03話 私は剣を簡単に折ってしまいました
「クルル〜!道はこっちで合ってるかな?」
「合ってるにゃ!そのまままっすぐにゃ!」
私は背中に背負っているクルルのナビに従って、歩く。
歩きながら、私はファンタジーな世界の風景を楽しんでいる。
湯気のたった料理を売る屋台がある。
美味しそう!
魔法陣の巻物を売る露店がある。
魔法を使ってみたい!
耳の長い人がいる。ケモミミの人がいる。
可愛いよ!モフモフしたいよ!
そういえばクルルも、ケモミミついてたよね。
私は、背中にいるクルルの方を向く。
ジュルリ。
私はよだれを垂らす。
「ナル、どうしたのにゃ!」
「クルルのケモミミ、モフモフしたいなって!」
「にゃにゃ!や、やめるにゃ!」
「ふっふ〜ん!」
私は背中のクルルのケモミミをモフモフして楽しんだ。
クルルは顔を赤らめて、力が抜けていっている。
「ふにゃ〜......」
クルルは全く力が入らなかくなったのか、背中から落ちそうになる。
私はクルルがなんとか、落ちないように支えた。
「クルル!ごめん、やり過ぎた?」
「耳は弱いのにゃ!」
「ごめんね!やりすぎちゃった?怒ってる?」
「怒ってはないにゃ!でも、手加減して欲しいにゃ!」
「は〜い!お詫びに何かおごるよ〜!」
前世のノリでそんなことを口走る。
そこで私はハッと気づく。
「私たちって、今、一文無しだよね?」
「そうだにゃ!冒険者ギルドで冒険者登録して、お金を稼ぐのにゃ!」
「それは頑張らないといけないね!」
「そうだにゃ!」
私たちは冒険者ギルドに着いた。
「着いた〜!」
「無事、たどり着いて良かったにゃ!」
私はクルルを一旦、背中から下ろす。
すると、頭の中に声が聞こえる。
『”歩く”ステータスに自動調整します』
私が、立ち止まったので、クルルは気になって聞いてくる。
「どうしたのにゃ?」
「今ね、クルルを下ろしたら、また、ステータスを自動調整する声が聞こえたの!」
「にゃに!ステータスを確認してみるにゃ!」
クルルは私を凝視する。
背中じゃなくてもステータスウィンドウは確認できるみたいだね。
「にゃにゃ!」
「どうしたの?」
「ナルのステータスが大きく変わっているのにゃ!」
「えええ!」
「体力のステータスが『500』になって、腕力のステータスは空欄に戻ったのにゃ!」
「そんな!私はまたクルルを背負えなくなったんじゃない?」
「そうかもしれないにゃ!むむむ!」
クルルがまた、驚いた顔をする。
私は、気になって、クルルに聞く。
「今度はなに?今度はなに?」
「残ステータスポイントは『99万9500』になってるにゃ!」
「ど、どういうこと??」
「もしかしたら、ナルは、その時の状況に合わせて最適なステータスに自動調整されるのかもしれないにゃ」
「えええ!それってすごいの?」
「すごいかは、クルルにも分からないにゃ!」
私とクルルはむむむ、と顔を付き合わせる。
「分からないものは考えても仕方ないよ〜!」
「そうだにゃ!冒険者登録をするにゃ!」
私たちの会話を聞いていたのか、大きな男の冒険者が話しかけてきた。
「おい、お前ら、冒険者になるのか?」
「はい、冒険者になります!」
私は笑顔で答える。
大きな男も笑顔になる。
そして、冒険者ギルドに響き渡る大きな声で言った。
「ハッハッハ、聞いたか、みんな!こんな小さな女の子が冒険者になるってよ」
冒険者ギルドの至る所で笑い声が聞こえる。
私は嬉しくなって、クルルに言う。
「ねえ、クルル、私たち、すごく歓迎されているね!」
「みんな、優しくて、安心したにゃ!」
優しい冒険者さん達に出会えて私とクルルは顔を綻ばせる。
「なめてんのか、ガキーー!」
大きな男の人が腰に携えた剣を素早く抜いて、剣をクルルに振り下ろす。
「クルル!」
クルルは身を守る術もなく、その場で立ち尽くしている。
私は、クルルの前に出て、両手を広げ、クルルを守る。
クルルを助けたい!
そう思った時だった、また、頭の中で声が聞こえる。
『”大きな男からクルルを守る”ステータスに自動調整します』
私は光に包まれる。
大きな男はなりふり構わず、クルルを庇う私に剣を振り下ろした。
大きな男の剣は私の顔に剣を振り下ろす。
私は両腕で顔を隠すようにガードする。
剣にビビった私は、目を閉じる。
パキン!
カランカラン!
何かが折れて、地面に落ちた音がした。
私はそっと、顔をあげた。
そこには、驚いて、目を丸くした、大きな男がいた。
大きな男の剣は折れていた。
横には、折れた剣先が落ちていた。
周りの冒険者も何が起こったんだと目を丸くしている。
大きな男は私に言った。
「お、お前、何をしたんだ!」
私も驚いて、大きな男に言う。
「な、なんで、剣が折れているんですか!」
「お、お前が折ったんだろう?」
「そ、そんなわけないじゃないですか!」
「そ、そうだよな」
「は、はい!」
私と大きな男は何が起こったか理解できなかった。
「偶然か......?」
大きな男はそう呟いて、落ち着きを取り戻す。
大きな男はニヤリと笑って、折れた剣で私に振り下ろしてきた。
「ひいい!」
私はまた、ビビって両腕でガードしながら、目を閉じる。
パキン。
カランカラン。
また、剣が折れて、地面に転がる音がした。
私は、また、そーっと、顔を上げて、目を開ける。
そこにはさらに短くなった剣を握る大きな男がいた。
男は驚きすぎて、目がまん丸だ。
「お、お前、何をしたんだ!」
私も驚きすぎて、目をまん丸にする。
「だ、誰が剣を折っているんですか......?」
「お、お前じゃないのか?」
「そ、そんなわけないじゃないですか」
私は、そんなわけないない、と笑顔で手を振って主張する。
すると、剣の破片が、カランカランと下に落ちる。
状況から察するに私の手に破片が残っていたのだろう。
「お前の仕業じゃないかーーー!」
「私の仕業だったーーー!」
ナルは大きな男の剣をポッキポッキ折りました。
すぐ、気づけよって感じです!
気づかないところもナルの良いところ?なのでしょう!
次回はステータスを測定して、冒険者登録を行います!
もちろん、その時のナルのステータスは...?
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