5月28日
2年になって、クラス替えがあった。つるんでた奴らとは離れてしまった。
部活入っている奴らとか、こういう時はなんかいいよなあって思って早2ヶ月。
隣の席の長谷川は今日も荒れてるらしい。2限の終わりに来てドカっと座った。ちらりと見えた顔には痣が出来ていた。
4月当初は、クラスメートも扱いに困ってたけど、見慣れた光景すぎて早くもスルーしてる。
「村入ー、次ふけねー?」
ツンツンと話しかけてくる長谷川。
まだ授業中だっつーの。
次は現国か。
どうせ寝るだけんなるし、いっか。
「いーよ。」
んじゃ、先いっとくーと長谷川は教室を出ていった。
さすがに怒るんじゃと思ったけど、先生はおほほと笑ってスルーだ。伊達じゃないな。
旧校舎の屋上へ出ると、長谷川は柵に寄りかかって煙草を吸っていた。
「いってー、」
切れた口の端が染みるらしい。
「痛そ。大丈夫かよ。」
俺の呆れた視線に、長谷川は気まずそうに笑った。
「ん。大丈夫。」
長谷川は気合いの入った金髪に何個穴あるんだよってくらいの耳で。平気で煙草吸うし、普通にクソヤンって感じだけど、話すと人当たりいいしどっちかっていうと世渡り上手な部類の人間な気がする。
だから、正直何がこいつを駆り立てるのかさっぱり。
「村入もいる?」
吸殻を投げ捨て、新しく火を着ける長谷川。
「いらねー。」
つうか、投げんな。
何するでもなく校庭を眺めてると、どこかのクラスの女子が体育をやってた。
「あれ、お前の彼女じゃん。」
やったね、ってウインクしてくる長谷川。
え、なにが?
長谷川、目いいな、そう思いながら探すと見つかった。
ちょこちょこ走り回ってる。
西村さん運動苦手って言ってたけど、一生懸命なんだよな。
「いーなー。俺も彼女ほしー。」
長谷川がぼやく。
「はぁ?お前いっぱいいるじゃん、なんかガールが。」
「俺積極的な女より、こう守ってあげたくなる感じの子がいい。お前の彼女とかみたいな。」
そーですか。
でも。西村さんは。
「西村さんはなんか強いよ。」
西村さんは守ってあげたくなるって感じじゃないんだよなぁ。
ふと思い出す。タバコとキャンディ。
「えっ、西村さんあんな可愛い顔してエスなの?」
それはそれであり、とニヤニヤする長谷川の声に思考が戻る。
「いや、そういうんじゃなくて。」
つうか、人の彼女で変な想像すんな。