ゲームみたいな恋愛しかしてこなかった。
「いいよ、別れよう。思ってたよりつまんなかった」
一瞬何を言ってるか分らないという顔をした彼を残して私は店を後にした。
出会いは別れの始めというけれど正直この日がいつ来てもおかしくはなかった。わたし達はそんな関係だった。
否、少なくとも先程までは彼は違ったかもしれない。まさか私が引き留めないなんて、まさか私が別れの最後の言葉にあんな投げやりな言葉を選び、あんな目付きや態度になるなんて、きっと彼は少しも予想できなかったに違いないのだ。
「好きなタイプは大人しくて女の子らしい子。分りやすく言えば君と正反対なイメージかな」
五ヶ月前の彼のこの言葉が私に火をつけた。
最も、彼は悪い意味ではなく当時派手に着飾っていた私を見て、もっと男慣れのしていない女性という意味で「正反対」と使ったことは後に知る。
恋愛はゲームだ、なんて恥ずかしいこと思いはしないけど私はゲームみたいな恋愛しかしてこなかった。
気持ちなんて関係ない。
要は無理目な相手を落とす、これが私のゲームみたいな恋愛だ。最後に本音を出すのは別れの挨拶の時だけである。
人は本心なんて暴けない。本質や真正なんて誰も見ない、見てくれない。
自ら偽り隠しておいて「見てくれない」なんて傲慢だとは思うけれど、そんな偽りの殻なんて破って来てほしいと願うのはまだ私の未熟で子供で甘えたな部分だろう。
こころの扉はこじ開けられる時こそ頑なに閉じるというのに。