7月16日
この暑い時に、体育の授業なんてやる気にならないけど数学とかよりはマシかな。
ペアを組んでストレッチをしろ、だと。
この暑さの中で何言ってるんだ、と思いつつも強面の体育教師に面と向かって文句を言う奴はいない。
体育の授業は隣のクラスと合同で、名前順でセンパイの弟と組むことになった。
「よろしくー」
少しダルそうなヤツは何処と無く似ている。
背中合わせになって引っ張りあう。
ヤツの体からボキボキ聞こえてちょっとビビった。
それ男子高校生としていいのか。
俺は運動は得意なので、ストレッチも難なくできる。そもそも俺がセンパイに目をつけられたのも体育祭がきっかけだし。
人が汗ばんできたというのに、センパイの弟は涼しげなまんまだ。この姉弟は汗をかく、なんてことが無さそうだ。
「なー、お前のお姉さん頭よくて学校来ないってほんとう?」
ふらふらとやって来た山野がセンパイの弟に話しかける。
「さあ。そんなんゆるされるの?学校的に。」
「弟がそれいう?」
「姉貴が頭いいと思ったことねえもん。」
「どーいうことさ。」
「姉貴はしたいことしかしないから。学校とか向いてないんじゃん?そんなの頭いいとは言わないでしょ。」
センパイの弟はなぜだかこちらをチラリと見た。
その意味ありげな視線はなんだよ。
「そうなんかー。」
「なんか、センパイ難しい人みたいだね。」
山野にこそっと耳打ちをされる。
だから、どいつもこいつもなんなんだよ。
「俺に関係ないし。」
「話変わるけどさ、お前の幼馴染みって子、市川にぞっこんじゃねー?」
「ゾッコンて。なんか古めかしいな。」
センパイの弟に山野がつっこむ。
「じゃあ、ふぉーりんらぶ?」
首を傾げるセンパイの弟と山野は何やら言い合ってる。
市川はまた別のクラスのやつだ。
たしかにそう。幼馴染みは多分市川のことが好きだ。市川も多分。
「一応言っとくけど、姉貴そのこと知ってるぜ?」
は?
「市川とお前の幼馴染みがイチャイチャしてるところよく見かけたもん。」
「え?っていうか、センパイ市川のこと知ってるの?」
「同中。俺のともだち。」
そうだったんだ。
「あー、っていうか、姉貴がどういうヤツかお前さては知らねーな?まあ興味もねえか。」
確かに知らない。けど。
「なんか、お前センパイのこと好き過ぎない?普通姉弟ってそんなに口出すもの?」
「姉貴と仲良いもん。つかいい加減弟離れをしてほしい。せっかくその機会が目の前にあったらー、食い付くっしょ。」
きょとんとしてると笑われた。
「村入、お前興味あるなら見てみれば?」
なにを?
「お前以外に対する姉貴。」
センパイの弟はセンパイに似た笑顔をした。




