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08話 私は人攫いのアジトにお邪魔しました

私とクルルは、ただいま、絶賛、人攫ひとさらいの男の人たちのアジトにお邪魔しています。

ちなみに、手だけ、後ろ手でロープか何かで縛られています。


「ゴホッゴホッ!」

「ごにゃっごにゃっ!」


私とクルルは咳き込む。


掃除してるのかな?

清潔感がまるでないんだけど〜!!

聞いてみよ!!


私とクルルは、廃墟のようなアジトにいる。

私はちょうど、目の前にいる人攫いのボスに話しかける。


「ねぇ、ボス〜!」

「俺はお前のボスじゃないっ!!軽い感じで、聞いてみよ!!って顔してんじゃねーよ!」


人攫いのボスは、私に、高いテンションで答える。


「じゃあ、なんて、呼べばいいんですか!!」

「いや、人攫いのボスだぞ!睨むなり、ののしるなりしろよ!何、フレンドリーに話しかけてんだよ!!」

「何ですか!罵って欲しいんですか!!変態ですか!!」

「お前も攫われた女の子らしくしろよ!!俺とお前は友達じゃないんだよ!!」


私はチッチッチ、分かってないな〜と、手が使えないので、体全体で表現する。

そして、ミュージカルに出てくる王子のように言葉を並べる。


「この世界には幾万の出会いがあるはずです!攫われた女の子と人攫いのボスという関係でも、私とあなたの出会いは、1つの奇跡なんですよ!1つ1つの出会いを大切にしないといけないじゃないですか!!」

「そうだな......俺が間違っていたよ......俺とお前の出会いは奇跡......」


......

......

......


「んなわけあるかーーー!!」

「ええーーー!今ちょっと、そうかもなって思ってたじゃないですか!!」

「思っていない!」

「思った!」

「思っていない!」

「思った!」


私と人攫いのボスは、むぅ〜、と睨めっこする。

しばらく睨めっこした後、人攫いのボスはニヤリと笑う。


「少し、脅してやるか!」

「な、何ですか、何をする気ですか!もしかして、逃してくれるんですか!!」

「何だ、お前?ケロッとしてるが実は逃げ出したかったのか!!」

「いえ、お断りします!!このまま捕まえてください!!」

「お断りって何だよ!!」

「お断りの意味もわからないんですか!!それは説明が難しいですよ」

「ちげーよ!!なんで捕まりたいんだよ!!」

「理由ですか!!そんなの決まってるじゃないですか!!」

「何だよ!!」

「私とあなたは奇跡の出会いを果たした......それだけで充分じゃないですか!」


私がそう言った時、人攫いのボスからピキン、と何かが割れる音が聞こえた。


「十分じゃねーよ!」


そう言って、私に殴りかかってきた。


「ぎゃーーー!」


私はビビって、拳から目を逸らした。


......

......

......


あれ、飛んでこない。


「ふん、そうしてれば、攫われた女の子に見えるじゃねーか。そうやって、ビビってるもんだ、分かったか!!」


私は顔を上げて、人攫いのボスを見る。

そして、目を輝かせる。


「攫われ方をご教授していただきありがとうございます!!」


私の言葉に、人攫いのボスは、口を顎関節が外れるくらい大きく開き、停止した。

そして、ボスはこの現世に戻ってきて、泣きながら言う。


「俺、今、感謝された。ここ最近、こうやって感謝されることなんてなかったから俺......」

「大丈夫ですよ!親ビン、あなたは、優しい人なんです!見ず知らずだった女の子に攫われ方を無償で教えるなんて簡単にはできませんよ、親ビン!!」

「お前......いいやつなのか......?」

「私はいつでも、親ビンの味方ですよ!!」

「お前......」

「親ビン......」


私と人攫いのボスは見つめ合う。


......

......

......


「俺はお前の親ビンじゃねーーーーー!!そもそも、親ビンじゃねーーーーー!!」


人攫いのボスは拳を私に向けてきた。

私は悲鳴を上げて、ビビって、視線をそらして、目を閉じる。


「ぎゃーーー!!」


『”人攫いの親ビンの拳に耐える”ステータスに自動調整します』


「いってぇぇぇ!!」

「「「お、親ビーーン!!」」」


周りにいる人攫いの男たちは、心配そうな声をあげる。


「お、お前、何食って、体を作ってんだよ!!」

「そうですね、現時点だとお菓子のタブレットだけですかね!!」

「タブレットだけだと......!?そ、そのタブレット、ダイヤモンドか何かだろ!!」

「いえ、普通のタブレットだったような、ねえ、クルル」


私は隣で捕まっているクルルに話しかける。


「ナル......そんなにたくさんタブレットを......食べられないにゃ......」


隣のクルルはそんな寝言を言う。

私は、クルルが風邪をひいては駄目だと思って、人攫いの男たちに言う。


「あの〜、クルルが寝ちゃったみたいで、もし良ければブランケットか何かをかけてあげてもらえませんか?風邪ひいちゃいます!!」


人攫いの男たちは開いた口が塞がらないようだ。

私とクルルの自由気ままな振る舞いに人攫いの男たちは叫んだ。


「「「「「お前ら、ここは友達の家じゃねーーぞ!!」」」」」

ナルとクルルは、攫われたにもかかわらず、全く、緊張感がありませんでした!!

クルルに至ってはすやすや寝ていました!!

ナルだけではなく、親ビンも、ネジ一本飛んでますよね!!


次回は、攫われた女の子を救出するために動き出します!!

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