第10話 嵐が過ぎ去って
「あのモンスター消えたわよ」
「た、倒したのかしら?」
「バランさんがやってくれたわ」
「わたしたち助かったのねっ」
ザジーに続いて村の女性たちも次々と家から出てくる。
「おじさん、超つえーじゃん。さっきのどうやったの? ぼくにも教えてっ」
俺のもとへ駆け寄ってくるザジー。
「あ、あ~……」
どうやったかなんて俺にもわからない。
ただ必死で叫んだらレプリカの剣から光が伸び出てきたのだから。
「バランどの、ありがとうございました。いやあ一時はどうなることかと思いましたがバランどのも人が悪い、あんな奥の手を隠していたとは。わしはてっきりバランどのは弱いのかと疑ってしまいましたぞい」
ガゼフさんがリエルに支えられながら歩いてくる。
俺の前まで来るとリエルは俺の目を見てから深々と頭を下げた。
「すみませんバランさん。私も実はバランさんは強くないんじゃないかと思っていました。というのも最近王都でSランクパーティーを実力不足でクビになった人がいて、なんでもその人の名前がバランという名前だったそうなのでその人がバランさんなんじゃないかと疑っていました……すみません」
「いやぁ……」
謝る必要なんてまったくない。
事実その通りなのだから。
「バランどの。バランどのにはこの村を救ってくれたお礼として是非わしの代わりに村長になってもらいたいのですがどうじゃろうか?」
俺の手を取りしっかりと包み込むように握るガゼフさん。
目を見る限り本気で言っているようだった。
「いやいや、そんな恐れ多い――」
するとガゼフさんに追随するように、
「あら、それはいい考えだわ」
「ガゼフさんももう年だものねぇ」
「命の恩人なんだしわたしも村長として迎えてもいいわよ」
「元Sランクの冒険者が村長なら安心ねっ」
「賛成!」
村の女性たちが口にする。
「ほれ、村の者たちもこう言っておることじゃし。のう? バランどの」
「は、はぁ……」
王都に居場所のない俺からしたらこの上ないお誘いだが村長というのはさすがに気が引ける。
俺は村人Aくらいでちょうどいいのだが。
それに未だにミノケンタウロスを倒せた理由もよくわかっていないのも気がかりだ。
すると、
「おじさん、ぼくのエクスカリバー返して」
ザジーが俺のズボンをぐいぐいと引っ張ってきた。
「ん? エクスカリバー?」
「その剣だよー」
「あ、ああ、悪い。これのことか」
黄金の剣を返そうとすると、
「こら、ザジー! あんたまだ返してなかったのかいっ!」
「げっ、母ちゃん!」
ザジーをにらみつけながら若い女性が近寄ってきた。
「バランさんにちゃんと返しときなさいって言ったでしょうが!」
「いてててっ! ごめんなさい母ちゃん!」
ザジーの耳を引っ張りながら大声で怒鳴る若い女性。
どうやらザジーの母親らしいな。
「すみませんねぇバランさん、うちのバカ息子が無理言ったみたいで」
「い、いやあ、別に」
俺に向き直るザジーの母親。
目がつり上がってて迫力に圧倒されそうになる。
「人様から物をもらっちゃ駄目だっていつも言い聞かせてるんですけど、このバカっ」
「いててっ!」
「その剣はお返ししますので、ほんとすみませんでした。ほら行くよザジー!」
「わかったから放してよ、母ちゃん!」
ザジーの母親はザジーを連れ嵐のように去っていった。
「……おっほん。してどうじゃろうか? バランどの。わしに変わって村長を引き受けてもらえますかな?」
「えーっと……」
俺は村人たちの顔を見比べる。
みな一様ににこにこしながら俺をみつめていた。
「バランさん、おじいちゃんのお願い聞いてあげてください。お願いします」
リエルも俺の目をみつめると頭を下げる。
「え、えっと、じゃ、じゃあ……こちらこそお願いします」
俺の返事を待っていたかのようにどっと村中に黄色い歓声がわいた。
そしてこの瞬間からガゼフ村はあらたにバラン村へと生まれ変わったのだった。
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