表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/21

7月23日

 夏休み前最後の日。

 暑いっていうのに長谷川は制服の袖を下ろしてる。

 最近ずっとだ。


 長谷川は何気に頭良いので補習は受けなくて大丈夫らしい。

 おれよりサボってたくせにどういうこと?


 それはともかく。

 1ヶ月弱、会わなくなることが心配、なんて男が言ったらキモいだろうか。


「暑くないの?」

 って聞いたら、少しビックリした顔したあと、ヘラって笑った。

「別に?つうか村入、何か顔恐いよう。」


「長谷川はさ、どう思ってるか分かんないけど。俺は長谷川のこといい奴って思ってるから、」

 だから、長谷川が困ってるなら助けたいって思うんだけど。


「村入はさー、可愛い彼女がいてさー、クラスの連中とも仲良くて。」

 シャツとかいつもキレイで、親に大事にされてるってすぐ分かる、呟く長谷川。


「なに急に」

「そういうわけで。俺みたいな奴の気持ちなんてわかんねーでしょ?」


「別にいいんさ。村入はずるいなぁって憧れてたいだけ。ほっといてよ。」

 って長谷川は笑った。


 金髪でピアスびっしりで煙草も吸って、教師にイヤミ言われてもヘラって笑って流して。

 そんな風なくせにそんな風に笑うなよ。


 なんか俺の周りの人ってよくそういう顔をする。


 センパイも長谷川も。


 俺なんかに何が出来るとも思わないけど。

 見るたんびに、俺は無力感に苛まれたりしてる、結構。


 お前だって、俺のそういう気持ちわかんないでしょうが。



 放課後になって西村さんと帰る。部活ガールの西村さんだけど、さすがに今日はないらしい。


 西村さんはいつも楽しそうだ。

 安心して一緒にいられる。


「村入くん?大丈夫?」

 ふと西村さんの話が止まった。

 見ると、心配そうな顔をしてこっちを見てる。

「大丈夫だよ?ごめん、ボーッとしてた?」

「ううん。なんか元気ないから。私でよければ聞くよ?」

 真剣な表情の西村さん。やっぱり西村さんはすごい。


「自分の無力感になんか、落ち込んでる。もっと楽しそうに笑ってほしいとかね。…バカみたいだよな。何が出来るわけでもないのに。そんなんほっとけって言われるよな。」

 つい愚痴ってしまった。

「えっと、ごめん、なんか。忘れて。」

 こんな答えの出ないことを人に聞いてどうするんだっていうのに。


「ううん。嬉しいよ、話してくれて。」

 西村さんは変わらず真剣な表情だ。

「村入くんは、優しいよね。だから、きっとそう思うんだね。」

「優しくなんかないよ。なんにもしてないし、つうかできないし、」


「ううん。優しいよ。村入くんが楽しそうに笑っててほしいって思ってくれてるって知ったらきっとそれだけで。」

 私だったら嬉しくて泣いちゃうなって。

「…なーんて。へへへ。」


「ありがと、西村さん。」

「いやいや。全然。本当に。あはははは。」

 照れてる西村さん。


 西村さんは可愛くて、やっぱりすごい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ