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第十三話 「熊さんと遊ぼう(中編)」

「でっかい熊さん♪ でっかい熊さん♪」


 カミラは、小躍りをしている。 


 白カブトの情報がよほどカミラの琴線に響いたのだろう。


「カミラ、落ち着け」

「わくわく♪ わくわく♪」 


 聞いちゃいねぇ。 


 これほどのテンション、始めて殺しの禁断症状を我慢した日以来かも。 


 まずいぞ。 


 俺が口を酸っぱくして言い続けた事が、カミラの頭からすっぽり抜けている。 


 これは封鎖を突破して、独りで白カブトを捜しにいきかねんぞ。役人がカミラを止めようものなら、即座に殺すだろう。


「緊急事態だ!」 


 思わず叫ぶ。


「だからそういってんだろうが!」 


 おっさんが怒鳴る。俺まで怒られてしまった。 


 まぁいい。 


 まずは、カミラを落ち着かせる。


「カミラ、カミラ!」 


 スキップしているカミラの肩を数回叩く。テンション高めのカミラの意識を戻すため、少し強めに叩いた。バシィ、バシィと衝撃音が響く。


「お兄ちゃん、痛い」 


 カミラが少し非難めいた声を出す。痛かったようで肩をさすっている。


「あぁ、ごめんよ。だが、落ち着いたようだな」

「まったくお兄ちゃんは乱暴だな」 


 どの口が言うと言いたいが、ここはぐっと我慢する。カミラの暴走を防ぐのが大事だ。


「カミラ、約束を覚えているな? 俺の指示に従うって言ったよな」

「うんうん、お兄ちゃん、早く、早く行こう!」

「カミラ、約束を守れるなら連れて行ってやる。でも勝手な行動はだめだぞ」

「やったー! でっかい熊さん見に行ける!」 


 これはいつもの我儘の比ではない。是が非でも行くという強烈な意志を感じる。


 さてさてじゃあちょっくら行って、片付けてくるとしよう。 


 俺とカミラは休憩所を出ようとするが、


「君達、どこに行く気だ?」 


 周囲の人々の何人かが俺らの行く手を遮ってきた。彼らの表情は固い。 


 ふむ、しまった。 


 あれだけカミラが大声で騒いだのだ。俺達が熊を見に行くという会話は丸聞こえだったのだろう。


「あなた、まさか妹の癇癪に負けて山に入る気じゃないでしょうね? 死ぬわよ」

「そうだぞ。少しぐらい大丈夫だろうとか思ったら大間違いだ」

「うむ、判断を誤ってはいかん。だいたい君達、親はどうしたんだ? もしかしていないのか? それなら私が保護してやってもいいぞ」 


 彼らは、てこでも行かせない気らしい。必死に俺らを止めてくる。 


 白カブトの脅威に震えているだけの人もいれば、こうやって他人の心配をしてくれる人もいる。 


 彼らは善人だ。 


 おそらく兄妹二人きりで旅をしている俺達に対し、気にかけてたんだろうね。 


 これはこっそり潜入は難しくなった。 


 彼らに当身を食らわせるのは、忍びない。かといって振り切って進めば、心配をかけるだけである。中には俺らを追いかけてくるほどのお人よしもいるかもしれない。 


 ……殺人許可証を見せるか。 


 俺達がマキシマム家の人間だと伝えれば、心配させずに済む。マキシマム家の名は、伊達ではない。俺達のような子供でも強者だと認識してくれるだろう。 


 う~ん、でもなぁ~。 


 ここでライセンスを使うと、あっというまに噂が広まる。ただでさえ銀髪美少女とイケメンハンサムな美少年の二人組みだ。行く先々で俺達の正体がばれてしまうだろう。 


 ただでさえ、二人組みの凄腕賞金稼ぎの噂が立っているのだ。俺達の水戸黄門活動のせいでね。正体がばれないように慎重に慎重に後処理をしてたのに、これだ。 


 人の口に戸がたたないとは言ったものだ。 


 うん、ここで殺人許可証を使えば、情報は確実に拡散される。 


 そうなれば、殺しの依頼をされたり、何よりマキシマム家に懸けられている莫大な賞金目当てに暗殺者が殺到するだろう。俺が目指している平穏な生活が遠のいてしまうのは明白である。 


 それならば……。


「ご心配ありがとうございます。ですが、大丈夫です。こんな若輩者が、言うのもなんですが、熊退治は俺達兄妹に任せてもらえませんか」


「何を言うんだ。君達死にたいのか!」

「そうだ。勇気と無謀をはき違えたらいかん!」 


 彼らは血相を変えて反対する。


「実は俺達、マタギの一族なんです。熊を殺すことに関しては右に出る者はいません」 


 そう、マキシマム家である事さえばれなければい。俺達は強者、マタギの一族とする。


「……本当か? じゃあなぜ銃を持っていないんだい?」

「疑問は最もです。銃はこれから行く街に修理のため預けてあるんです。その銃を受け取るため、俺達は旅をしていたんですよ」 


 俺の嘘八百な言葉を住人の皆さんは、半信半疑、いや、八割以上疑っている。まぁ、そうだろうな。俺の見た目は、線の細い貴公子タイプだからね。とても逞しいマタギの一族には見えないだろう。


「皆さんも、言葉だけでは信用できないでしょう。論より証拠。誰か銃を貸してもらえませんか? 腕前を証明してみせます」 


 すると、一人の男が進み出て、背負ってた銃を渡してきた。


「オラもマタギだ。怪我で討伐隊の選抜から漏れてしまったが、腕をみる自信はある。おめぇがそこまで言うのなら、それで証明して見せろ」

「お安い御用です」 


 銃を受け取ると、手慣れた動作で銃の玉込め確認等を行う。 


 マキシマム家では、一通りの武器の扱いについて習う。銃もしかりだ。素手での戦闘が基本とはいえ、時には遠距離からの狙撃も必要になる。あらゆる状況に対応できるよう、幼い頃から訓練を受けてきた。 


 銃の重量バランス、引き金の感触、照準器の精度。瞬時にこの銃の特性を把握する。


「ほぉ~素人ではないようだな」

「えぇ、マタギの一族だから当然です」 


 俺は狙いを三百メートル先の木の枝に絞り、引き金を引いた。 


 ダダァアアンと轟音が鳴り響き、弾が枝に命中する。小枝は、どさりと地面に落ちた。 


 さらに俺は連射して、次々と小枝を打ち抜いていく。風向きを計算し、重力による弾道の落下も考慮に入れる。まるで枝が自ら落ちることを選んだかのような、完璧な射撃だった。


「お、おぉおお、凄い腕だ。ほ、本当だった」

「あんな子供なのに、信じられない」 


 周囲からどよめきが起きた。


「こりゃたまげた。うん、ロックさんに負けず劣らずの腕じゃ」 


 マタギの爺さんが目を見開いてうなる。


「それじゃあ、この子に任せてみても、いいんじゃないかな。もういつ襲われるか、不安で不安でしかたがないんだ」

「うん、これほどの腕ならもしかして、いけるかも」

「待ちなさいよ。いくら腕がたってもまだ子供よ。しかも一人でなんて無理に決まってる」

「そうだ。ロックさん達でも全滅したんだ。俺達の身勝手な願望で、若い命を危険にさらすわけにはいかない」 


 周囲の人々からあーだこーだと賛否両論の意見が挙げられた。


「あ~ご心配して頂かなくても大丈夫ですよ。俺は伝説のマタギの一族です。特に、生きた伝説と呼ばれている祖父直々に指導してもらいましたから」 


 祖父ちゃんは確かに生きた伝説だ。八万の軍勢に単身突撃して生還したなんて、もはや神話の域に達している。


「でもね。万が一ってこともあるのよ」

「そうよ。白カブトには銃が効かないみたいじゃない。いくら射撃に自信があっても無理よ」 


 ご婦人の方々が特に心配をしてくれる。ありがたいことだ。


「問題ありません。銃が効かないのは、その分厚い肉に阻まれるからです。俺なら弱点である眉間を狙います。それに何より無理は絶対にしません。基本は様子を見てくるだけですから」 


 そう言うと、しぶしぶながらも納得してくれた。 


 銃の腕前を見せたこと、何より藁にも縋りたい気持ちもあるのだろう。

 皆、俺に期待を寄せている。封鎖を担当している役人も然り。応援のめどもなく、少しでも熊の情報が知りたいのだろう、簡単な手続きですんなり通してくれた。 


 俺とカミラは、そのまま山道に――


「ち、ちょっとちょっと妹さんがついて来てるわよ。危ない」

「そうだ。君、お兄ちゃんが戻るまで大人しく待ってなさい」 


 うん、そうだね。俺は許可されてもカミラは止められるだろうね。外見だけなら、カミラはまだ小学生なんだもの。仕方がない。 


 カミラは、止めてくる人達にあからさまに不満の眼を向けている。 


 まさかKILLしないよな? 


 お兄ちゃんとのお約束第一条「許可なく人を()べてはいけない」を忘れたとは言わせないぞ。


「お兄ちゃん」 


 カミラがこちらを見てくる。どうやら第一条を忘れてはいないようだが、熊と会わせる約束も忘れていないようだ。 


 カミラが無言で訴えてくる。 


 止めてくる人達をなんとかしろってことだな。 


 わかってるよ。お兄ちゃんは約束を守る。


「あ~実はですね、うちの妹もなかなかの腕なんですよ。伝説と呼ばれたうちの一家でも天才と呼ばれているんです」 


 俺は自信たっぷりに言った。嘘ではない。カミラは確かに天才だ。殺人の天才だが。


「本当かい!」

「信じられん。こんなに小さいのに……」 


 周囲の大半が俺の言葉を疑っている。カミラの見た目は、どこからどう見ても可憐な美少女だからな。その小さな身体に、人間離れした力が宿っているとは誰も思うまい。


「本当なんです。また論より証拠ですね」 


 さっきと同じように銃を受け取り、カミラに渡す。


「カミラ、ちょっとその銃で腕前を見せてやってくれ。そうしないと彼らが納得しないんだ」 


 俺が説明すると、不思議そうに銃を見つめるカミラ。ペタペタと銃を触り、銃口を覗いたりしている。俺と違い手慣れている感がない。なんか雲行きが怪しくなってきたぞ。 


 心臓がドキドキし始めた。まさか、カミラは銃を扱えないのか?


「ど、どうした? 銃ぐらい扱えるだろ? 親父達に一通り習ったよな」 


 小声でカミラに耳打ちする。


「お兄ちゃん、これどうやって使うの?」 


 ま、まじか! 


 一体全体、カミラの教育って何をしてきたんだ? 


 いや、まぁ暗殺教育なんて別にしないならしないほうがいいんだけどさ。 


 うっ。せっかく話しをあわせてきたのに。

 周囲がざわざわと騒ぎ始めてしまった。 


 皆の視線が痛い。 


 銃を扱った事もない子供を熊狩りへ連れて行こうとしてたからね。 


 カミラにそっと近づき、


「カミラ、銃を撃った事なかったのか?」 


 周りに聞こえないように小声で訊いた。


「うん、ママがね、銃はジャムるからナイフを使いなさいって」 


 また過保護なのか、虐待なのかわからない心配をする。 


 そりゃ弾詰まりをする危険性はあるけどさ、何千回に一回程度の確率だぞ。それにリボルバーならこの問題は、関係ない。


「うちに回転式小銃があったよな。あれもだめだったのか?」

「あれはいいって。でも、じいちゃんが反対した」

「じいちゃんが?」

「うん。銃は、三アクションもかかるから武器には不向きだって。僕も遠くから攻撃するのは好きくない」 


 ……事情はわかった。 


 近くから殺すのがいいって……相変わらずの殺人狂である。 


 ふ~空を仰ぎ、溜息をつく。 


 事情はわかったけど、どう皆に説明するか? 


 この空気をなんとかしないと、カミラを連れて行けない。 


 しばし熟考する。 


 そして……。


「あ~皆さん、誤解のないようにお願いします。カミラが説明した内容を端的に説明しますね。つまり、カミラは村田銃を扱った事がないって言ってるんですよ。愛用の銃でなら遅れを取りません」

「違うよ。お兄ちゃん、僕は銃よりナイフで殺――」

「あ~ゴホンゴホン! なんでもありませんよ~」 


 慌ててカミラの口を右手で塞ぐ。


 これ以上、ややこしくするんじゃありません。


「み、皆さん、とは言ってもカミラは天才です。謙遜しているようですが、妹はどんな銃でも自在に扱う事ができます。見ててください」 


 村田銃をカミラに持たせて撃つように指示をする。 


 もちろん基本的な撃ち方は、周りに聞こえないようにこっそり耳打ちした。カミラはこくこくと頷いている。カミラは頭がイッてはいるが、頭が悪いわけではない。 


 基本の撃ち方さえ教えれば、理解は早いのだ。並以上の成果を出せる。これである程度の腕前を周りに見せつけられるだろう。 


 最初はそうだな~。 


 周囲を見るに、北側にある大木が適当かな。

 距離にして三百メートルちょっと。風は、無風に近い。初心者にはお手頃だ。 


 とりあえずカミラには、木の枝でなく木の中心に当てるように指示をだそう。 


 だ、大丈夫。 


 カミラは、マキシマム家の娘だ。チート一家の血が流れている。止まった的に当てるぐらい初見でもどうにかなるよ。 


 ……外したら、愛用の銃じゃなかったから調子が出なかった事にしよう。そして、ある程度練習すれば、問題ないと言えばいい。


「じゃあカミラ、あそこの木を狙――」 


 ズガァアアンと鉄砲音が響く。 


 カミラが説明途中で銃をぶっ放したのだ。

 さらに「バン♪ バン♪ バン♪」とリズミカルに唄いながら銃を撃つ。まるで小学生が、買ってもらった銀玉鉄砲で遊ぶような感じに。


「こ、こら、カミラ、いきなり撃つんじゃない。おもちゃじゃないんだぞ。ちゃんと狙って――」

「た、たまげたぁあ。その娘っ子もとんでもない腕だ」 


 俺の発言を遮り、マタギのお爺さんがでかい声で叫んだ。周囲の人々も、ポカンと口を空けている。全員、唖然としている様子だ。 


 いったい何がどうなって――ん!? 


 おぉ! 


 カミラの射線上を見る。 


 そこには……。 


 鳥類保護団体が卒倒しそうな勢いで、野鳥がパタパタと地面に落ちていくではないか! 


 カミラが次々と野鳥を撃ちまくっているのだ。 


 ツグミ、ヒヨドリ、ムクドリ、トビ……大空を舞う全てがカミラの餌食である。 


 カミラは木を狙っているのではなく、空中を飛び回る鳥を狙撃していた。動く標的を、しかも複数同時に。俺にもできるが、初見でこれほど正確にやるとは。 


 あんな適当な構えで。

 あんな変なリズムに乗って。 


 ……これだからチートは怖い。 


 マキシマム家の血筋は、本当に恐ろしい。どんな武器を持たせても、瞬時にその真髄を理解してしまう。カミラにとって、銃など単なる「新しいおもちゃ」でしかないのだ。 


 とにかく計画通りだ。カミラの腕前を皆に見せつけられた。


「皆さん、見てのとおりの実力です。俺達、マタギの兄妹に任せてください。熊の様子を見てきますが、無理はしません。心配は無用です」 


 そう宣言するや、 

 ボロが出ないうちに。

 カミラが野鳥から人にターゲットを変えないうちに。 


 俺達は、山中へと足を踏み入れたのであった。 


 山中に足を踏み入れ、死臭が強く発する場所へ急行する。もちろん、銃は途中で置いてきた。 

 あんな轟音がするものを撃ってたら、獲物に逃げられてしまう。 


 俺達は、銃よりもナイフ、ナイフよりも素手のほうが勝手がよいのだ。 


 山道を進むにつれて、周囲の雰囲気が変わってくる。鳥の鳴き声が聞こえなくなり、小動物の気配も消えた。まるで山全体が息を潜めているかのようだ。 


 木々の葉も色褪せて見える。本来なら青々と茂っているはずの季節なのに、どこか生気を失ったような印象を受ける。 


 そして、死臭。 


 血と腐敗の匂いが、風に乗って漂ってくる。この先に、確実に白カブトがいる。


「お兄ちゃん、すごくいい匂いがする♪」 


 カミラが嬉しそうに鼻をひくひくさせている。俺には死臭としか感じられない匂いを、カミラは「いい匂い」と表現する。この感覚の違いが、俺には恐ろしかった。 


 そうして山中をくまなく探していると……。 


 見つけた。 


 数十頭の群れを率いた大熊。通称白カブトだ。情報通り、頭の天辺が白い毛で覆われている。鋭い牙には、狩猟ハンター達を食い殺してきたせいか強く死臭が漂っていた。 


 ふむ、凄いな。 


 突然変異なのか、身長は十メートル以上だ。南極熊よりもでかいぞ。体重も二トンを軽く超えてるだろう。また、その分厚い毛皮を見るに、なるほど銃弾が効かないわけだ。あれだけ肉厚があると、ほとんどの衝撃を吸収してしまうだろう。 


 そして何より、白カブトの周りにいる普通の熊達。これは予想外だった。まるで軍隊のような統制の取れた動きを見せている。 


 白カブトは単なる巨大な熊ではない。知能も高く、群れを率いるリーダーとしての資質を持っている。これは厄介だ。 


 うん、こいつを見たら親父が喜びそうだな。嬉々として、剥製にするだろう。そして、玄関にかざるんじゃないか。 


 わくわく♪ わくわく♪ 


 うん……「わくわく♪」って擬音がもろ背後から伝わってくるぞ。 


 背後を振り返る。 


 カミラの眼が輝きに溢れていた。まるで子供がクリスマスプレゼントを前にしたような、純粋な喜びの表情だ。 


 どうやら血は争えないらしい。カミラも白カブトを見て、これまでにないほど興奮している。うん、間違いなくカミラは父親似だね。 


 この興奮状態のカミラが、約束を守ってくれるだろうか。 

 もう誰であろうと止められない。カミラは、その本能のまま白カブトにぶつかっていくね。 


 白カブトに、ほんのちょっとだけ同情してしまう。 


 そんな白カブトだが、ギロリと俺達を睨み続けている。そして、軽く吠えると、従っていた熊達が俺達を囲むように移動してきた。 


 おいおい、熊のくせに連係までできるのか。 


 これは驚いた。 


 野生動物でありながら、まるで訓練された軍隊のような動きだ。白カブトの知能の高さを物語っている。 


 そして……。


「がぉおおおおんん!!」 


 白カブト達が、咆哮を挙げて襲ってきたのである。 


 今まさに戦端が開かれたのであった。 


「カミラ、約束を忘れるなよ。俺の指示に従って――」 


 振り返ると、既にカミラの姿はなかった。


「え?」 


 次の瞬間、カミラの嬉しそうな声が戦場に響いた。


「やったー♪ でっかい熊さん達と遊べる♪」 


 カミラは既に熊の群れの中に突撃していた。その動きは俊敏で、まるで風のように熊達の間を駆け抜けていく。 


 あぁ、やっぱりこうなったか。 


 深いため息をつきながら、戦闘に参加するしかなかった。 


 妹を救うための長い戦いは、まだ始まったばかりだった。

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