9月13日 16:45-
センパイは学校のことをよく知っている。
施錠されていない場所とか、人が来ない場所とか逆に人が来る場所とか。
なんで知ってるのかって、なんとなく分かる。
センパイは難しいヒトだから、だ。
普段使われていない旧校舎へと向かう。
今日は生徒達の控え室や物置になっていて、ちらほらと人がいるけど、センパイは気にした様子もなく階段を上がっていく。
ここ、鍵緩んでるんだ、そう言ってセンパイは屋上へと続く扉を開けた。
コツがあるんだよって教えてくれた。
「屋上出れるなんて知らなかった」
「ヒミツな」
ポケットからセンパイはタバコを出して吸った。
ヒミツ。
「一口吸う?」
センパイが吸ってたタバコを受けとる。
一口吸い込む。苦い。
「間接キスだね」
にやっとセンパイが笑った。
思わずむせる。
センパイはタバコを取り返しまた吸った。
あ。
「間接キスだね。」
今度は照れ臭そうに笑った。
一口、二口吸ったらセンパイはタバコを消した。
ポケットから子供が食べるような棒つきキャンディを取り出して、一本くれた。
センパイはタバコもキャンディもよく似合う。
屋上からは校庭が見える。
そろそろ夜祭が始まるようだ。人が集まっていて、マイクの音も聞こえてきた。
「そろそろ行こーか。」
夕日で、センパイの表情はよく見えない。
笑ってるのかな。
校庭へつくと、なにやら騒がしい。
始まってるみたいだ。
「今何やってるところ?」
近くにクラスメートがいたので聞く。
「こくはくっ!みんなのまえでこくはくっ!」
楽しそうだな。テンション高。
「一年のムライリメグルさーん、ムライリさんいますかー?」
マイクで名前が呼ばれる。
ぎょっとした。
「え?村入?呼ばれてんじゃん!羨ましーっ」
クラスメートが囃し立てるので、周りの注目が集まってしまった。
思わずセンパイを振り向いた。
「行っておいで。」
センパイは本当に綺麗な笑顔が上手い。
トンと背中を押されて前へ出た。
「好きです!友達からでいいのでお願いします!」
同じ学年の子らしい。クラスが離れてるから見たことなかったけど、かわいい子だなと思った。
顔を真っ赤にして。手が震えていて。
「友達からでいいなら。」
それ以外に言いようなんてない。
みんなの前でフるなんてできっこない。