【レストラン タリアーテ】
タリアーテはイタリア風ローストビーフステーキ中間みたいな料理です。 とても美味しいですよー。
「あれ?レストラン タリアーテって…」ヒビキが思わず呟いてしまうと、リリが「あれ?知ってた?」と聞いてくる。
「あ、いや。来たことはないんだけどね。ただ今受けてるジャロイモのクエストの依頼主が【レストラン タリアーテ】だったから。」
「そうなの?ここの料理は本当に美味しいんだよ!」
リリが幸せそうに笑いながら言ってくる。
「へーー。リリがそこまで言うなら楽しみだね。」
「ヒビっくんの料理も美味しくてびっくりしたけど、ここは本当に美味しいよ!期待してて!」
そう言いながらお店に入ると、店内はお客でいっぱいになっており、熱気がムッと押し寄せてくる。
席はぱっと見満席に近く、入り口で少しキョロキョロしていると二人に声がかけられた。
「いらっしゃいませ〜。ようこそ〜。【レストラン タリアーテ】へ〜。」
少し間延びした声の方を向くと、ウサギの耳が視界を遮る。
目線を少し下にすると、トロンとした目が印象的なウサギの獣人の女の子が立っていた。
黒いウサギの耳がピンと立っており、右だけ途中で折れ曲がっている。
だが一番目を引く特徴は眠そうな目とリリより『少し』高いくらいの身長とその体に似合わない、リリとは『まったく違う』体の起伏だろう。
ボンキュッボンという擬音を実際に頭に思い浮かべる日がくるとは思っても見なかったヒビキだったが、本日無事に使用する事となった。
無意識にリリとウサギっ娘をチラッと見比べるヒビキ。
リリはその視線を敏感に感じ取り、ヒビキの脇腹に目も止まらぬ一撃を入れる。
「うぐっ!?!」 いきなり脇腹を抑えうめくヒビキにウサギっ娘は「どうかしましたか〜?」と首を傾げているが、リリは素知らぬ顔で「やあ! コニーちゃん!今日も眠そうだねっ!」と挨拶している。
「リリさん、昨日はうちにお泊まりになられなかったので少し心配しました〜。 お楽しみだったのですか〜?」
さらっとなんか毒舌を吐いてくるウサギっ娘。
「え!?いや!そーじゃないけど!? でも、同棲と言えば同棲?! でもそんな関係ではなぃ… 「夜間の狩りでも」 … エエ、ハイ。」
弄って狙ってきてるのか天然なのか判断が難しいが、ジト目のリリはレアだなぁとヒビキはぼんやり眺めている。
「それで、本日はお食事ですか〜? ちょっと今席が埋まっているので少しだけここでお待ちいただいてもいいですか〜?」
「もちろん!ヒビキ、この子がコニーちゃん。この宿屋の看板娘だよ!」
「はじめまして。よろしく、コニーさん。」
「はじめまして〜。コニーと言います。今後ともご贔屓に〜。」
「ありがとうございます。 多分これからクエストなどでもお世話になるかもしれません。 よろしくお願いします。」
「クエスト…ですか〜?」
「ジャロイモの納品という仕事を受けてまして。」
「あ〜。ファーマーの方なのですね〜。是非よろしくお願いします〜。」
そうやってビジネスマンのように挨拶を交わしていると、から「チーフ!! 仕事してくださぃーーー!!」と食堂の中から声が聞こえてくる。
「お〜。 ごめんなさい〜。 ちょうどあちらの席が空きましたのであちらにどうぞ〜。あとで注文を伺いますね〜。」
隅っこの二人用テーブルがちょうど片付け終わったのを確認して、そちらに行くように言われる。
コニーさんはそのまま厨房に料理を取りに行くようだ。
「ではリリさん、また“あと”で〜。」
手をひらひら振りながら去っていく。
「む、むぅ。 なんか色々弄られそうな予感がっ!!」リリがぶつぶつ言いながらテーブルに向かう。
その後ろを歩きながら、「リリはコニーさんと仲良いんだね?」と聞くと「うん!『ベータ』の時からの付き合いだしね!!」と返ってくる。
「とてもいい子だよー!ちょっとクセが強いんだけど…」
「あはは。タジタジなリリは珍しかったね!」
「むぅー!笑うなーー!」
「イチャついているところ失礼いたします〜。メニューです〜。」
ニュッとテーブルの下からウサギ耳が出てくるとコニーさんがメニューを手渡してくる。
「イチャついてない!!!」
「うわ!びっくりした。気がつかなかったんだけど!?」
とっさにツッコミを二人で入れると、コニーさんは素知らぬ顔で「今日のオススメはフォレストボアの薄切りジンジャーステーキと、ピーロットのスープセットです〜。如何されますか〜。」と聞いてくる。
「んじゃ俺はおすすめで。」
「イチャついてないかr…「リリさんは何にしますか〜?」 ボ、ボクもおすすめで!!」
普段の弄られ具合がとてもよくわかる光景だ。
「ではオススメ二つですね〜。ごゆっくり〜。」
と言いながら厨房に向かうコニーさん。
「くぅ…!」
「本当に仲がいいなあ。」
「初めて会った時から意気投合してねっ! ずっと仲良しなの!」
「そうなんだ。出会いはリリから?」
「うん!なんというかそのー…とても共感がね?!」
「ああー…ちびっこシンパシーk…グフッ!!!」
「ヒビっくん。口は災いの元なんだよ?」
「災いってのはテーブルの下限定なのか…」
「もう一人仲良い子がいて、ベータ中はよく“3人”で遊びに行ってたんだよー!」
「え?3に… 「その仲良しがいる宿を捨てて彼氏と同棲するなんて〜。薄情ですよね〜。」 うえ?!」
「だから彼氏じゃないってば!!!」
「お待たせしました〜。 フォレストボアの薄切りジンジャーステーキと、ピーロットのスープセット 二つです〜。 紅茶はサービスです〜。」
「ボクの話を聞けーーー!」
コニーさんはリリがギャーギャー騒ぐのをさらっとスルーしてテキパキと料理をセットしてくれる。
眠そうな雰囲気だがチーフと呼ばれてるだけあって、仕事はできる人なようだ。
「うわー。とても美味しそう…!」
薄く切り分けられたポークステーキにオレンジ色のソースがかかっている鉄板と鮮やかな青色のスープ、そしてパンがカゴでテーブルに置かれる。
「ではごゆっくりお召し上がりください〜。」
「ありがとうございます。」
「ありがとーっ!いただきます!!」
ジュゥジュゥ音を立てているステーキにフォークを突き刺し、ソースと絡めて一切れ頬張る。
脳天を突き刺すような生姜の香りと肉汁の旨味が押し寄せてきてヒビキは言葉を失う。
(めちゃくちゃ美味い!!!)
そのまま黙って青いスープをひとさじすくって飲むと、こちらは冷やされた冷製スープとなっており、まず少しの苦味で口の中が洗い流され、その後ニンジンの様な甘味がサッと広がっていく。
(めっちゃクチャ美味い。 このセットならご飯何杯でもいける!!)
と思いつつ、ステーキソースをパンにつけて食べるとこれもまた香辛料と肉の旨味がパンの小麦の香りと一緒になってたまらない味になっていた。
「ね?本当に美味しいでしょ!」リリがそう言ってくるのにヒビキは夢中でうなずくことしかできなかった。
夢中で食べていたため、食事の時間はすぐに終わってしまう。
「うん!!! 想像の遥かに上だった。 めっちゃ美味しかった!!」
「でしょー! この味に惚れ込んでコニーちゃんは
ここでずっと働いてるんだよー。」
「え?コニーさんってここの看板娘って言ってなかった?店主の娘とかじゃないの??」
「え?違うよ?? コニーちゃんはプレイヤーだよ?」
衝撃の爆弾発言がリリから放たれる。
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