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1:駆出−1

 目覚ましも何も無しに朝目覚めると、当初の予定よりは三十分程度の遅れを伴った起床だった。とはいえ、別に遅刻の心配があるわけでもないので、俺はゆっくりとベッドから這い出た。枕元に置いてあるCATを念のため左手で掴み取って、部屋から出る。薄着で眠っていた身体が少しだけ寒い。……ちょっと冷房効き過ぎてる感が否めないな、と一人ぼやいた。

 リビングへと入る。とりあえず壁に備えられた端末を操作して家全体の設定温度を変える。変えた後は適当に朝食の準備を行う。正直、朝はそんなに食欲旺盛でもないのでトースト一枚で済ませるのが俺の日課でもあった。

 牛乳とトーストをテーブルへと置いて、壁に掛けられたモニタの電源をリモコンで入れる。薄暗いリビングにモニタの妖しげで目に痛い灯りだけが映えた。

 早くも無いがそこまで遅いとも言い難い、そんな時間帯。番組はニュースを特集している。小型のリモコンを手中で弄びながら、俺は自動読み上げの指示を出す。有名なニュースキャスターがニュースを読み上げ、同時に映像が流れ出した。

 マジで!? 俺が寝てるうちにそんな派手派手なニュースがあったのかよ!? ……という程に鮮烈で新鮮なニュースは無かった。そこで少し物足りなく思う俺は人としてちょっとばかりダメなのかもしれない、とか思ったが反省はしない。

 月面人口五百万人突破、RACの世界大会、CATの新機種発表、など、など。全くの無関心ではないけれど、新鮮味があるわけでもなく。

 一通りニュースを聴いて、俺はモニタの電源を落とした。部屋は薄暗い部屋に逆戻り。牛乳を冷蔵庫に戻して、パン屑が少し零れたテーブルを拭く。

 現在時刻は午前九時前。約束は十時だった気がするので余裕はある。とりあえず顔でも洗おう。人気の無い家の廊下を歩いて、洗面所へと俺は向かった。




 顔を洗ったり、まあ色々と身だしなみを整えてから改めてCATで確認してみたところ、約束は九時だった。

 うわあ、何これ何の罠? 誰だよ十時だと勘違いした奴。

 そのままCATで時間を確認すると九時を十五分程度回っていた。わあい、遅刻だね!

 やれやれ、と肩を竦めてから俺は自室へと急ぎ足で戻った。クローゼットから適当な服を引っ張り出して急いで着る。着替えが終わって、俺はまたしても急ぎ足で階段を降りる。もはやこれは駆け足だ。先ほど調整した空調の電源を落とし、戸締りをして、家から飛び出す。

 むわぁっ、と言う暑さが俺を出迎えてくれた。うちの地区は気候管理管轄外なのが悔やまれる……。今日もまた、朝から走る羽目になるのかよ。

 一人文句を言ったところでそれはどこの誰がどう贔屓目に見たところで自業自得でしかありえない。CATのミュージックを起動して耳のピアスに触れる。俺の好きな音楽が耳から流れ込む。

 行くか。

 しばらく行ってしまえば新地区の影へと這入ることができるので、日差しからは逃れることができる。もう少し行って新地区へと入ってしまえば気候管理の管轄内なので、溶けるような暑さからはおさらばできる。

 意を決して俺は炎天下へと駆け出した。先ほどの寒さを覚える空調が一瞬で恋しくなった。



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