第11話 エクスカリバー
ミノケンタウロスを倒した翌日、俺は黄金の剣を握りしめバラン村の裏山の切り立った崖の下に一人立っていた。
なぜそんな場所にいるのかというと黄金の剣の仕組みを探るためだ。
万が一またミノケンタウロスのようなモンスターが襲ってこないとも限らないのでその前に使いこなせるようになっておきたい。
昨日のあの金色の光が放出されても被害が出ないようにと俺はこうして村から離れた人気のないところにわざわざ移動してきていたのだった。
「それにしてもこんなおもちゃの剣でよくあんな化け物倒せたよなぁ」
俺は右手に持った黄金の剣に視線を落とす。
見た目こそ立派で神々しい剣だが、たかだか数分で作ったレプリカの剣に過ぎない。
子ども用に作ったので重量もほとんど感じない。
「どうなってんだろうな」
自分で作ったものだが光が出る仕様には作っていない。
ましてやモンスターを消滅させるほどの高エネルギーを発するなどあるはずがないのだが。
「……やあっ!」
俺は剣を構えると崖に向かって振り抜いてみた。
崖との距離は百メートル以上離れているので当然ながら崖には傷一つつかない。
「やっぱりそうだよなぁ」
予想はしていたがミノケンタウロスを倒した時の光は出ない。
うーん……それなら昨日とまったく同じ感じでやってみるか。
俺は誰にも見られていないことを確認してから、
「うおおぉぉーっ!!」
必死に叫んでみた。
……。
しかし何も起こらない。
「……は、恥ずかしい」
体が熱い。
間違いなく俺の顔は真っ赤になっていることだろう。
いい年して何をしてるんだ、俺は……。
「はぁ~……帰るか」
俺は黄金の剣を片手に自分の名前の付いた村に帰ろうと一歩踏み出した。
とその時、
『あんた何がしたいわけ?』
若い女性の声が突然聞こえた。
「えっ?」
俺はきょろきょろと声の出所を探す。
「誰だ? 誰かいるのか? おーい」
『どこ見てんの。ここよ、ここ。あんたが今右手で持ってるでしょ』
声を頼りに右手を見た。
だが俺の右手には黄金の剣が握られているだけだ。
……いやいや、まさかな。剣が喋るはずな――
『そのまさかよ』
「うわぁっ!?」
俺は驚いた拍子に剣を放り投げてしまう。
『ちょっとー! 大事に扱ってよねっ』
「あ……わ、悪い。今頭の中に声が聞こえた気がしたからつい……ってやっぱり剣が喋ってるのか……?」
『もうっ、砂がついた。最悪~』
不機嫌そうに言うその言葉も頭の中に直接響いて聞こえてくる。
「なあ、これどうなってるんだ? お前は誰なんだ? ちゃんと説明してくれ」
『その前にとりあえずその剣拾ってよ。そんで砂はたいてきれいにして』
「え?」
『聞こえたでしょ。早くっ』
俺は事態を飲み込めないまま言われた通りに剣を拾い砂をはたいた。
「今喋っているお前は剣なのか?」
自分で言っててバカらしいが今のところそうとしか思えないから仕方がない。
周りに誰もいないのが救いだ。
『半分当たりで半分外れ。私は太陽の化身よ、今はあんたが持ってるその剣の中に半分近く封じ込められちゃってるけどね』
「わからん。もっと詳しく頼む」
『作ったあんたがわからないのに私がわかるわけないでしょっ。あんたがその剣作る時にどういうわけか私を取り込んじゃったのよ。いい迷惑だわっ』
「本当に俺がそんなことしたのか?」
『あんたが作ったんでしょうがっ』
うーん、そう言われても俺はこの剣を作った時はハイになってたから正直よく覚えていないのだ。
「お前の名前はなんていうんだ?」
『名前なんてないわよ。太陽の化身だもの』
「そっか……じゃあサンっていうのはどうだ? いい名前だろ」
『……』
「おい、聞いてるのか? サン? サンっ」
「あのう、サンって誰ですか?」
「おわっ!?」
気付くとリエルがすぐそばに立っていた。
不思議そうに首をかしげている。
「え、いつからいた?」
「えっと、お前の名前はなんていうんだ、辺りからです」
「へ、へー……」
「さっきのっておまじないか何かですか?」
リエルはつぶらな瞳を俺に向け訊いてきた。
「ま、まあそんなとこ、かな。それよりリエルは何か俺に用?」
「あっ、そうでした。お昼ご飯の用意が出来たので探していたんです。おまじないが終わったら帰ってきてくださいね」
「う、うん、わかった」
「じゃあ先に戻っていますね」
言うとリエルは村にきびすを返し去っていった。
俺はガゼフさんの家にそのまま居候させてもらうことになったので自然とリエルとも同居することになっているのだった。
リエルの姿が見えなくなったのを確認してから俺は剣に向き直る。
「おいサン。リエルがいたなら教えてくれよな。あやうく変な奴だと思われるとこだっただろ」
リエルが純粋な子で助かったが。
『それよりあんた、なんでこんなところに来たのか目的忘れてない?』
俺の言葉を無視して訊ねてきた。
『私の力を確認するためだったんでしょ』
そういえばそうだったな。すっかり忘れてた。
「じゃあ、ミノケンタウロスを倒した時の光はどうやったら出せるんだ?」
『持ち手のとこにボタンがあるでしょ。それを押してみ』
「ボタン? あ、あーこれか。見にくいなぁ」
金色の持ち手部分に金色のボタンがあった。
正直こんなものをつけた記憶はまったくない。
俺は剣を持ちながら試しにその金色のボタンを押してみた。
すると、
「うわっぶねっ!!」
剣先から一瞬にして光が伸び出てきた。
髪の毛に光がかすりじゅっと焼けこげる。
『何してんのあんた。自殺する気?』
「お前がちゃんと説明しないからだろっ」
『ちょっと考えればわかるでしょ』
「まったく……っていうか昨日に比べるとあんまり大きくないなこれ。光も弱い気がするし」
光は百メートルくらい伸びてはいるが細長くてあまり大きくない。光も直視できるくらいの明るさだ。
ミノケンタウロスを倒した時の光はこんなものじゃなかった。
もっと大きくそれこそ太陽のようなエネルギーを発していた。
『太陽光を長く浴びればもっと大きく強くなるわよ』
とサンが言う。
『まあ今の状態でもそこの崖くらいだったら簡単に破壊できるでしょうけどね』
「本当か?」
俺は半信半疑のまま崖に向かって光の伸び出た剣を振り下ろしてみた。
すると、
ザンッ!
崖が真っ二つに割れた。断面はチョコレートのように溶けている。
「なっ……!」
俺は絶句して固まってしまう。
『ほら言ったでしょ。その剣がある限りあんたは世界最強の剣士よ』
「……マ、マジかよ。なあ、サン。お前が――」
『ねえ、そのサンて名前くそダサいわ、やめてくれる。あのバカガキが言ってたエクスカリバー? の方がまだマシよ』
「……お前口悪いな」
バカガキってザジーのことだよな。
『そうよ、そのバカガキのこと』
「あっ、やっぱり。お前俺の心の声聞こえてるだろ」
『聞こえてるしあんたの脳に直接喋りかけることも出来るわよ』
道理でサン、じゃなくてエクスカリバーの声が剣から聞こえたり頭の中に直接響いたりするわけだ。
「っていうか頭の中覗くのやめろよ、恥ずかしいこと考えられないだろ」
『考えなきゃいいでしょ』
「考えないようにって思うほど考えちゃうんだよ。あー駄目だ」
『あっ、ちょっとやめなさいよ変態っ。もうっ信じらんないっ』
☆ ☆ ☆
その日の夜――
俺はセフィーロたちが神喰いのダンジョンの最深階でボスのミノケンタウロスに返り討ちに遭い、命からがら王都に逃げ戻ったということを風の便りで知ったのだった。
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