Prologue:不死と不幸
茜色を反射させる河原を小さく進む二つの影。
一つは大きく見える影。その影に小さなか細い影が寄り添う。大きくみえていたのは単に小さな影との差があまりにもあったからだ。
お互いの影から架け橋が優しく結ばれている。
四つの砂利鳴らす音がバラバラに茜色に染まる空気を弾ませる。四つの音の正体は二人の足たち。
一人はゆっくりゆっくりと大きな歩幅。一人はちょこちょこと小さな歩幅。
学生服の少年と茜色に染まる白いワンピースの女の子。
少年が傍らに寄り添い歩く女の子に笑顔で訪ね申す。
「今日僕の夕飯はカレーにしようと思ってるんだ。みうちゃんは好き?」
その問いに跳ねたソプラノと200%の笑顔で返事。
「みうカレーだーすき! おにーちゃんもだーすき!」
「今度ごちそうしちゃうよ」
「わあい! りんおにーちゃん、だーすきい!」
「でも今日はママに会わないとね!」
うん。とスペシャルウルトラファンタスティックなベリーベリー笑顔で微笑み、結ばれていた手を解き茜色の発生源に向かって陽気なぎこちないスキップで駆け出す。燐は一人心底思う。
幼女は可愛いね。無邪気で健気で。この世の穢れを知らずその背には純白の天使の羽が愁いなくはためく。その健気さは高台にひっそりと咲く一輪のたんぽぽ。春先寸前の雪解けを楽しむ蕗の薹。今にもその花弁が開かれんばかりに春風と共に花開こうとするマーベラス。
諸君らはその耳で聞いたことはあるのだろうか。雨奇晴好。永久不変。永遠無窮。威風凛然。純粋洗浄。それら全てが当てはまろう。幼女からの一言。
「おにーちゃん、だいすき」と
僕は今天変地異、天災地変が起ころうと守ろうと努力出来るだろう。もちろん諸君らも同意見だろうがな。
と、言っても僕は一般人の言うロリコン、ペドフィリアではないぞ。断じて違う。そう、違うのだ。諸君ら……否。人類全ては愛らしい愛しいモノを愛でる。それは何が起ころうと覆ることは決してない。とどのつまり、つまりのつまり……。
「――俺は、ロリペドマスターじゃねえ!」
茜色の陽を右頬に受けて河原に叫び吠える。その汚らわしいゲス音をかき消すほど美声。全てを清らかに還す癒しの声。
「りんおにいーちゃーん! はやくはーやーくー!」
ともあれ今の僕には果たさなければならない使命がある。天使の子みうのママさんを捜さなければならない。さもなくば諸君らに、否。僕自身で自害することだろう。天使の涙は地を貪ることだろう。――さあ、行こうか。
これほどの祝福の時を人生の1ページに刻めたことの綴りの過程を話すには時をしばし遡らせようか。あれはとある週のど真ん中の水曜日。僕は自宅である阿澄家で会談を余儀なくする。もちろん、フェッロの件だ。
「かあさん。とりあえず仕事お疲れ様」
「燐くんただいま。フェッロちゃん具合どうかな~?」
「元気でーすっ!」
「いやそんなことよりこれはどうゆうことで……?」
「そ、損なことってどうゆうことなの!」
「ちがうわ! それは置いといてって意味だ」
「置いとく? テーブルになにか置くの?」
「だあかあら! そんなことよりフェロがうちに住む話をだな……」
「損なことよりあたし? あたしが元気なのが損で、住む話をするってことは……ハッ!」
立ち上がり何か重要な事柄に気が付いてしまったようだ。絶望を身体いっぱいに表現したらきっと今のフェッロのことを指すのだろう。
「リン、あたしはやっぱりめいわくだったなのね……。わかったようん」
「そうか。色々誤解あるがまあフェロは置いといてかあさん話戻すけ」
「置いとくってどこにあたしを置いておくの!?」
うぅ……。話が進まない。雑草を噛み砕いた時のような表情でひっそりとフェッロの萎える尻尾を見つめる。
すると、可憐な笑い声が二人の表情を疑問符いっぱいに埋める。
「うふふ。あなたたち仲良しね。フェッロちゃん馴染んでいてよかったわ」
「仲良くなんて……ちょっとくらいだ」
「うん、なかいいんだよ」
「よかったわ。あなたがそんな風に心から生き生きしてて。まあ兎にも角にも部屋空いてるんだしいいじゃない。仲悪かったらどうしようかと思ったけどこんなに仲良しさんならニワトリさんも飛んじゃうわね」
「どっちかと言うとあたしが仲良くしてあげてるの。リンのごはんおいしいし!」
「なにも(ないような)胸を張ることでもないだろうよ。……でもまあ、ありがとう」
頬を少しばかり紅潮させそっぽを向くがそれをしかとみる母がにやにやしているのに気が付き話の転換を強引にする。
「だあー。でもなんで急にうちに住むことになったんだよ。なんか訳あるんだろ?」
「んー、大人と事情ってこと。そろそろ――」
と言い掛けた時お風呂沸きました機能にしか使われることがないタイマーが呑気に恒例の音を放った。
「なんだ沸いたな、かあさん疲れてるだろ? 先入んなよ」
「いいえ、フェッロちゃんお先に入ってらっしゃいな」
「ふえ! 一番お風呂! ほんとに先にいいの?」
ええ。と返すと一目散に脱衣場に消えていった。ちかえは細く笑っていたがフェッロが消えると真剣な赴きになった。
「事情を聞いてくるってことは燐くん何も知らないのね?」
頷くと表情を変えずに続けた。
「あの子あっち、故郷で酷いめにあっててね」
「ひどいめ?」
「うん。でも私からは言えないわ。本当に酷いから、それで助けてあげたかったの。燐くんには急なことで戸惑うこと多いと思うけど助けになってあげれない? あっちにいたときのフェッロちゃんは虚ろで悲壮で……。でも燐くんと話してた時の生き生きした表情見たら……」
きっとフェッロ自身も塞ぎ込みたいことなのだろう。無理に詮索してあの笑顔を歪ませたくはなかった。何より彼女を救ってあげたい。愛嬌満点の仔猫のようで愛でていたい。
「ま、あいつが哀しそうにしてるのは俺としてもいい気分じゃないし部屋空いてるし、ってかもう既に普通に馴染んでるし、色々言っても今更だしな、うん。わかった全然おっけいモーマンタイ」
「燐くんなんだか嬉しそうね、うふふ」
「んなことねぇよ。でもあいつには俺もなんだかんだで救われてるからさ」
「まあ私もちょっとは聞いてるわよ。魔王くん」
「お……? まおうえ? だっだれのこととだかなあ! ま、まま魔王? えっとお?」
「ああ、私こう見えても魔術師だからね。えっへん!」
たわやかな胸を張って随分偉そうにしている。
「フェッロちゃんの件は誤算過ぎたけどね……」
「誤算? かあさんは何を知ってるんだ?」
「私がフェイク信教をフェッロちゃんに教えたのよ。性格を直したいからって言ってたからさ」
「性格を直したいからってなんでフェイク信教を……?」
「燐くんはどこまで知ってるのかなあ」
「えーっと、フェイク信教は人を分別してそのコピーはお父様って言われる人の命令を絶対にしていて、あとは俺の魔王の力を狙ってるくらいかな」
「うん、そうだね。自分の意志でフェイク信教に入りそこで劣勢感を取り除いてもらうのね。だからフェイク信教に入った子は純粋に自分の嫌いなところを排除して新しい自分になるのね」
「それじゃあ……」
それだとコピーを倒しオリジナルに劣勢感を戻したとしても負の連鎖からは逃れていない。
「でもね。人はその劣勢感とともに自身の成長の糧として大きくならないといけないと思うの。人は誰しも何かに劣っていたり嫌だと思うことがあるでしょ。でもそれを排除したからって根本的な解決は出来ていない。やっぱり人はそうゆう所。気に入らなかったって認めてそれと共に頑張らないとね!」
両腕でガッツポーズ。
「だから燐くんの選択は合ってるとお母さんは思います」
「でもコピーの意志はどうなっちゃうんだ、これまで会った"serialNo."たちはみんなそれぞれの感情を持っていて……」
「それなら消失した後にオリジナルの中でしっかり会って話して一つに戻るから安心しなさいな。まあその時の記憶はなくなっちゃうんだけどねー」
「そっか、でも母さんはなんでそこまで知ってるんだよ」
「え、あ。うん。だってそりゃあ。私も分別した身だし、魔術師だったから記憶の保護でなくならなかったんだけどね。こう見えて元"serialNo.11"でしたー」
「まじでか!」
「まじまじまじこ。もう関わりはないけどね~」
「なんとも色々困惑してきた……」
さてと。と立ち上がりどこかへ向かって行ってしまう。
「フェッロちゃんとお風呂入ってくるよ。覗いちゃだめだぞ?」
「ああ、のぞかねえよ」
魔王一人と使い魔一人になって静けさが冷静な思考を訪れさせてくれる。
「りず、起きてるか?」
「おうよ魔王様。どしたんだぜ?」
「……母さんは俺の実の母さんじゃあないんだ。義理の血の繋がりがない母さんなんだよ」
リズリカミネは相槌も打たずに聞くだけだった。
「実の母さんは俺を産んで直ぐに亡くなっちまって父さんも記憶がない頃から行方不明だし母さんは魔術師の元"serialNo."だって言うし……、俺がのうのうと生きてた時に一体何がどうなってんだ……」
頭を抱えるとついに使い魔が言葉を返す。
「だからって魔王様はどうするんだぜぇ?」
「まあどうもしないんだけどな。母さんは母さんだし、血の繋がりがなくても感謝でいっぱいだからな。血の繋がりがあったって連絡一つしねぇ父さんは一体どこでなにしてるんだかな、それより生きてるのか心配だ」
「魔王様……」
リズリカミネは躊躇いながらも納得したように続けた。
「魔王様はこの数日で大分進歩したんだぜ。もう話す頃合いなのかもしれないんだぜぇ」
「もしかしていつか言っていた「まだ言うほど時は満ちていない」ってやつか?」
「まあそうなんだぜ。あの時、世界の再構築の際の関与出来る力を有するモノのことだぜぇ」
リズリカミネはどこか吹っ切れたように自身を促しさらに続けた。
「あれはまおう、魔王様の力が関与してるんだぜぇ」
燐はオウム返しをして言葉、息が喉につまった。
「おうよ魔王様。でも魔王様じゃあないんだぜ?」
「それってどうゆうことなんだよ! 魔王は僕ででも魔王じゃなくて僕は魔王で!」
「それはつまりだな――」
躊躇い全てを見透かしてるように付け足した。
「この時代には、魔王様……じゃあねぇ。魔王の力、器を有するモノが十一代目魔王様以外にもいるってことなんだぜぇ」
燐は言葉を失い戸惑い、使い魔は不意を突くように付け足していく。
「あと魔王様に課せられた使命と魔王というシステムの循環。歴代の御方も辿った道筋。それを教えとかなければいけないんだぜぇ」
「しめい、じゅんかん、みちすじ?」
「ああ、そうだぜぇ。まずはそうだなぁ。魔王という存在がいるその時代、その近未来。その先には強大な災厄が訪れるんだぜぇ」
「それじゃあ近いうちに起こるってことのか……」
「そうなんだぜ、でもそれが何なのかは災厄が訪れる寸前まで分かり得ないんだぜぇ。天変地異や何者かの陰謀か。それを阻止をする為の力を有する存在が魔王様なんだぜぇ」
「災厄が起こるまでに阻止は出来ない……と」
「そうなるんだぜぇ」
「僕の使命は分かった。じゃあ魔王のシステムって?」
「そこで質問するぜ魔王様。『魔王』って聞いてどうゆう存在だという認識が一般的だと思うんだぜぇ?」
「世界征服を企むばか野郎かな。ゲームとかでもそうだし、世界を混沌に……ぬはははは。みたいな感じ?」
「ずばり一般論じゃその通りなんだぜ、魔王の力を欲するモノの認識もそれと同意。だが決定的に違うんだぜ、魔王様は使命と一般論に齟齬があるのは分かるか?」
「確かにうん。でもなんで……」
「それは初代魔王様が創り出した循環の為なんだぜぇ。魔王の力の動力源はなんなんだぜ?」
「そりゃー魔力」
「……まあそうだけどちがうぜ。人々の邪念、つまりは負の感情なんだぜ」
「確かにそうともなるか」
「その為に世界に『魔王』の認識をマイナスに固定させなければならなかったんだぜぇ。ここまで言えばもう分かるんだぜぇ?」
人々は魔王と聞くと恐れる。邪が発生する。魔王の動力源は闇。
「まあな。そう認識させておけば自動で魔王の力がアップアップか」
「おうよ。だから古きから魔王は邪悪なモノと言いつがれてきたんだぜ。ま、実際人々から闇を吸うことで人々は邪がなくなり魔王様は力増量。みんな平和って寸法なんだぜぇ!」
「そりゃ初代さんいい考えを思いついたもんだ」
だがそれでは魔王は嫌われ人々の闇をもらう一方で災厄も防ぐ。
「でも魔王って辛いな、なんだか。でもなんで初めにそれを教えてくれなかったんだよ」
「そりゃ悪かったと思ったんだぜぇ。でも一度闇へ浸透しなければならなかったんだぜぇ」
「それはどうゆう……?」
「覚えてるだろ? 近衛の坊主との修行の一件なんだぜぇ。あの時町の邪が集まったろ。あれは魔王様にとっていずれなさなければならなかったんだぜぇ。俺様はまだ早いと思ったんだが本当に申し訳なかったんだぜぇ」
「まあもう謝るなって。でもなんで浸透しないと教えられなかったんだよ」
「循環のシステムを知れば浸透はしにくくなっちまうんだぜぇ。闇が善なるモノのためだと分かって取り込むのとその逆じゃ媒体に対する浸透圧は力が弱まっちまうんだぜぇ」
「まあ、分かるような分かるような……」
「魔王様はもう浸透終えているからドーンと寛大に構えてりゃいいんだぜぇ! それに追加特典もあるぜ。異性を魅惑するのも魔王様の特権なんだぜ?」
「みわく……?」
「他者は邪険に『魔王』を認識するが、初代魔王様の器を継承しているから近しい乙女は魔王様に強弱はあるが好意を抱くことは歴代から分かり得ているんだぜぇ!」
「やったあ! ハーレム万歳!」
すぐさまに起ち上げり両手を天井向けて広げ口元を満面に曲げる。
「……ってなるか! 人の気持ちはその人が決めなければならんだろ諸君うむそうだよなだからのうのうと喜ぶことはしないがままままあみんなから好意を抱かれればやや吝かではないだがなぐへへ」
「……魔王様。口元緩すぎるぜぇ」
「ふっ。メシ作るか。その前に服用意しないとな」
目をぎゅっと瞑って髪、頭皮の汚れごしごし。慣れない手つきで泡立たせていると浴室の外から盟依の声が届く。
「フェッロちゃんご一緒してもいいかしら?」
咄嗟に反応してしまい目を開けるが泡が侵入し瞳が滲みる。悶え苦しむ声を発していると泡たちをシャワーで流される。仔猫のように髪を身体ごとぶるんぶるん。
「威勢のいい娘さんね。お体流しましょうか?」
「ちかえさん……?」
背後に笑顔を浮かべる巨乳。フェッロは素直に思った。素晴らしいと。
「まずはコンディーね」
仔猫を撫でるように優しく塗りたくる。
「ちかえさんなんだかくすぐったい」
きゃきゃうふふと思わず抱きしめる。豊満な胸がフェッロの小さな背中に押し潰され形が原型を保てなくなる。
「ちかえさんすばらしいッ!」
「むむ。それダメ。仰々しいからね」
明らかに不機嫌な声を漏らすのを聞き疑問符を浮かべる。
「ちかえさん。ってやつ。ママでもお母さんでも呼んでよ。もうフェッロちゃんはうちの子みたいなもんだしさ」
「おか……、おか。おかか。おかあさん……」
俯き耳を赤く紅潮させ肩に力が入り少し震えている。が入った力を一気に抜く。
「ふぅ。ちかえでいい?」
「いいわよ。仕方ない、許してあげよう。次は身体ね」
つるつるー。と喜びながら腹部に肩、腕、脇。胸へにゅるりとボディソープでコーティングされた手をあちらこちらへ移動させる。
「あら、意外と胸立派ね」
「んーーーッ! ちかえの方が立派ッ!」
仕返しと言わんばかりに小さな手が福与かな胸に沈む。負けじと胸に移動し終えた手が腹部の下。柔らかな肌の凹みに割り込む。
すると急激な刺激が発端となり激動なソプラノが浴室、脱衣所へと蔓延る。
浴室の外にいた者、阿澄燐がその激動を耳にし漆黒の醜穢な瞳を体ごと向ける。
「知っているぞ僕は。諸君らの希望に反する行いで悪いが凡人の小説主人公の阿呆はこうゆう時駆け急いで入り込みラッキー助平に君臨するのだろ。だが僕はしない。乙女の純潔を守ってこその主人公なのさ。ふっふっふ」
脳裏に銀髪少女との初対面の当日のカマドウマ事件簿を引っ張り出して脳裏の戸棚に再び収納すると浴室に背を向けて脱衣所から帰還しようとする。
だが、そうはいかないのがハーレム魔王の器を受け継ぎし者。背後の脱衣所と浴室を隔てる扉の開かれる音が勢い任せに鳴る。
「ちかえスケベ!」
振り返ろうとするが、声の主を拝むことすらままならずに何かに押し倒され後頭部を強打して視界がブラックアウト。
(――なんだ。真っ暗になったぞ。あの声は間違えなくフェッロだ。……てか、このとんでもなく柔らかくしっとりして何とも言えない素晴らしすぎる肌質。何がどうなったんだ)
頬を含める顔はその柔らかな質感に溺れ何かでぬるぬるとしている。鼻は何やら空間が存在していて鼻先にだけその先がぶつかる。もぞもぞと顔、鼻先を左右に振り晒される頭の方へと移動をする。力をそこまで入れずに済んだのはそのぬるぬるのお蔭だ。
「……ひゃんっ。んん、うご……いちゃ、だ、ぁめぇ……。んんっ!」
瞳に光が燈った。その眼前には白い肌。白い太股。白い色々。その持ち主はフェッロ・アイネ・フラウ。潤いを秘めた黄金の髪が身体中に蔓延りやけに色っぽく感じる助平。
その黄金の髪の後ろで柔肌を晒した女性が湯気と共に笑う。
「あらあらあら。危なっかしいわね~」
助平に乗る白いそれはビクビクと少しの痙攣をする。
「ふぇお。はあ、ほんはほほへひふうはへ」
塞がれ続ける口元を必死に動かし懇親の挨拶をするが自身の下の存在を軽く踏んでいることにようやく気が付き紅潮していた頬はさらに真紅に染まり黄金の髪をはためかせ真っ白な歯を噛み締めて次の瞬間に振り上げた手が助平の眼球目がけ振り下りてくる。
「スケベッ!」
光が燈された瞳は二つの小さな柔らかな指で再び光を失った。
その後のことは一々話さなくともいいだろう諸君。
もちろん仲良く睦まじく夕食を三人で済ませたさ。フェッロの学園生活、私生活を含め他愛ない話をしたさ。まあ、三人というか二人というか。フェッロは盟依とだけ話をし僕が話し掛けると頬を紅潮させ視界に入れないようにそっぽを向いていた。なんとも眼球が痛い。