をかわし終えた次の瞬間、剣の柄の部分を思いきり男のあごに横から突き当てた。
男は「あえぇっ!?」と奇妙な声を発しながらよろけてそのまま地面に顔から倒れた。
「おれ攻撃しないとは言ってないよな」
剣士は気絶している男を見下ろしながら言う。
「あ、でも言い忘れてたことがあった……おれのレベルは400だよ」
「400っ!?」
「あ、あいつ今なんて言った?」
「レ、レベル400だって!?」
周りで見ていた者たちがざわつく。
それもそのはず。
俺の元仲間で現Sランクパーティーの英雄セフィーロたちでさえレベルは300台だからだ。
「う、嘘だよな……? あんな奴見たことも聞いたこともないぜ……」
「でもさっきの動き見ただろ……」
「レベル400なんて、なんでそんな奴がこんな大会出てんだよっ……」
「オ、オレやっぱ帰るわ……」
「わ、わたしも……」
剣士のレベルを聞いて一人また一人と中庭をあとにしていく参加者たち。
そして気付けば二百人ほどいた参加者たちは俺を含め四人にまで減っていた。
キスギさんはその状況を見てマイクを握る。
「え、えー、本選出場枠は四名でしたのでここにいる四名の方が明日の本選に出場することが決定いたしました! 以上を持ちまして予選を終了させていただきます!」
こうして俺は思いがけず本選出場を決めたのだった。
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