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逃走
それは突然起こった。
天使軍と魔界軍、双方の動きが止まったのだ。この戦争において、初の出来事である。
皆一様に空を見上げ、呆然としていた。
中には、涙を流す者さえ居た。
何が起きたのか?
神と魔王が突如、上空に現れたのだ。
双方、全長が数百kmはあり、不敵な笑みを浮かべていた。
両手に何やら禍々しい球体の様な物を出現させると、誰かが呟いた。
「嘘、だろ...」
刹那、神と魔王の最大級の一撃が村に向かって放たれたのだ。
天変地異と言っても過言ではないほどの衝撃により、何が起きたか理解する前に、周辺の天使や悪魔達は紙屑の様に吹き飛んでいく。
辺りに立ち込めた煙から出てきたのは、何も変わらない、笑顔が絶えぬ美しい村。
流石の神や魔王も、これには冷や汗を流した。
顔が引きつり、後退りした瞬間、村人達が一斉にこちらを向いた。
皆、笑顔だった。
神と魔王は逃げた。逃げるしかなかった。
初めて抱いた「恐怖」という感情。
彼らにとってプライドを捨て、みっともなく背を向け逃げる理由として十分過ぎた。
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