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呪いの茅場

狂楽の声、白き少女を疎んだ者は白き時に裏切られ、闇の中へと屠られる



案内人は正しき道を歩むとは限らず、道を違えた少女の罪は、無垢がゆえに

 ――――そして、2日後の深夜。




「村長……た、大変だ。こ、子供たちが……つ、次々と!!」

「こ、これは一体どういう……?」


 昨日までのお祭り騒ぎとは一転し、また別種の騒ぎが村中で起こっていた。今まで元気に走り回っていた子供たちが、次々と倒れていった。

 まずは体の小さな2歳の男の子。村一番の狩り名人がやっと授かった長男で、いずれは父親同様様々な獲物を捕らえて村に貢献してくれるだろうと期待された子だった。

 次に倒れたのは4歳になる女の子。村で織物を生業にしている女の娘で、本人も織物について少なからず才をちらつかせる有望な子だった。

 バタバタ、バタバタと、小さな子供から次々と体の力が失われ、倒れていった。そして、頭や胸を押さえてのた打ち回った後、口から大量の血を吐きだして死んだのだ。

 子を失い泣き叫ぶ母親。自失茫然として使い物にならない父親。そうしている間にも、また子供が倒れた。

 村を包むのは喜びの喚起でも酒の香りでもない。悲痛な叫び声と、咽返るような血の匂いだった。


「ちくしょう……一体、一体どうして子供たちが!?」

「――――そうだ、ジャック!! ジャックはどこに行ったんだ!?」


 1人の男が、思い出したかのように彼の名を叫び始めた。かぼちゃ頭の、賢い青年の名前を。

 彼なら、この事態を何とかおさめてくれるだろうと、期待をしているのだろう。


「くくくっいやぁ、凄いことになってるねぇ」


 そこへ、この惨状とは似つかわしくない声が聞こえてきた。

 彼、ジャックは瞳の奥を青い焔で爛々と輝かせながら、村の道を飄々と歩いてくる。

 村の大人たちはその姿を見つけると、何も考えずに彼のもとへと急ぎ、縋り付いた。


「おやおや、みなさんおそろいでどうしたのかなぁ?」

「た、頼む。子供たちを助けてくれ!!」

「村の子供が急に倒れて死んでいってるの!!」

「お前なら何とかできるだろう。どうにかしてくれ!!」


 それぞれが口々に囃し立てる中、ジャックは何も言わずにそれらを眺めているだけだった。いや、大人たちには視線すらやっていなかったのだ。彼が眺めているのは、今なお苦しみ続け、そして旅立ち続けている村の子供たち。

 その光景を見ながら、彼は満足そうにうなずいているだけだった。


「くくく……ハッハッハッハッハッハ!!」

『…………え?』


 悲痛な声を上げるわけでもなく、解決策を導いてくれるわけでもなく、ただただ愉快そうに笑いだしたジャック。村人たちはようやくそのことに気づき、言葉を失ってしまった。


「ん~、ようやく効果が出たみたいだね。ははっ、いいことを教えてあげる。僕が子供たちにあげていたのは、ただのお菓子じゃないよっ。それを……ぷぷっおいしいおいしいって食べるものだからもう可笑しくって可笑しくって」


 身を捩り、腹を抱えて笑い転げる。そして、村人はようやく理解した。彼が、子供たちにやったお菓子には、毒か何かが入っていたのだと。


「て、てめぇよくも俺の息子を!!」


 ガタイのいい男が殴りかかろうとするが、ジャックはおよそ人間のものではない速さで移動し、拳は宙を切る。

 沈みかけた月を背に受け、民家の屋根に降り立ったジャック・O・ランタンは怪しい笑みを浮かべており、闇の化身とでも思える光景だった。


「くそっ降りて来い!!」

「罪もない子供に、なんてことを!!」

「ぶっ殺してやる!!」

「――――あらあら、知らない人からお菓子をもらっちゃいけませんって、みんな小さいころに親から聞かされなかった?」


 村人が高い所へ上ったジャックへ罵声を浴びせる中、やけに通る女性の声が聞こえてきた。

 彼らの背後。深夜の暗がりの中、村のすぐ近くの茂みの闇へと視線が集中する。


「それに、この村は“普通の”人間以外は認めないんじゃなかったかしら?……くすくすくすくす」

「お……お前、は」

「お久しぶりね、村長」

「ひっ!?」


 そしてその茂みの中から、彼女が現れた。透き通るような白い肌や白金の髪はそのまま。しかし宝石のようだった赤い瞳は血のようにどす黒く、そして何よりも村人たちの恐怖を煽ったのは、その身に纏う蠢く闇。

 妖艶な笑みはおよそ純粋な乙女には程遠く、まるで現世のものとは思えなかった。


「お、お前はヴィリアリア……い、生きて…………?」

「うふふ、ずぅっと聞いてたわ。貴方たちの耳障りな宴の騒音。1週間も、ずぅっとずぅっと。夜だというのにはしゃいじゃって……ずいぶん楽しそうだったわね」


 ゆっくりと、1人1人顔を眺めながら、詩を紡ぐかのように話す少女。目が合ってしまった者は何故だかわからぬまま恐怖に囚われ、言葉を発することができなかった。

 そして全員の顔を見終わると、最後に村長に視線を向け、にっこりと笑った。


「だから私ね、いいことを思いついたの。きっと貴方たちも気に入る、とってもいいこと」

「い、いいこと?」

「そう。貴方たち、ここ1週間、昼間は寝て、夜は宴の生活だったでしょう?だからね、夜に眠くならないようにしてあげる。その代わり……」


 にやり、と三日月を張り付けたような恐ろしい笑みに変わった。


「お日様に会えなくなっちゃうけど、しょうがないわよね?」

「い、一体どういうことだ!?」

「今にわかるわよ。うふふふふふふふふ」

「ひっ!?」

「う、うわあああああああっ!!」


 少女が右手をかざすと同時に、彼女を取り巻いていた蠢く闇が動き出す。茂みからも大量の闇が飛び掛かり、あっという間に村人たちにとり憑いた。


 痛み、苦しみ、恐怖。様々な叫び声が響き渡るが、少女とジャックは心地よい音楽を聴いているかのような安らかな表情。

 それほど長くない時間が過ぎると、闇が風に吹かれるように退いていく。あとに残されたのは、少女と同じような真っ白になった村人たち。しかし、彼らのそれは少女のような美しさは一欠けらも見当たらぬほど醜く、彼女とは別の意味で人間とは思えない姿だった。


「ううぅ……」

「ああぁぁ……」

「うふふ、いい恰好ね。まるで怪物みたい。……ほら、そんなところで寝転がってていいのかしら、もうすぐ夜明けよ?」


 それと同時に、少女の背後から太陽が昇り始めた。暖かな日の光が見え、一瞬だけほっとする村人たちだが、彼らは忘れていた。




 少女は確かに言っていたのだ。「お日様に会えなくなっちゃう」と




「ぎゃああああああああああああああああ……!!」


 彼らの最後列から悲痛な叫びが聞こえてきた。そこには、先ほどジャックに殴りかかろうとしていたガタイのいい男が苦しみのた打ち回っていた。

 肌は真っ赤に腫れ上がり、油の引いていない熱した鉄板に肉を置いて放置したような臭いがする。太陽の光で、体が焼けているようだった。


「いやあああああああ!!」

「うわあああああああ!!」


 それをきっかけに村人たちは我先にと近くの家の中へと逃げ出していく。それでも勢いよく昇っていく太陽の速さに勝てず、幾人も地面に倒れた。

 そして気が付けば、半分以上の村人が地面に黒焦げとなって倒れ臥し、残った者たちも、家屋の中で今後も付きまとい続ける恐怖に震え続けていた。

 ジャックが民家の屋根から飛び降り、音もなく少女のもとへと歩み寄る。


「どうだい、今の気分は?」

「うふふ、最高よ。ジャック、今私、とっても幸せよ。だって私は、あの人の仇をとれたんですもの……アーハッハッハッハッハッハッハッハ!!」

























 少女の笑い声が響く中、村のはずれにある茅場は朝日を浴び、その白金の体に赤の光を燃やし続けていた。

こんなところからはじめまして。

初めて童話風の物語を書いてみましたが、いかがだったでしょうか?


自己満足な作品であるので、わけのわからない言い回し等が多かったと思いますが、我慢していただければと思います。


こんな作品でも、少しでも楽しんでいただけた方がいれば幸いです。


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