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死んだロックスミス

「塔矢、知ってるかい?」

「何が? 父さん……」

「お前が持つその鍵は、異世界への扉を開く特別な鍵なんだ」

「うん……」

「多くの者達がその扉をくぐっていった」

「うん……」

「これが父さんからの最後のお願いだ塔矢……」

「うん」

「その鍵を作れるようになれ…… そしてお前が導いてやるんだ」

「わかった。俺、一流のロックスミスになる」

「ありがとうな…… 塔矢」

 父親は少年頭を撫でた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『内村鍵店』今日もこの鍵屋は営業している。

 商店街の裏通りにひっそりとある鍵屋は周りからはよく愛称で呼ばれる。

 その名は『異世界鍵屋』

 この世界と、もう一つの世界を結ぶ鍵を作る店。

 それがこの店の『噂』であり『真実』だ。

『カラン』

「す……すみません」

 一人の若い女性が店の中に入ってきた。大学生くらいだろうか。髪は後ろに束ね服はスーツを着ている。

「あの~」

 女性はもう一度声をかけ店の中をみてまわる。中はまるで鍵の博物館だ。

 アンティークな内装はとても魅力的である。そして並ぶ鍵と錠前の数。

 大きな鍵から小さな錠前まで様々だ。

「あっ……」

 不思議なその空間に女性はすこし酔ってしまった。

 とんとん。

「ひゃっ!」

 女性は後ろから肩を叩かれた。驚いて振り向く。

 するとそこにはメイド服を着た同い年くらいの銀髪の女性がいた。

「すぐに主人を呼んできますのでそこの椅子にかけてお待ちください」

 そういうとメイド服の女性は店の奥へと向かう・

「は、はい!」

 5分後。

「こんにちは里緒奈さん」

 店の奥から一人の男性が現れた。この人が店の主人だろうか。

「こんにちは! 赤井里緒奈です」

 里緒奈はすぐに椅子の横に立ちあいさつをする。

「今日は面接できたんだよね?」

「はい! よろしくお願いします」

 男性は近くの椅子に座り、彼女の履歴書を見てこういった。

「内村塔矢です。よろしくね」

「はい!」

「それじゃあ、まずは自己紹介。大丈夫かな?」

「はい! え~と赤井里緒奈です。歳は二四歳。小城大学出身。卒業後は広告代理店沢村企画で2年ほど働いておりました!」

 その後も面接は続いていく。志望動機、自分の長所、短所、退職理由どれもあたりまえの質問ばかりであった。

「わかりました。それでは最後何か聞きたいことはありますか?」

 彼女は一瞬止まってしまう。

「あの……」

「ん?」

「なんで異世界鍵屋と呼ばれているんですか?」

 塔矢は目を大きく開くと、

「ははは、そうだね~ 周りからそう呼ばれるね……」

 と笑った。そのことについて里緒奈は一つの答えを出す。

「もしかして『なろう』ですか?」

「はい、そうです。僕はそこで小説を書いているんだ」

「ああ、なるほど……」

 『作家になろう』日本最大のネット小説投稿サイト。通称『なろう』。若い世代の誰もが一度は聞いたことがある有名サイトである。そこでは小説やビジネス書まで様々な書籍を書いたり、読んだりすることが出来る。

 そしてそこではある小説ジャンルが流行っていた。それは『異世界ファンタジー』。

 主人公が現代の世界から『異世界』へとトリップしてしまうという内容のものである。実は里緒奈もその手の小説を読んでいた。

「それじゃあ。後日連絡するのでそれまでお待ち下さい」

「はい」

 こうして面接は終わった。

 一ヶ月後。

「いらっしゃいませ!」

 『異世界鍵屋』には気持ちのいい挨拶をする女性店員がいた。

「鍵の修理ですね! 少々お待ち下さい!」

 里緒奈はこの鍵屋の店員である。

「店長! 修理依頼です!」

「わかりました。今行きますね」

 店長の塔矢は中世ヨーロッパ時代くらいの鍵をルーペで見ていた。

「店長? その鍵……」

「ああ、本物だ」

「売るんですか?」

「そうだね。その時が来たら……だね」

 この鍵屋には秘密がある。

 表向きには古鍵の販売と修理。

 そして裏では……

「こんにちは」

「あ、いらっしゃませ!」

「この鍵を修理できる鍵師がいるときてやってきた」

(あれ? この人)

 里緒奈はその人ことを見る。

「どうした?」

「あ…… はい! 少々お待ち下さい!」

(やばいやばい)

 里緒奈はすぐに塔矢の元に駆けていった。

「店長。お客様がお待ちです!」

「はいはーい」

「あの……」

「ん?」

「多分あのお客様この世界の人じゃないです」

「わかりました」

 塔矢は受付へと向かった。

「修理できない!」

 鍵を持ってきた女性は大きく叫ぶ。

「そうですね。さすがにこの鍵を修理するのは……」

「はあ…… なんとかならないか」

 女性は頭を抱える。

「そうですね。その鍵を新しく作り直すことならできるかもしれません」

「な! そんなことが可能なのか?」

 塔矢の胸ぐらを掴む。

「ただ……」

「どうした?」

「同じ場所には行き着かない可能性があります。それと少しお値段が……」

「作ってくれ! 頼む!」

 彼女は頭を下げる。

「はあ……わかりました。それでは出来上がりましたらお電話いたします」

「よろしく頼む」

 そう言うと彼女は紙に必要事項を書き、店を出て行った。

「どうするつもりですか?」

 彼女はコーヒーカップを片づける。

「まずは金属をとりにいかなくちゃならないね。ニーアから連絡は?」

「まだきていません」

「そうですか……」

 塔矢はしばし腕を組んで考え込む。

「しかたない……な。よし!」

「?」

「里緒奈さん。フェレスタに向かいましょうか」

 彼女の手からカップがすべり落ちる。そのカップは奇麗に二つに割れた

「え! 私がですか?」

「これも勉強です」

「は……はい!」

「それじゃあ行く日は来週ということで」

「わかりました!」

 彼女は驚きと共に喜んでいた。それもそのはず、里緒奈はその為に鍵屋の店員になったのだから……

 それから4日が経った。二人は店の奥にある扉の前に立っていた。しかし目の前の扉は普段は開かないようになっている。

 開くのは一ヶ月に数回のみ、それも特別な条件がなければ開かない。

「いくよ。里緒奈さん」

「はい!」

 里緒奈の胸はどんどん高鳴っていく。

 塔矢は一つの鍵を取り出した。金色の鍵、これが目の前にある扉の鍵である。 

 それを扉の鍵穴に差し込んだ。

 ゆっくりと扉を開いていく。そして、二人は扉の中に入って行った。

「いらっしゃい」

 中に入ると老人が待っていた。

「こんにちはベイスさん」

 里緒奈は軽く会釈をする。

「久しぶりだね里緒奈ちゃん」

 ベイスは里緒奈の手を触ろうとする。

「はいはい、挨拶はその程度だよ。ベイス」

「つまらんの~」

 ベイスはロングチェアに腰掛けた。

「それじゃあ。オリハルコンを探しに行こう」

「あっはい!」

 二人は老人のこじんまりとした部屋から出て行った。

 里緒奈はまだここに来るのは2回目である。

 一回目は好奇心からここを訪れてしまい、後に大変なことになってしまった。

 今では反省している。

 ベイスの家から出ると。ヨーロッパにあるような建築物が建ち並んでいた。

 そう、ここが『フェリスタ』異世界にある街である。

 フェリスタは水の都。水を資源とし、ガラス工芸や観光が主な産業だ。

「とりあえず、お昼を食べてから探しにしようか」

「はい!」

 大きく返事をした。

 それから二人は街を歩き始めた。周りを見ると川が流れており、水は透明でまるでビー玉のように奇麗だった。

「今日はここにしよう」

「ここは?」

「パスタのお店だよ」

 中に入るとウェイトレスがまっていた。

(エルフだ……)

「里緒奈さん?」

「あ、はい!」

「大丈夫?」

「はい!」

 早速二人は街風景が見える場所に案内された。

 席に着くとウェイトレスがメニューを持ってくる。

「なんか接客は日本とそんなに変わりませんね」

「まあそうだね。こちらの世界も僕達の世界から学んでることは多いから」

 するとふわっとした。いい香りがしてきた。

「シーフードにしようか?」

「はい!」

「すみません! シーフードパスタ2つ」

「かしこまりました」

 二人は無言になる。それは心地の良い無言であった。

「今の時期はちょうど夏にあたってね。日差しも強いんだ」

「そうなんですね」

(最高です)

 里緒奈はそう思った。

 食事が終わるとさっそく情報屋に向かうことにする。

 途中歩いていると子供達が浅い川で泳いだりしていた。

 確かに気温は高いなと里緒奈も思っていたが、水の都だけあって涼しいとも感じた。

「里緒奈さんこっちこっち」

 前を歩いていた塔矢が止まって呼んでいる。

「はい!」

 彼女は走り出した。

「ここだよ」

 塔矢は階段を指さした。建物の二階、現実世界で言ったら雑居ビルだろうか。

 しかしそんな雰囲気は微塵もなく青い光がぽーと美しく輝いていた。

 二人は扉を開けて中に入っていく。

 中は薄暗く塔矢が「こんにちは」というと青や赤。黄色に緑のランプが点いた。

「やあデメテル久しぶり」

「と……とうや?」

「そうだよ。塔矢だよ」

「とうやー」

小さい体が塔矢に抱きついた。

(わあ~ 猫族だ)

塔矢に抱きついてきたのは猫耳がついた人間だった。

耳はしっかりと動いている。

「落ち着こうね。デメテル」

「うん」

二人は椅子に座った。

どうやらデメテルという子も落ち着いたらしい。聞くと何かあったようだ。

「竜の角が二本奪われた?」

「うん」

「なるほどな。うーん」

 塔矢は顎に手を置き考え始める。そして……

「ねえ、里緒」

「嫌です」

 里緒奈は無表情で答える。

「え~ まだ何も言ってないよ」

 塔矢はへらへらと笑う。

「わかりますから! どうせ竜を退治しに行こう! 盗んだやつを探しに行こうとかいうんですよね!」

「やっぱりわかっちゃう?」

「はい」

「うーんじゃあ買いに行こうか?」

 この日のうちに二人は現実世界に戻れなかった。

 宿を取りそこで一晩を過ごす。

 2日目。

 朝から馬車を借りた。向かう先は王都『リーンベル』。

 ここから馬車で3時間ほどの所にあるこの国の首都だ。

 その道中。里緒奈は塔矢に質問する。

「どうしてあの子なんですか? 他にも情報屋はいるのに」

「んっ? そりゃあ命が係ってるからね」

「というと?」

「情報屋の情報は全てが本当というわけではない。中にはガセネタを掴まされることだってある。もしそこに野盗や危険なモンスターがいたら?」

 それを聞いて里緒奈はあのときのことを思い出す。

『殺してやる』

 はじめてこの世界に足を踏み込んだときのこと。

 里緒奈は自分の過ちから異世界の扉を開いてしまう。行き着いたその先は盗賊のアジトだった。

 里緒奈は頭をふるった。

「わかりました」

「ごめんね。遠回りで」

「いいえ! 私が悪かったです」

 馬車は走る。

 そこから1時間ほど揺られた。

 何故だろう。里緒奈は不安に駆られていた。

 と、突然馬車が止まる。

「どうしました?」

 塔矢が運転手に聞く。

「降りろ」

 二人は静かに馬車を降りる。するとそこには野盗が集まっていた。

「金目の物とその女を置いていけ。そしたら助けてやる」

「はあ……」

 塔矢は息を吐く。

「あっ?」

「そっくりそのまま返したいんですが」

 それを聞いて野盗の集団は大声で笑う。

「おいおいあんた頭おかしくねえか?」

 次の瞬間。手に持っていた酒瓶を塔矢の頭にぶつけた。瓶の割れる音と共に頭から血が流れる。

「ははは! いけねえいけねえついやっちまった」

 野盗は大声で笑う。

「里緒奈さん後ろに下がってて下さい」

「はい」

 里緒奈は走って後ろの木の陰に隠れた。

「おい逃がすなよ」

 何人かが里緒奈に向かって走り出す。その時塔矢は手を広げた。

「あの人は僕の大切な従業員なんだ」

「ああ? なんかいったか!」

 野盗は持っていたナイフを右手に持ち替え、塔矢に斬りかかった。

 瞬間。

「う……うわあああ!」

 斬りかかってきた野盗の右腕が間接から落ちた。地面には血だまりが出来る。

「てめええ! 何をした!」

 10人ほどが一気に塔矢を囲む。

「ぶっ殺せええ」

 塔矢はは青い鍵を後ろから取り出し鍵を開けるジェスチャーをした。

『ガチャ』 空間が開く。そこから青い剣が塔矢の前に現れた。

「なっ…… 青い剣だと!」

「青い剣といえば……ヴォーパルソード!」

「確か常備されているのは、女王直属の親衛隊じゃねえか……」

「なっ!」

 敵はひるんだ。

「お前ら! ひるんでるんじゃあねええええ!」

 リーダー格の男が叫び上げる。

「まずは一人」

 塔矢は剣をその場で振った。

 最初に逃げ出していた男が倒れた。

「な……何が起きた」

 男は自分の足を見る。

「う、うわあああああ!」

 男の足はなかった。

「に……逃げろ……逃げろ!」

「ふざけんじゃあねえ! まだ俺は死にたくねえ!」

 別な男は泣き叫ぶ。 

 全員が戦闘を放棄した。

「くそ! 簡単な仕事じゃなかったのかよ!」

 リーダー格の男が尻餅をつく。

 その間に塔矢は剣を振るう。

 一瞬で相手に近付き片足と右腕だけを確実に切り落としていく。

 その青い剣は血しぶきをもらっても一切赤く汚れなかった。

「おまえは……」

 それが男の最後の言葉だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「大丈夫ですか?」

「さすがに肝が据わってるね」

「あのときのこともありますし。それにこういうアニメとか映画とかいっぱい見てきましたから」

「そうですか……」

「ではいきますか?」

「そうだね早く行こう」

 二人は歩いて王都まで向かうことにした。その場からいなくなる。

「いてええ」

「いたいよ」

 野盗はリーダー格の男以外全員が生きていた。

「命だけはたす……え?」

 巨大な大鷲が空からやってくる。

「うわあああああ!」

「うぎゃああ」

「やめて……くれ」

 その後全員が大鷲の餌食となった。

 4時間後。

 塔矢達は王都に到着した。

「ここが、王都リーンベル」 

 城下町に入る前に衛兵に通行証見せて中へ入る。

「すごいでしょ? 里緒奈さん」

「はい! まさに異世界ファンタジーです!」

 中世ヨーロッパの城下町を意識しているような街並みに里緒奈は目を光らせる。

「さて」

 塔矢は背伸びをした。

「竜の角ですよね」

 里緒奈は目的の品を言葉に出す。

「うんそうだね」

「どこに売ってるんでしょうか?」

 と聞くと……

「はいそこ」

「えっ」

「あそこだよ」

 指さしたところは小さな露天であった。

「えええ! こんな近くに!」

「僕も最初は驚いたさ。灯台もと暗しとはまさにこのことをいうね」

 彼は笑いながら露天へと向かう。それに里緒奈もついていく。

 露天を見ると様々な材料や工芸品が売っていた。

「ここは荷物が一番早く卸される場所なんだ」

「それでここに店を開いてるんですね」

「そういうこと」

 露天で竜の角二つ買うと二人はあるところに歩いていく。

「駅もあるんだ」

 里緒奈は呟く。そこには列車が止まっていた。

「今回はこれで帰ろう」

「えっでもお金は?」

「お金よりも命の方が大事さ」

 塔矢は受付で切符を買いに行く。

「ねえお姉ちゃん?」

 里緒奈は下を見ると男の子がいた」。

「どうしたのかな?」

 すかさず里緒奈はしゃがみ込み話しかける。

「えい!」

「なっ!」

 一瞬で胸元にあったネックレスを奪われた。

「よっしゃあ!」

 男の子は走り去る。

「えっ! ちょっ、こら!」

 里緒奈も走り出す。男の子は路地に入っていくのがみえた。

「あそこか!」

 人だかりをかき分け彼女は走る。

(右? それとも左?)

「ああ! もう! 右!」

 彼女は先へ進む。するとどんどん人通りが少なくなっていく。

 自分がどこの場所走っているのかわからない。

(どこだあ あの子は!)

「はあ、はあ」

 里緒奈は途中で息を切らす。

 そして……

「迷った!」

 彼女は大声で叫んだ。

 その頃駅では。

「あれ? 里緒奈さん?」

 塔矢が一人彼女の行方を捜していた。

 2番街表通り。

「はあ、よかった」

 普通の異世界ファンタジーなら、怪しい人間に襲われているところである。

 しかし、さすが城下町だけあっては裏通りにも兵士が歩いており治安がよかった。その後、道を聞いて表通りまで戻って来た。

 「あ、お城だ」

 あのあと兵士に今回のことを話すと城門前に詰め所があるのでそこに届け出て欲しいとのことだった。

 とりあえず里緒奈はそこを目指すことに決めた。

(あれは大事なものなんだ)

 そう心に言い聞かせながら……





「どこに行ったんでしょ」

 塔矢は城に向かう大通りを歩いていた。

「こまりましたね」

 立ち止まる。

「号外号外! 竜族が南門から攻めてくるぞ」

 チラシが宙を舞う。

 塔矢は足下に落ちた紙を拾い上げる。

「なっ! マスタードラゴン! まいりましたね」

 塔矢は広場へと走り出した。





「あそこが城だよね」

 里緒奈は城に向かって歩いていた。

「ねえ……聞いた?」

「ああ、竜族らしいな」

(竜族?)

 耳を近づける。

「今、兵を徴集しているらしい」

「大丈夫かしら?」

「王都だから大丈夫でしょ」

 彼らは笑っていた。

「竜族が襲ってくる? 早く店長に会わなくちゃ」

 里緒奈は今来た道を逆走し始めた。その時だった……

「えっなに?」

 耳に何かが破裂した音が響いた。

「あ……竜」

 巨大な竜が城壁の飛んで越えて城下町に入ったきた。

「きゃああ」

「早すぎないか!」

「何故竜が!」

「兵は何をしてるんだ!」

 周りの市民は取り乱し逃げ始めた。

 それを見て竜は赤い息を吐く。

 一瞬で街は燃え上がる。

「店長! どこですか!」

 里緒奈は大通りを人の流れとは逆に竜に向かって走る。




 マドリー広場。

 竜はある人間と対峙していた。

「まいったな20メートルくらいはあるな」

「ニンゲン、コロす」

 竜族には知恵があり人間の言葉も理解する。

 周りには兵士の死骸が山のようにあった。

「せっかく城に向かうところだったのにな」

(里緒奈さんがこの場にいないことが幸いか……)

「ころす!」

 竜は火炎を吐いた。

「ちっ!」

塔矢はがれきの影に身を潜める。

 そして、右手で鍵を後ろから取り出した。

(頼むぞヴォーパルソード)

 ドアなどない空間に鍵をさし開ける。

 すると刀身が青い剣が現れた。それを持つと走り出す。

「ソコか」

 竜は火球を吐きだした。

「はあ!」

 その火球をヴォーパルソードで両断する。

「ナニ?」

 塔矢は竜が飛ぼうとする前に剣を皮膚に突き刺した。

「グルウアアア」

 血が噴出した。塔矢を連れたまま空へと舞い上がる。

「ははは、待ってたよ」

「グラアア」

 塔矢は今度は真っ黒な鍵を取り出した。

「この鍵はちょっと特別でね」

「ガッ!」

「ブラックホールにつながっているんだ」

「グルアアア」

 竜は塔矢を引き離そうとする。しかしもう遅い。

 瞬間、空中で竜は消滅した。そして、塔矢は落下した。






『塔矢、頼むぞ』

 父の声がこだまする。

「ここは……どこだ?」

 塔矢は目を開く。そこは内村鍵店だった。

「ツッ」

 起き上がろうとするが体痛くて起き上がれない。部屋のドアが開く。

「店長! 大丈夫ですか?」

 理緒奈が入ってくる。

「理緒奈さん? 大丈夫ですか?」

「えっ? なにがですか」

 理緒奈はきょとんと表情を変える。

「あっそうか……」



 俺は……『死んだんだ』




「でも驚きましたよ!! 部屋で倒れていたんですから」

「理緒奈さん? 異世界には?」

「行ってませんよ? ニーアさんから延期になったって聞かされて」

「そ……そうですか」

「ゆっくり休んでくださいね。それでは」

 そのまま理緒奈は部屋を後にした。

 塔矢は机の上を見る。そこには『竜の角』が2本あった。





 3日後。

「デメテル~いるかい」

 デメテルの店を二人は訪れる。

「とうや~」

 中からデメテルが現れた。

「はい! 竜の角だよ」

「えっ!  いいの? ちょうど盗まれたところだったんだ!」

「そこでなんだけど。オリハルコンが欲しいんだ」

「わかった!」

 デメテルは紙とペンを持ち塔矢に説明する。

 その間、里緒奈は魚が泳ぐ水槽を見ていた。

(デメテルさんたべるのかな)

「おーい、里緒奈さん」

「あっ、はい!」

 すぐに二人の元へと歩いていく。

「リーネに向かうよ」

 鍵を直す旅はまだまだ続く。


 

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