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国王と宰相、そしてダヴィデ・アッガルディ

「はあ、頭が痛い」

「心中お察しいたします」

「……全く察してない気がするが、気のせいだろうか」

「気のせいではございませんよ」

宰相であるチェルコーネ公爵が、ニッコリ笑った。


「予想通りというか、そうなって当然というか。陛下もわかっておりましたよね」

「まあな」

幼少の頃から我の強い子供だったダヴィデは、どんなに説得しても叱りつけても、勉強を嫌がり逃げ回ってきた。王立学園に入る前は流石に勉強していたようだが、そんな付け焼刃でどうこう出来る学園ではない。


案の定、惨憺たる結果だった。


「Dクラスとは一体何人くらいいるのだ?」

「20人ほどいるそうです。まあ、皆、男爵や子爵で平民と変わりない生活をしてきたものばかりだそうですが」

「……そうか」

そんなクラスに入った愚息は、少しは自分の置かれた状況を打破しようとしてくれるだろうか。


「これで、ゲイブリエル殿下を継承権から外すことが出来なくなりましたね」

「そうだな。ゲイブリエルには申し訳ないが」


「アリアンナはどう思っているのでしょうかね」

宰相が目を細める。きっと彼女の姿を思い出しているのだろう。彼の言いたいことはわかっている。そもそも彼は、姪であるアリアンナ嬢可愛さに、一時は自分の息子の嫁にと狙っていたのだ。


 だが大教会から『神を呼ぶ聖なる声』の持ち主だと宣言されてしまい、聖女として生涯神に仕えるか、王族と婚姻関係を結ぶかのどちらかしか選択出来なくなってしまったのだ。なんとも可哀想な話ではあるが、大教会に軟禁されるよりはましだと思ってもらえればいいなと思う。


 初めてアリアンナ嬢を見た時は、間違いなく神の使いであろうと思ったものだ。幼いながらも整った顔立ちに、なんとも言えない色合いの瞳が印象深かった。正直、義理の娘となってくれることを、誰よりも私が楽しみにしているのだ。


しかし今回の事で、あんな不甲斐ない息子に嫌気が差していることだろう。ゲイブリエルであれば、皆が祝福する仲になっていたかもしれない。


「はあぁ」

本当にもう溜息しか出て来ない。


「もうこうなったらアレですね」

突然、宰相が距離を詰めてきた。


「な、なんだ?」

こいつも大概顔が整っているな、などと思ってしまったのは仕方ない。


「ダヴィデ殿下は諦めて、ゲイブリエル殿下が王位に就くように興味を持たせましょう」

「はっ?」

「陛下には申し訳ないのですが、周囲の貴族は勿論、国の民たちもきっとそれを望んでいます」

「そ、それはそうだろうが……」

言えない。自分もそう思っているなんて。自分の息子を差し置いて、可愛い弟を王位に就けたいなんて。思っていても言えないぞ。


「この1年が見極め時です。ゲイブリエル殿下が卒業してしまったら、最悪、国を出てしまう恐れもありますし」

「ゲイブリエルは臣下に下りたいと言っているのにか?」


「そうです。王位に就きたくないからこそ、早々に継承権を返したいと言っているのでしょう。今はまだ、学園生活が残っていますからいいでしょうが、卒業したら面倒だと逃げてしまうかもしれませんよ」

確かに一理ある。アイツもこうと決めたらとことん貫くタイプだからな。


「……わかった。ダヴィデの成績が上がることが一番だが、ゲイブリエルの気持ちも変えていけるようにしよう」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 この俺がDクラスとは一体どういう事だ!?


非凡であり、ゆくゆくは国のトップに立つ男だというのに。これはきっと学園側で何か不正があったに違いない。


大方、俺が王になる事を面白くないと思っている連中が、何かを仕掛けたのだろう。兄上を支持する貴族どもとかな。


 父上の歳の離れた弟である兄上は、いつも何かをしていた。勉強であったり、剣術であったり、馬術であったりと多種多様にやっていた。それを見て俺は、可哀想だと思っていた。


だって、そこまで努力しなければ何も身に付かないなんて。俺はなんでもすぐに出来たから、本当に可哀想な人だと思っていた。


俺にはとっとと天使のような女が婚約者になったのに、兄上は未だにまだ婚約者がいない。


まあ、アリアンナの事はあんまり好きにはなれないが。見た目は確かにそんじょそこらの女が束になっても勝てない程に美しいが、幼い頃からいつも俺に注意をしてきた。もっと勉強しろだの、国の内情を学べだの、とにかくうるさかった。


『神を呼ぶ聖なる声』だか何だか知らないが、あんな根性じゃ神なんて呼ばれても出てくるわけないと思う。それくらい口やかましい。


まあ、アリアンナとクラスが分かれたのは良かったな。アイツがAクラスなのは納得がいかないが、どうせすぐにボロが出るだろう。


 さあ、まずはこのクラスの王としての立場を確立してやるとしようか。


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