転校生、花園真理恵
初めて自分でストーリーを考えて思い切って連載にしてみました。
宜しくお願いします。
真理恵は中学二年生の夏休み前に私のクラスに転校して来た。
「今日から同じ教室で勉強する花園真理恵さんだ。自己紹介をしてもらう」
先生が言った。
「父の仕事の関係で東京から転校して来ました。花園真理恵です。よろしくお願いします」
真理恵は自己紹介をしてお辞儀をすると真っ直ぐ私を見ていた。
そしてクラスの皆んなは「東京」という言葉に興奮したかのようにザワついて
「静かに!仲良くしてやってくれ」
先生が出席簿の角で机を叩き静かになった。
その間、真理恵は私の目を少し微笑みなが見つめ続けていて私は気恥ずかしくなり目を左下に逸らしてまた真理恵を見た。
ずっと私を見つめていた。
ーなんで私を見ているのかな
ー私、変かな?
でも怖い、とか気持ち悪いという気持ちはせずに長い髪の毛を三つ編みで二つに束ねて、遠くからでも睫毛が長いのが分かるほど瞳が輝いていて、すらっと伸びた手足と東京から来ただけあり垢抜けていた。
その日の帰り道、私はお父さんのことを考えていた。
私のお父さんは私が小学六年生の秋に仕事先で心肺停止になり倒れて死んでしまっていたのだ。
まだ二年も経っていない。
私は下を向いて歩いていた。
「莉乃さん!
またお会い出来ましたね!」
花園真理恵さんが声をかけてきた。
「今日、転校して来た花園真理恵さんですよね?元気な人なんですね。
また?何処かで会ったことありますか?」
「ええ、莉乃さんは宮崎県の鵜戸神宮へ行ったことがあるでしょう?
ほら!莉乃さん、運玉を右手で五個も全部投げ入れて周りにいた人達が拍手していたじゃない!
あの中で私はお父様と一緒に見ていたの。
莉乃さんのお父様とお母様が莉乃!すご〜い!やったな!って言っているのを微笑ましく拝見させてもらいました」
「よく覚えていますねー。小学六年生の夏休みに今は亡き父と母とで宮崎県や熊本や別府に旅行に行った時ですね!
真理恵さんも運玉投げたんですか?」
「ええ、でも二個しか入りませんでした。莉乃さんの髪型もあの時のままボブですね。
お友達になって下さい!私は真理恵って呼んで下さって結構です。私も莉乃さんのことを莉乃って呼び捨てにして構いませんか?」
「うん!莉乃って呼んで下さい」
それが真理恵との初めての会話だった。
私のお父さんが突然死をしてから母はパートでは私を育てられないので保険の仕事を始めてくれていて母子家庭で家計を支えてくれていることなどを話した。
真理恵のお母様は小学一年生の時に病気で亡くなったらしく、お父様は海外でも仕事をしたり国内も転勤をしていて転校は四回目だったらしい。真理恵の家にお手伝いさんが居て、お嬢様育ちが滲んでいる顔立ちや仕草で私も見習わないとな、といつしか思うようになっていった。
夏休みに入り真理恵の家に行った時
「今から言うことは本当に絶対に誰にも言わないで下さる?」
私は何だろう?と思ったけれど内心ワクワクしていた。
「絶対に言わない!」
私は神妙な顔つきで言った。
「私、死んでしまったお母様とたまに会ってるの。
莉乃にも莉乃のお父様に会わせてあげたくて…」
「え!?私、お父さんにまた会えるの!?」
まさかーと私は思った。でも私はともかく真理恵は嘘をつくような人ではないと思い
「どうやったら、お父さんに会えるの?」
真剣な顔で私は聞いた。
「もうすぐ17時になるから学校の裏山に夫婦岩があるでしょ?そこで霊界の門を開けるお呪いをすると天上界へ行けるわ。
その事を私の父に教えてもらって一緒に行ってお母様と話をして帰っているの。
天上界の一時間は地上界の五時間だから急がないといけないけれど。
行ってみる?」
「行く!お父さんに会いたい。
言いたいこと沢山あるし聞きたいことも沢山ある」
私と真理恵は中学生の裏山に小走りで行き、あまり人に知られずに行った方が良いと言うのでヒヤヒヤしながら真理恵の後ろを付いて行った。
夫婦岩の周りに頭の石が崩れているお地蔵様が二体置かれていて、夫婦岩は綱で繋がれていた。
「じゃあ、持って来たこの数珠を左手首に付けてね」
真理恵は密かに私に言って宝石のような煌めく石で出来た数珠を渡してくれたので左手首に付けた。そして真理恵は私の両目に手で水を付けて何やらお呪いをしていた。二人は手を繋いでいた。
「麗しき夫婦岩の神様、私達を祝福して下さい。
霊界の門を開けて下さい。
ソラノイロ………」
真理恵は目を閉じて夫婦岩の向かって左の大きな方の岩に右手を当ててお呪いらしき言葉を使っていた。
「開きますよ」
真理恵が言って目を開けると夫婦岩の間に細く光って白い道が現れて二人で走って中に入って行った。
「もういいですよ」
真理恵が言ったので目を開けるとそこはパステルカラーの雲がずっと遠くまで続いていて地上界の太陽と同じような光があった。
思っていたよりも都会の建物みたいな芸術性の高い建築物の下で人間や犬や猫がいるのが見えた。車は無かった。
皆んな足があった。
「さあ、行きましょう。
先ずは私のお母様に紹介したいわ!」
いつもの真理恵らしからずはしゃいでいた。
「えっとー、この角を曲がって、ここの角も曲がって……あ!その緑の屋根のお店を曲がったらすぐお母様に会えるわ!」
真理恵はお父様の机の引き出しから盗んで来たお母様の天上界で住んでいる住所を見ながら足早に進んで行った。
私は追い付くのに必死だった。
「お母様!!」
真理恵はお母様を見つけて言った。
「真理恵、どうしたの。
お父様は一緒に来ていないの?」
「実はお父様には内緒で来ました。
お母様に紹介したいお友達と一緒に来たので紹介します。こちらが今の転校先で仲良くしてもらっている山田莉乃さんです」
優しい目で真理恵の姿を見つめている真理恵のお母様に私を紹介した。
「初めまして。山田莉乃です。真理恵さんと仲良くさせて頂いています」
私はお辞儀をして真理恵のお母様を見た。
「まあ、この子にお友達が出来ていたのね。今までお友達が出来たことがなくて心配していたの。
莉乃さん、真理恵のことよろしくお願いしますね」
私にも優しい眼差しを向けて真理恵のお母様は挨拶をして下さった。
私は真理恵にお友達が今まで出来たことがない、と言ったお母様の言葉を頭の中で巡らしながら
ー本当かな?
ー真理恵から初めての会話を話しかけてきたのに
そう思いながら腕時計に目をやると20時が回っていた。
「真理恵、もう20時だよ。
お父さんに会いたいけど
私のお母さんが家で待ってるよ」
「分かりました。
莉乃のお父様てはまた今度会えるといいけど。
天上界の時間は進むの早すぎるわ。
お父様に内緒で来たから私も早く帰らなくちゃ」
真理恵はお母様との別れを名残りおしそうにお母様の腕に抱きついていた。
「お母様、今度はお父様とも来るわ」
真理恵はお母様に向かって寂しそうに言うと私の右手を取って着いた場所まで戻り
「莉乃、目を閉じて」
私は目を閉じると真理恵の右手で瞼を触られて
「……ソラノイロ
霊界の門を開けて下さい。
私達を祝福して下さい。
麗しき夫婦岩の神様……」
耳がツーンとして明るかった瞼越しの光が暗くなり
「もう目を開けていいよ!」
真理恵が言ったので私は目を開けた。
そこは真っ暗な夫婦岩の前に立っていた。
「莉乃はお母様が待っているし、私はお父様に叱られるかもしれないけれど早く帰りましょう。
今日のことは誰にも、絶対秘密でね!
莉乃のお母様にも絶対に秘密よ」
「うん!分かってるよ」
私は目に違和感を感じながら頷き、今度はお父さんに会いたい!と思っていた。
「ただいまー」
「お帰りなさい、莉乃。
何処行ってたの。
ご飯冷めてるからチンして食べなさい。
お母さん、疲れてるから少し横になってるね」
「お母さん、ありがとう。
真理恵の家に行ってた。
仕事お疲れ様」
ー私はお父さんに今日は時間がないから会えないと思っていたけれど遅く帰って来てもお母さんあんまり怒らないんだな
ー次は真理恵に私のお父さんに会わせてもらおうっと
私はお父さんが死んでからお母さんにお父さんの話をしなくなっていた。
お父さんのお葬式でのお母さんの取り乱し方は異常な様だったからだ。
ーお父さんのことお母さんは
本当に愛していたんだな
ーお父さんにまた会えたらお母さんのこと見守っているのか聞きたい
ー私達二人のその後を知っているのかも
読んで下さりありがとうございます。
次から莉乃と海斗の出会いが始まります。
また宜しくお願いします。




