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小竜記  作者: シダ丸
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深海の影

 それから私たちは来る日も来る日も探し続けた。これだけ探して見つからないのだからどこかで死んだのだと徐々に探す人もいなくなっていた。

 そんなある日。地元の漁師が二十キロ離れた島に恐竜がいるのを見た、という情報が入った。彼はその島をたまたま通りかかった時、偶然見つけたという。しかしその後急に海が荒れて近づけなくなったらしい。

 早速我々はその島へ向かった。もちろん、富士宮さんのボートだ。はじめは穏やかだったが、島に近づくにつれ天気が荒れ始めた。

 やがて天気は大荒れになり、雷も鳴り始めた。寒く、苦しく、辛かった。

 「耐えるんだ!」富士宮さんが言った。「この目であいつらの姿を見るまでは耐えるんだ!」「助けてやるんじゃない!見守るんだ!」以外にも声の主は直人だった。

「俺たちが連れてきたものである以上、俺達には守る義務があるんだ!」

 その時、ズモモーという音がして私の周囲が暗くなった。教授もみんなもいない。不思議な空間だった。自分の所だけスポットライトのように照らされている。時々遠くを、見たこともない魚が泳いで行った。

 そこへ奇妙な声が聞こえてきた。

『愚かな人間よ。何故ここに来た』声は低く恐ろしい声であった。それがこの空間にビリビリしびれるのを私は感じた。

 間もなく声の主が出てきた。濃い青に白い斑点のある魚だったが、暗がりでよくわからなかった。

「彼らを見守るためにやって来た。」私ははっきりとそう答えた。

『お前ごときがか!?』声の主はせせら笑った。

『お前ごときに何ができる。あの者たちは私がいれば十分だ』

「彼らは私にとって子のような存在なのだ!親は子を守らねばならない。私たちはには彼らの独立を見届ける最後の責任がある!」

 気が付くと、口がそう言っていた。すると、『ふはははは。まさか人間にもこんな奴がいたとはな。あっぱれじゃ。行くがよい。人類一の強者よ』そう言って声の主は消えた。

 世界がまた変わった。私はボートに戻っていた。まだ嵐の中だが、少し弱くなってきたらしい。

「大波だ!」と誰かが叫んだ。すると、ボートはたちまちその大波に投げ飛ばされた。

 その時、私は海の深くに大きな魚の魚影が見えた気がした。

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