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魔王と十字架  作者: 筒下
偽物と本物
7/10

Epilogue:偽物と本物                     

奏に会いに行くより先に三人とも着替えに帰り、帰る宛がないフェッロは阿澄家に訪問。パイアンを使って白色のワンピースに着替えいつものリボンで二つの尻尾を携える。

奏に連絡し料理と奏を取りに向かった燐。間もなくチャイムの響く音が家内に響いた。

「やほー。フェロちゃんなんか久しぶりだね」

玄関に料理いっぱいを両手に持った奏と燐。その懐かしい姿を見て、もう会えないと思っていたから余計に嬉しくて、程良い胸が愛おしくてフェッロは奏にダイブ。

「かなでーっ!」

「ええ! えっと! はい燐パス!」

料理を燐に全て渡してフェッロを胸いっぱいに抱きしめる。

「フェロちゃん? えーっと、え?」

「会いたかったよっ! かなでっ!」

「私もだよフェロちゃーん!」

頬を金の髪にすりすり。

燐の呻き声が二人の後ろから啜る。両腕、全身、口で持つ料理たち。定員オーバーラン。

「はふへへ~」


なんとか二人の手助けで無事に食卓に奏の手料理を召喚に成功。

しばらくして葉月は阿澄家を訪れた。四人でする食卓。四人でするいただきます。広げられた肉じゃが、ほうれん草のおひたし、金目鯛の姿煮。

「これは! 奏君、美味すぎる! 肉もじゃがもほうれんさんも鯛も!」

「ほうれんさん? これすごいおいしい!」

がつがつと次々と口に吸い込まれていく絶品たち。

「二人ともそんなにがっつくと喉に詰まらせるぞ?」

「ここまでの美味ならいくらつまったってよかろう!」

「――グッ!」

ほれ。とコップいっぱいに入った水をフェッロに与えるとそれを逆さに反して一気に食道に流し込む。

「――っぷあ」

口元に少量の食べかすと水が垂れそれをティッシュで拭う。

「んりんと」

「どういたしまして。はい、おっけい」

「というかなんで金目鯛?」

「めで鯛だからかな?」

フェッロの記憶がないときから準備していただろう。無意識で四人分作ってあり、無事に三人が帰ってこれめでたい。そう意味があると思うと嬉しくなり笑みが溢れる。

「だじゃれかお洒落だな」

奏が金目鯛を分配していくと不満を放つ者が1人。

「はづきのほうが多い! ずるい!」

「ふっ。美味な物はいくら食しても食し足りない。いくら可愛かろうと譲れぬな」

一口放り込むと然も当たり前のように美味。と頷く。奏が自分のほうれん草のおひたしを分けてあげる。

「うん。ほうれんさんは偉大だからかなでに免じて許してあげよう」

そんなこんなでわいわいと食卓上の料理たちが胃に飲み込まれていった。一斉にごちそうさまと食事のエンディングを迎え奏はお粗末様と満足気。

「もう食えねぇー」

「なんだ阿澄君、これはいらないと言うことか」

どこからともなく出したのはシャトレイゼの箱。それを開けると4つの苺がチャームポイントのショートケーキ。

「ふっ。デザートは別腹さ」

「これ知ってる! けーきってやつ」

「甘くてすごいおいしいんだよ」

「よばれてばかりでは申し訳ないからな、堪能してくれたまえ」

「今回は遠慮なくいただきます。もぐもぐ、でも次は気遣わなくていいからな」

何かに拗ねたのか口をへの字にして頬を赤く染めてケーキを正面から手掴みで頬張る。

フェッロと奏はスプーンで一口また一口と猛スピードで転移させていた。燐も負けじと正面から鷲掴み頬張っていく。

一位葉月。二位フェッロ奏同着。ビリ燐。

なぜか威勢良く食べたのにも関わらず敗北してしまう。女の子恐ろしいと心底思っていると、フェッロの口元についた生クリームを指で拭う奏。実に姉貴さんみたいだ。

「ほらほら付けちゃって、もったいないから。ぱく」

拭って終わりかと思いきや食べたのだ。なんとも微笑ましい姉妹だ。

「さて紅茶、飲むか?」

「のむのむー」

「お言葉に甘えていただこう。そしてお手並み拝見だな」

「うし、待ってろよ。目にモノ見せてやる」

「あ、私もなにか手伝うよ」

奏が鈴の音と共にちょこちょこ背中を追って二人で台所に立ち、棚からティーセットを出すのは奏。茶葉を流し台下の戸棚から取り出し、奏の出してくれたティーポットに茶葉をトントン。

していると不意を突かれる。

頬に当たる柔らかなでもその中にも固さもある。奏の人差し指がつるっと一筋動く。その指に付くは、先刻食したショートケーキのホイップだ。それを何を考えたのか自分の舌でぺろっと舐める。

「ほ、ほぉおおお。なななあなんだ!」

「え? もったいないから!」

「ちがっ! おま、なにしてるっ!」

燐の頬が真っ赤に紅潮しているのを目の当たりにして自身が仕出かした行いがフラッシュバック。思い出せば燐よりも真っ赤さらに真っ赤に真っ赤ッカ。

「あ! ふえ、ふええぇ……。はぅ」

なんだかしょげてしまったようだ。それが微笑ましくてついつい失笑。

「なによ!」

「いやまあまあ。紅茶冷めちまう、ほらほら」

居間のほうに戻るとフェッロがあははと笑って未だ赤い奏を弄るに弄った。葉月がティーカップに薄い唇を付ける。

「……。むむ、うまいではないか」

「当たり前だ」

ティーカップを握る指が強くきゅっとして、負けてはいられぬな。と呟いた。なにと戦っているのだろうか。

食事、デザートも済ませ夕食の宴は幕を閉じた。奏と葉月は帰宅し残った二人。

最重要項目を確認しないといけない。

「フェイク信教のヒトはどうなるのかわかったか?」

「うん。オリジナルが亡くなったら代行。代行は世界の齟齬を最小限に抑えるもの。これは前に説明したけどこの先が少し違った。前は処分って言ったけど違ったの。存在の力は徐々に無くなり存在の力が消えた時代行は終わって存在も消える。だから今までそれを認知出来なかった」

「それでコピーが亡くなったら?」

「コピーが亡くなったらオリジナルに、オリジナルはなにかの方法で自分を分離したからそれがオリジナルに戻るだけ。分離する前の状態に戻るってことね」

「そうか、それなら……」

燐の決意、目標、すべきことが決まった気がした。

「フェロ、それはもういいんだが家はさ……。そのなんだ。帰る先あるのか?」

「あたしの家はあの塔。プリッセル塔」

「ぷりっせる。そっちはなんとなく察しはつくんだが」

「オリジナルの家?」

「ああ」

「それは、えっと……」

「覚えているのか? てかうまく言えないけど記憶の齟齬は?」

「えっと、えーっと……」

恥じらっているような仕草で尻尾髪の先を指でこねこねと弄る。その指が指差すは真下。

「……ここ?」

「なんで疑問? ってここか!」

「まあそうなるかな! 簡単に説明するとリンのお母さんにイタリアで会って。もちろんオリジナルがね」

「母さんに会ってたのか!」

「それでまあオリジナルは色々あってさ……」

その色々は深くは聞けない。そんな雰囲気を出していた。

「それでリンのお母さんが「わたしの家に来なさいな」って」

「母さん……。そんな話聞いてねぇぞ」

携帯電話で母親を呼び出し先刻の話を訪ねた。

『え、言ってなかった? まあそうゆうことだから空いてる部屋使わしてあげてね。詳しくは次帰った時ね。んじゃね燐くん』

強制的に通話終了の音が受話器から流れた。携帯画面をオフにして肩を重力任せに力を抜く。一つ溜息をつく。

「まあわかった。これからもよろしくな」

「至らない点ありますが堂々よろしくです」

ぺこりと頭を下げ合う。


翌日日曜日時刻8時近衛ヶ原学園理事長室。

入ると真っ先に目に入ったのは理事長の眼前でかったるそうに寝ぼけ眼で話を聞いている。

「えっと、どうゆう?」

秘書杏がこちらへどうぞといつものソファーに案内。二人して座り待つ。話が終わったのは二人が訪れて30分程経った時だ。

「申し訳ない待たせてしまい」

「いいえ、構いませんけど……」

「ほら義正、君を謝るといい」

「はあ。教え子に下げる頭はないっすよ」

「謝るってどうゆうことです?」

「先日はこの義正に見張りを任せて負ったのじゃが途中でかったるくなって帰宅したと言う。そのせいもあり諸君らには色々厄介事があったそうじゃな」

「見張りって。話がよく見えないのですが……」

「なに、簡潔に言ってもなお分からぬとは……。そうじゃのぉ。義正もコノエキュルリーテの一員でな、先日の忘却の予知があり予防のために任せてあったのじゃよ。うーん、それを簡潔に節系となあ。難義じゃのぉ」

「いえ、大体分かりました」

「お、おばかと聞いていたが中々に頭が冴えるのぉ」

「担任教師……。あんたが魔法と関わっていたとはな」

「あんたとは聞き捨てならないぞ阿澄」

「ふっ、勝手に言ってろ」

「その言い草はないぜ。弟子」

その言葉の意味が深く理解できず疑問符が3つほど浮かぶ。

「かったるいが、これからお前の担任教師兼追加で師匠をすることになってしまった。こんなことなら見張りさぼんじゃなかったわ……」

「償いとして賢明に果たすのじゃよ」

「はいはい、わかりやした」

「なんで勝手に話進めてるんですか! 俺はこんな教師が師匠とか勘弁です!」

怒鳴り指を差す。差された本人は相変わらずかったる言葉が実体化した表情。

「なんだったら杏さんとかがいいです! むしろそうしてくださいお願いです!」

「杏君は我の秘書うえそれは出来ぬのぉ。それにそなたの傍らの美女が御立腹じゃぞ?」

フェッロに視線を送ると明らかに拗ねていた。子供みたいに頬を風船みたいに膨らませていた。

「なんかむかつく、ふんだ」

あははと引き笑い。

「それも含め、義正の腕を見れば前言撤回は確実じゃのぉ」

燐は義正の腕を見るが微塵もその気が起こりうることがなかった。その腕を見ていて思い出す。本題だ。

「そうでした。本題なのですが、こほんこほん」

燐とフェッロが理事長玄彦の眼前まで歩み寄り窓の奥から太陽の暖かい陽が二人の表情をさらに明るくして輝く。

「俺らはこの間の誘い、コノエキュルリーテへの加入を希望します」

「希望します!」

ふん。と満足な息を漏らす玄彦は立ち上がって両手をクロスさせ差し伸べる。

その差し伸べられた手を二人して同時に握るとそのまま玄彦はクロスした腕を戻す。

「ようこそ! コノエキュルリーテへ!」

新たにクロスするのは燐とフェッロの腕だった。近くなった距離にフェッロは頬を紅潮させ顔を軽く殴る。その痛みを抑え再び理事長に目を向けるとその周りに数人の人が現れていた。

 コノエキュルリーテの一角。精鋭たち玄彦含める十数名。教師に見たことのある生徒に卒業したはずの先輩。購買のおばちゃんもいる。その教師の中には癒しの根源、騎馬雀。相変わらずの笑顔で小さく手を振る。鬱憤の根源、只野義正。飽き飽きしてそうなその失望の塊の表情は先刻同様健在。その中一人は仮面で顔を完全に隠している者がいた。そのお面はお祭りでよく売っているあのおふざけ感マックスブルなアホ面なお面だ。

離れた手を両腕いっぱいに広げ叫ぶ玄彦。

「まあ一部だがな。これから頼もうぞ。十一代目魔王、阿澄燐君。フェッロ・アイネ・フラウ君」

その精鋭たちに圧倒され双方ともに声を出すのを忘れていた。

今自分にすべき目標が定められ心にも体全身にも陽の明かりが差す。

王道な流れ?のような気もしますがとりあえずの一章は終わりです。

起承転結がしっかり固定されているのかも微妙なのですがきつい評価も成長のためにしていただきたいと思っています。(高評価大歓迎ですが!)

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