06話 私はスープが飲みにくいのは嫌でした
クルルと私は、依頼であったキルナの花の採集に成功しました。
「さて帰ろっか!」
「にゃ!帰るにゃ!」
私は来た時と同じように、しゃがんで、クルルを背負おうとする。
その時だ。
剣やナイフを携えたヤバそうな男たちが近寄って来た。
これ、絡まれたらヤバいやつだよ!
私は、無視して、そそくさと逃げようとする。
「ちょっと、待ちなよ、お嬢ちゃん!」
そう言って、ヤバそうな男の一人が、ナイフをペロッと舐める。
え、その癖、危ないよ!
そんなことをしたら、舌が切れるよ!!
この人たちから逃げる前に教えてあげなきゃ!!
私は、立ち上がって、胸を張る。
ヤバそうな男は私の行動を見て声をかけてくる。
「どうした、お嬢ちゃん、泣いて逃げるのかな?」
私は、地面にドシンとしっかり立つ。
そして、自信満々に言い放った!
「ナイフ、舐めたら!危ないじゃないですかっ!!」
......
......
......
私の突然のツッコミに、ヤバそうな男たちが目を丸くする。
理解が追いついていない顔をしている。
私は一歩進んで、さらに言い放つ。
私に圧倒されたヤバそうな男たちは一歩下がる。
「もし、舌が切れたらどうするんですか!!熱いスープを飲んだら、きっと、ゲヘゲヘなりますよ!いいんですか!!」
「い、いやです」
私の自信満々な顔に、ヤバそうな男たちは、私の空気に飲まれている。
「いいですか!それなら、そのナイフを舐める癖、直してください!!」
「は、はい!肝に銘じます!」
ヤバそうな男は雰囲気に乗せられて、敬礼して答えた。
......
......
......
「って、何、ふざけたことを言ってんだクソ女〜〜!その口、利けなくしてやる!」
「ぎゃーーー!」
ヤバそうな男の一人が私にナイフを突き刺そうと突進してくる。
「ナ、ナイフーーー!殺人鬼ーーー!」
私はナイフにビビりまくって、目を閉じて、その場でうずくまった。
「ナル、危ないにゃーー!」
「ダンゴムシさん助けて!アルマジローー!」
私はダンゴムシとアルマジロに祈って、叫ぶ。
ヤバそうな男は、一気に間合いを詰めて私にナイフを突き立てる。
『 ”人攫いたちから身を守る” ステータスに自動調整します』
カキーン!
クルクルクル!
カシャン!
何かが、何かに当たり、回って飛んでいき、地面に落ちる音がした。
私は、そ〜っと、目を開ける。
そこには、目を丸くしたヤバそうな男が立っていた。
握っていたはずのナイフは握っていない。
「お、お前なんなんだよ」
「あ、あなた、私にナイフを突き刺すの辞めたんですか!!本当は優しいんですか?」
「お、お前がやったんじゃないのかよ!」
「ち、違いますよ!!」
「そ、そうだよな!!」
「は、はい!!そうだとも!!」
私は自信満々に、ヤバそうな男に答えた。
「偶然か......」
ヤバそうな男はニヤリと笑う。
あれ、この展開......どこかで......
まさか!!
ヤバそうな男は、今度は、拳でナルに襲い掛かろうとした。
私は、両掌で大きくモーションを取って、叫ぶ。
「ちょ、ちょっと、待ったーーー!!」
ヤバそうな男は、急ブレーキをかける。
「なんなんだよ、お前!」
「あのひとついいですか!!」
「なんだよ?」
ヤバそうな男は、怒りでメンチを切ってくる。
「あの!さっきのナイフを弾き飛ばしたのは私かもしれないです!!」
「本当なのか?」
「はい、私は嘘をつきません!!」
私はえっへん、と胸を張る。
周りのヤバそうな男たちからは声援が聞こえる。
おおおお!
「証明できるのか?嘘じゃないって?」
「しょ、証明ですか......できないです......」
私は証明できず、ショボンとする。
周りのヤバそうな男たちからは落胆の声が聞こえる。
おおおお......
すると、ヤバそうな男が、やれやれ、と提案してくる。
「仕方がない、殴って確かめてやるよ!」
「ええっ、いいんですか!!ありがとうございます!!」
ヤバそうな男が、拳で顔を殴ってくる。
「こ、怖い〜!!」
私は、反射的に拳から顔を守ろうと腕でガードする。
腕に、何かが当たる感覚がする。
その瞬間、ヤバそうな男が大きな声を出す。
「いってぇぇぇ!」
私は腕のガードをおろし、顔を上げる。
「わ、私、強いかもしれないです!」
「お前!う、腕になんか仕込んでやがるのか?そんなほっそい腕でなんて硬さだ!」
「ふっふっふ〜!」
ヤバそうな男はひざまずく。
私は胸を張る。
ここで、気づく!
あれ、そういえば、なんで、こんな状況になったっけ?
「あの、ところで、あなたたちは私たちに何か用ですか??」
私はなんだろうと、純粋に首を傾げると、ヤバそうな男たちがずっこける。
「俺たちは、人攫いだ!!」
「ええーーー!」
「にゃにゃーーー!」
衝撃の事実を知って、私とクルルは、驚いた。
殴ってやるぞと言われ、ありがとうございますと言うなんて、武闘派?ですね!
相変わらずなナルはナイフを軽々弾き飛ばしました。
今回は成長したのか、若干、自分の仕業だと気づくのが早かったです。
次回も、人攫いたちとのコント?が続きます。
劇団員?の人攫いさんとの掛け合いをお楽しみください。