魔物を買いに!
きっちり25分で用意をして、再度ログインするヒビキ。お昼は某栄養ゼリーにしてしまったのだが、リリは30分で大丈夫なのだろうか。もう少し時間をとるべきだったかなと思いつつ、ダイバーを被りログインする。
ふっと意識が覚めると【グード牧場】のベッドの上だった。
少し早いが朝ご飯の支度でもしておこうかと起きることにする。
キッチンでベーコンエッグとパンを焼いていると階段をトントンと降りてくる音が聞こえてくる。
「ヒビっくん おはよー!」
「リリ、おはよう。 30分で足りた?」
「うん!ボクもゲーマーだからね!栄養ゼリーは常備してあるのさ!でも夜はお姉ちゃんが帰ってきちゃうから、きちんと食べないと怒られるけど。」
「そうだね。夜はきちんと時間とらないとね。」
「そういえばログアウトしてる時の牧場はどうなるの?」
「スキル持ってると維持してくれるんだよ。でも手作業の方がいいものが取れるみたい。」
「そうなんだー!なら今日頑張ってお世話しないとね!」
そう言いながら朝食の支度を二人でして、テーブルにつく。
「うわーおいしそう!いただきます!」
リリが両手を合わせてから食べ始める。
「いただきます。」と少し遅れてヒビキが食べ始めるが、リリがとてもおいしそうに食べてるのをじっとみてしまう。
「ん?どーしたの?」首を傾げて聞いてくるリリに
「いや、おいしそうに食べてもらえてたから嬉しくて。ごめんね。」と言って自分の分を食べ始める。
「もーー、レディの食べてるのをじっとみるのはマナー違反だよー…」と恥ずかしそうに言われて、
「レディーっ…いたっ?!」
ガンっテーブルの下でスネを蹴られてセリフ中断させられる。
「なあに?」
「なんでもありません。レディー。」
クスクス笑いながら朝食を食べ終わるレディーリリ。
片付けをしたら、ジャロイモの手入れをしにいく。
外に出たら太陽がちょうど登り始める頃だった。
二人で水を撒いたり、雑草を取って世話をする。
あと、今日魔物を飼うために鶏小屋の修理だけ終わらせておく。 全てが終わったときには日もすっかり昇りお昼になっていた。
とりあえずお昼を簡単に食べて二人で街に向かうことにする。
鎌と魔物を買いにファーマーギルドへ行かなければいけないが、先に日常消耗品を買いに市場へと向かう。
食糧などまだ自給自足できないので、パンや卵、野菜などを買い込んでおく必要があるからだ。
リリと話して生活費は半額ずつ、宿泊費は取らないという話に決まったのでお互いに半分ずつ出しながら買い物をしていく。
いつか自作できると楽しいねと話しながら、とりあえず卵やベーコン、パンや野菜を買い込み、そのままファーマーギルドに向かう。
ファーマーギルドに入るといつものように受付嬢と麦わら戦士が話していた。
麦わら戦士はヒビキを確認するとニッと笑ってサムズアップしてくる。
こちらも手を振り返しながら、なぜか毎回空いているオーリンさんのカウンターへと進む。
「こんにちは。オーリンさん。」
「いらっしゃい。ヒビキ。調子はどうだい?」
「やっと10になったので魔物を買おうと思って。」
「おお!おめでとう! よく頑張ったねー!!ん?リリちゃんも一緒なのかい?」
「オーリンさん、こんにちは! ヒビっくんと一緒に冒険することにしたの!」
「おーそうかいそうかい。リリちゃん、ヒビキのことよろしくね。危なっかしいから。」
「まっかせて!」
(ボクが頼まれる側なのか…?!)男として少ししょんぼりするヒビキ。
隣にいた麦わら戦士が肩をポンポンと叩いてくれる。
(わかる、その気持ちわかるけど頑張れよ。)と言わんばかりの肩ポンポン。
兄貴と呼びたくなる包容力。
謎の交流が始まりかけたが、オーリンの言葉でハッと我にかえる。
「で、LV10だと最初はコッコしか買えないけど、いいかい?コッコは卵を産んでくれるからおすすめだよ!」
「あ、ええ。 コッコでお願いします。 コッコってピッピと同じ種族ですか?」
「あーピッピはコッコの上位種 コッコドゥから生まれた変異種だよ。 エンキドーって種類だね。 滅多に生まれないけど強くて可愛くて卵もとっても美味しいのさ!」
(ふむ、あの子と同じヒヨコはこないっと。ちょっと安心だな) 心でこっそり呟くヒビキ。
「そっかー。残念だなー。ボクピッピちゃん好きなのにー。」
(え?!)相棒を二度見するヒビキ。
「残念だけどね。でもヒビキの牧場で交配して行けばいつか生まれるかもねえ!」
「うん!頑張ってみる!」
(牧場を目つきの悪いヒヨコが埋めるのか…)牧場主なのに置いてけぼりにされて会話が進んでいく。
その会話に割り込む勇気はヒビキにはなかった。
結局コッコを4匹購入。 餌は牧草地に離していけば地中の虫を食べるらしい。 時々親密度を上げるために自作の農作物を餌にあげるといいとオーリンさんがこそっと教えてくれた。 あとは毎日触れ合うことが大事だそうだ。
コッコは大きな白いヒヨコだった。 目つきは普通に可愛くて、ほっと胸を撫で下ろす。
大きさは大人が一抱えほどでふわふわな毛玉が気持ちいい。
鳴き声がコッコッコッコなとこだけ少し違和感だが、可愛いヒヨコで嬉しくなるヒビキ。 リリも心を奪われているようだ。
コッコの他に、泉を整備するための鎌を購入した。
一番下位の【鉄の鎌】だが、結構なお値段がとられた。
これでヒビキもキャッシュは無くなってしまったため、クエストなどで稼がなければいけない。
クエストはジャロイモがあと数日で収穫できるはずなので、とりあえず一旦追加のクエストは受けないことにする。
(そういえば牧場奥の錬金工房も覗かないとな。結構大きい建物だったから何があるんだろう。 鍛冶場とかも増設できるってカタログにあったけど。)
コッコはファーマーギルドの人が明日の朝届けてくれることになったので、今日こそ夕飯を街で食べて帰ることにする。
リリが昔からよく使うという宿の一階がレストランになっているらしいのでそこで夕食を取ることになった。
「ボクはこの街の食堂渡り歩いたけど、一番美味しいのがあそこのレストランだね!! だから宿も二階にしてたくらい!」とリリが絶賛するレストランをヒビキも気になっていたのですごくワクワクしながらそこのお店に向かう。
リリが「こっちこっち!」と手を引っ張って連れて行かれた先には大きな二階建ての建物があり、看板が二つかかっていた。
一つは【宿屋 トロント】、
もう一つは【レストラン タリアーテ】という看板だった。
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