第14話 ベルーガ城へ
「じゃあちょっと行ってきます」
言うなり俺の体がふわっと浮かび上がる。
ベルーガ国王主催の格闘大会はベルーガ城の中庭を使って開かれるという。
バラン村からベルーガ城へは二日ほどかかるとふんで俺は開催予定日の二日前にバラン村を出発することにしたのだった。
「いってらっしゃーい!」
「頑張ってねー!」
「無理しないでくださいよ!」
「おじさん、優勝だからねー!」
村のみんなに見送られながら俺はベルーガ城へと飛び立った。
☆ ☆ ☆
ベルーガ城に行くのは何年ぶりだろう。
城内で鍛冶職人として働いていた頃は城下町に住み毎日城に通っていた。
まあそれもベルーガ国王の幼なじみだから雇ってもらえていたに過ぎないのだが。
格闘大会では武具の使用が認められているらしい。
これは俺にとっては非常にラッキーだ。
いくらレベルが150に上がったといっても戦闘経験ほぼゼロの俺が武器も防具もなしに戦うのはちょっと無理がある。というか怖い。
優勝賞金は金貨百枚だから国中の猛者が集まってくるだろうしな。
俺の現在の主な装備品は俺が鍛冶職人のスキルを活かして作った三つの武具。
一つ目は左腕にはめたダメージキャンセラーという腕輪。
この腕輪は物理ダメージと魔法ダメージをゼロに出来るという俺が作った装飾品の中でもとびっきりのチート防具だ。
これさえあれば相手がどんな奴でもまず負けることはないだろう。
二つ目は背中に羽織っているスカイマント。
このマントがあれば縦横無尽に空を飛べる。
今まさに空を飛べているのはこの防具のおかげだ。ちなみに防御力自体はゼロに等しいから防具としては期待出来ないがダメージキャンセラーがあるので問題はない。
そして三つめは右手に持った黄金の剣エクスカリバー。
見た目は立派で神々しいが切れ味など一切ないただのレプリカの剣。
しかしその実、太陽の化身を宿していて持ち手部分のボタンを押すと強力な太陽エネルギーを放出することが出来る。
威力は充電した太陽光の量に比例するらしいがそこのところは俺もいまいちよくわかってはいない。
「なあエクスカリバー。お前手加減出来るよな?」
『何、どういうことよ?』
エクスカリバーは訊き返してくる。
エクスカリバーの声が頭に直接聞こえる。
「ミノケンタウロスを倒した時みたいな強いエネルギーだと多分相手を殺しちゃうだろ。今回の大会で死人は出したくないからさ」
『何甘いこと言ってるのよ。勝負は殺るか殺られるかでしょっ』
エクスカリバーは太陽の化身なだけあって気が強い。
「怖いこと言うな。死人が出たら後味悪いだろうが」
『だったらボタンは押さないことね。私手加減なんて出来ないもの』
「はあ? 太陽のエネルギーを使わなかったらこんなのただのおもちゃの剣じゃないか」
俺はエクスカリバーを振ってみせる。ひゅんひゅんと風を切る音がする。
子ども用に作ったレプリカだからめちゃくちゃ軽い。
「自慢じゃないが俺は剣術を習ったことなんて三十六年間一度もないんだからな」
『知らないわよ、そんなの。はぁ~あ……私眠くなってきちゃったから寝るわ。城に着いたら起こしてちょうだい』
「あっ、おい。俺はどうやって戦えばいいんだよっ」
『……』
「おい、エクスカリバー!」
『……』
そこからはエクスカリバーは何を言ってもうんともすんとも言わなくなってしまった。
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