村人A
有り得ない。
それが、神と魔王の率直な感想だった。
人間風情が自らの本気の一撃を完封するなど、あってはならない事だと考えながら、ひたすら逃げる神と魔王。
その間も村人達は、満面の笑みで神と魔王を見つめ続ける。
中には、手を振っている者すら居る。
側から見れば、凄まじくシュールな光景だろう。
突然、鐘の様な音が鳴る。
すると村人達は、いつも通りの日常に戻っていく。
この村には昔、Aという男が居た。
彼には生まれつき、特異な力があったのだ。
それは森羅万象を破壊できるというチート能力だ。
村長がそれに気付き、その噂が村中に広まるには、それほど時間がかからなかった。
村人達はAを恐れ、敬った。
Aは自らの類い稀なる能力を人々の為に使った。
後にAは守護人と呼ばれ、村の守り神の様な存在になっていった。
現在、彼が居たとしたら悠久の戦争は数秒足らずで終わっていただろう。
ところで、何故この村が一切の被害を被っていないどころか、神と魔王の本気の一撃を完封できたのか、お分りいただけただろうか?
以前、Aは村人を含め、村の『時の流れ』を破壊してしまったのだ。
そして、村は昔と変わらない光景になった。
だが時の流れを破壊した際、『世界』はそれを許さなかった。
『世界』に生じた『時の流れの破壊』という『異常』を修復しようとした所、思わぬ事態になったのだ。
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