ファーマーギルド ファーストコンタクト
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昼食には野菜炒めとカルボナーラっぽいパスタを食べた。
食材の色がとてもカラフルで所々寒色系が混じるのが少し気になっているが、味は現実の食材よりも何倍も美味しかった。
昼食を取り終えると、トガリと一緒に【イーワン】へと向かう。 門番の人に挨拶しながら、町の中に入ると来た時に比べ、人通りの量が明らかに増えていた。
また行き交う人も種族がバラバラで、じっと目を凝らすと頭の上に青い色の名前が表示されるため、プレイヤーが増えてきたようだ。
「ほれ、ボケッとしとらんとさっさといくぞ。」
トガリに急かされ、大通りを進んでいく。神殿と門のちょうど中間地点くらいに大きな木の看板を出している建物にたどり着いた。
看板には牛と鍬のマークで出来たエンブレムと大きく文字で【ファーマーギルド 】と書いてある。
ドアはよく西部劇などで見る扉だった。
「ほれ、ここがファーマーギルド じゃ。いくぞ。」
とトガリに背中を押され、中に入る。
ヒビキがキィッという軽い音をたてて扉を押して中に入ると、中のいた人達の視線がヒビキに集中する。
中のイメージはファーマーや農家と野菜といった朴訥な感じではなく、むしろよく漫画などでイメージする冒険者ギルド そのものだった。
左手の壁には依頼の掲示板があり、その前には屈強な身体の戦士が依頼票を眺めている。 その戦士は背中に大きなクワと頭に麦わら帽子をかぶっていた。
右側は酒場になっていて、飲食ができるようになっているようだ。 今はお昼過ぎということもあり、人影はまばらだが、数名もうすでにお酒を飲んでいると思しき姿がちらほら見られる。
正面はカウンターがあり、中には受付嬢が数名と受付おばさんが1人いてこちらを見ている。
一瞬空気に呑まれかけたヒビキだったが、受付おばさんの「トガリ爺さんじゃないか。どうしたんだい。あっちに謝りにいく覚悟はできたのかい!」という言葉にはっと我にかえる。
「うっさい。謝りなどせんわ。ワシは悪くないしな。」と答えながら、トガリがカウンターに向かうのでヒビキもそれについていく。
「あんたが無駄に意地を張ってるから、ドーラさんも堪忍袋の尾を切ったんだろうに。ん?その子は?」
ガハハという副音声が異様に似合いそうな受付おばさんの話を静かに聞いていたが話の矛先がヒビキに向いたため、慌てて「はじめまして! 旅人のヒビキと言います! よろしくお願いします!」とお辞儀する。
「おやあ! 礼儀正しくあんがとね!
アタシはファーマーギルドの【オーリン】ってもんさ。よろしくねぇ!」とご機嫌そうに返してくれる。
続けてヒビキを興味深そうに眺め「あんたも噂の旅人さんなんだね。ファーマーギルド に来た旅人さんはあんたが初めてだよ!今後ともご贔屓にね!」と言ってくれた。
オーリンは話の矛先をトガリに変え、
「で?トガリ爺さんはなぜこの子と一緒に? 道案内でもしてやってたのかい?」
「いや、ワシの牧場を全て此奴に譲ろうと思ってな」とトガリがなんでも無さそうにさらっと返すとビシっとギルド 内の空気が凍る。
依頼板を見ていた麦わら剣士や、受付嬢と談笑していた普通のお兄さんも酒を飲んでいたドワーフっぽい人たちも全員がこっちをみる。
いたたまれない空気にヒビキが身を小さくしていると、オーリンが「あの白狼の森も込みでかい?!ファーマーギルド に売るように言ってたけど後継者がそんな初心者で大丈夫なのかい!?」と叫んでくる。
(白狼の森…? あの森の奥のことかな。)
ヒビキが白い木に気をつけろと言われた森のことかと思いだしていると、トガリはオーリンに
「もう決めたんじゃ。コヤツに譲るとな。まあ二年後にまた様子を見にくるがな。」とゴリ押ししていた。
その様子をみてオーリンは ハアッとため息をつきながら、「もうこの頑固爺さんは一度決めたら人の意見なんざ聞かないしねえ。」と諦め顔をしている。
「で? 必要な道具とかを買いに来たのかい?」
「それもそうだが、今日ギルド の使い方を教えたらワシはウーファイに向かうでな。顔つなぎも込みじゃ。」
「弟子として育てるわけでもなく、白狼の森ごと牧場を丸投げすんのかい…ヒビキちゃんもとんでもないことに巻き込まれたねえ…」と同情の目を向けてくれるオーリン。
ヒビキは「いえ、少し大変そうですが、自分が望んでやることなので!! すごくワクワクしてます!」と
返事をするとオーリンは眩しい物でも見るように、「よし、なら頑張んな! 出来るだけの手助けはしてやるよ!」とにっこり笑ってくれたのだった。
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