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エルマンノ・ボルゲーゼ2

 今日の授業は午前で終わりだったので、そのまま俺たちは騎士団に行き、訓練をしていた。


 アリーが友人たちを連れてきた日から、時間が合えば俺たちは六人で食事の席を共にしていた。始めこそ周囲の女性たちが、やいのやいのと何やら言ってきたが、最近はそれも落ち着いた。


ランザ嬢も、ここ数日は震えることなく食事を楽しんでいたようだ。


 初めてランザ嬢に会った時、なんて小さいんだと思った。俺の胸辺りにやっと頭のてっぺんがくる。アリーの友人だったのもそうだが、このあまりにも小さな彼女は相当気を付けて扱わなければ、そう思った。


震えなくなった今でもそれは変わらず思う。


彼女は本が好きらしく、しかもジャンルは問わずなんでも読むそうで、戦術の話で盛り上がった時は本当に楽しかった。俺の話も熱心に聞いてくれるし、それに対して的確に答えが返ってくるのが楽しくてたまらない。


 デュランは、もう一人のフランカ嬢をどうやら気に入ったようだ。黒い部分を彼女にだけは隠そうともせず見せている。彼女も震えながらも受け入れている。俺には理解出来ないがゲイブリエル殿下はわかるようで、羨ましそうにしていた。


当のゲイブリエル殿下は、アリーとはいつも当たり障りのない会話をしている。お互いに気持ちが溢れているのに、決して口にはしない。たまに見つめ合う二人を見ているとこちらが苦しくなってしまう。なんとかしてやりたいのに、何もしてやれない自分が不甲斐なく感じる。


ダヴィデ殿下はDクラスになったからといって、悔い改めるという発想はないらしく、相も変わらずのようだ。今は、Dクラスの頂点に立って粋がっているらしい。


ゲイブリエル殿下ほどではないにしても、見目は整っているためクラスの女性にモテまくっていると聞いた。中でも一人お気に入りがいるとか……何か事を起こしてくれないだろうかと思っているのは俺だけではないだろう。


「そういえば、もうすぐテスト期間に入るな」

今日も王族専用の応接室で、執務を手伝っている。書類に目を通しながらゲイブリエル殿下が言った。


「そうだけど……今更テストに何か?」

常にトップをキープしている殿下が何を気にしているのだろうかと不思議に思う。


「兄上からダヴィデの勉強を見てやってくれないかと言われたんだ。仕方がないから言われたその足で、ダヴィデに言いに行ったんだが……」

ふうっと溜息を吐く殿下。


「断られたでしょうね」

デュランが答えれば、当然と言って笑う殿下。


「Dクラスだからってバカにするなとさ。今回は自信があるから上位に入ってしまうだろうって言っていたよ」

「その自信というのは、一体どこからくるんだろうな」

俺は彼の思考が全く理解できない。


「アホ王子の考えることなんて一生かかってもわからないだろうね」

デュランがそう言って笑っていた。


 そしてテストが終わり、順位表が貼り出された。

4年生の1位は勿論、ゲイブリエル殿下だ。そして2位がデュラン。


「くっそぉ、今回は勝てると思ったのになぁ」

「ははは、俺も調子が良かったんだよねえ」

俺は2点差で3位に甘んじる事になった。


「さ、それじゃあ1年の成績を見に行くぞ」

ゲイブリエル殿下の言葉で俺たちは上へと上がる。


1年生の階へ行けば、やはりもう貼り出されていた。


「どれどれ、1位は……」

「やっぱりアリーだったね。ダントツじゃないか。流石俺の可愛い従妹だ」


「おっ、2位はランザ嬢じゃないか」

「凄いね。フランカ嬢は5位だ。彼女もなかなか凄いじゃない」

「三人とも優秀だな。で、ダヴィデはどこだ?」

三人で目を皿のようにして探すが見当たらない。


順位表は上位50名までしか載らないので、つまりはそれよりも下ということだ。

ちょうど通りかかった先生を呼び止める。


「すみません、ダヴィデの成績はどのくらいだったのですか?」

「これはゲイブリエル殿下。甥御さんが心配で来た感じですか?残念ながらダヴィデ殿下は下位10位の中に入りますよ」


「下位10位……ですか」

予想以上の悪さにショックを受けたのか、ゲイブリエル殿下が俯いてしまった。


「まあ、あれだ。予想を遥かに超えた順位だったが、まだ次もある……」

「ククク」

「ん?」

こいつ、ショックを受けていたんじゃなくて、笑うのを堪えてたのか。


「ゲイブリエル殿下。もう少し我慢してくれる?あっちの方なら人がいないから」


「ククク、アハハハハ。もうホント、救えないアホさだな。もう心配するのも馬鹿馬鹿しい」

人のいない廊下まで行き、ひとしきり笑ったゲイブリエル殿下は、大きく溜息をつき独り言のように呟いた。


「やはり、あんなアホにアリーを渡したくないな」


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