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ヴァンパイア/ジェネシス(勘違い)  作者: H&K
第六章 黄の愚者編
110/121

第108話 「ファンとストーカーは紙一重」

お話自体は結構前からできていたのですが、何故か寝かせていました。

そろそろ良い具合に熟成したと思うので、投稿します。

 VG108


「俺はお前のことをそれなりに買っているが、まさかその腕を切断せしめるとはな。やはりあの男は一つの頂点に届いているのかもしれない。喜ばしい限りだ」


 地竜が牽く騎竜車の中には人影が二つ。聖教会の修道服に身を包むクリスと、器用に黒い甲冑のまま座席に座り込んでいるアキュリスの二人だった。アキュリスの甲冑の頭部はじっ、とクリスの失われた右腕を見ている。


「——さすがは狂人の太陽の毒と言うべきか、私の声を持ってしてもくっつかなかった。防腐処理だけは可能だったから、斬られた右腕が即座に腐敗することはないだろうが、それも時間の問題だろうな。呪いを上書きできる何かがなければ私は隻腕のままだ」


 言ってクリスは眼前のテーブルに置かれた布の塊を見下ろす。赤黒い血の染みを覗かせているそれには彼女の切り落とされた右腕が収められているのだろう。

 アキュリスもその右腕を一瞥してから徐に口を開いた。


「なんだったか……、あの機械ばかり作っている都市、ああ、シュトランドラウトか。そこで義手を見繕うのは駄目なのか?」


「シュトラウトランド、だよ。だがその宛ても私自ら捨ててきてしまった。無い袖は文字通り振れないというわけだ。それにこういった手合いはお前たちロマリアーナの方が良く進んでいるだろう?」


 クリスの皮肉めいた言葉にアキュリスはからからと笑った。


「確かに人造吸血鬼の技術を用いれば容易に再生は可能だろう。だがお前の右腕はそれで代替できるほど安くないはずだ。さっきも告げたが俺はお前のこともまた評価している。あの狂人ほどでないにしろ、お前もまた『原点』から血を分けた戦える女だ」


 人造吸血鬼の腕と機械の腕、なにがアキュリスの評価を分けているのか見当もつかなかったが、彼からの賛辞にクリスは溜息で返した。


「その話はやめろ、と随分前に告げたはずだ。私はもう、お前たちとは違う。でなければこんな茶番劇に手を貸すことなど無かった。私は私の人生を生きているからこそ、お前たちの莫迦な行いに付き合っているのだ」


 辛辣だねえ、とアキュリスは首を横に振る。


「ま、亜種とは言え『原点』に限りなく近い狂人と戦えるのならば何でも良いさ。彼は俺の遙か想像の彼方にいた。もうあの領域に足を踏み入れているのは望外の喜びだ。お前も腕さえ残っていればもう一度挑戦できただろうに」


 アキュリスの言葉にクリスは「方法ならばある」と短い言葉を零した。

 そして脇に静かに置かれていたネクロノミコンを残された腕で手に取ってみせる。


「『冒涜の書』か。サルエレムで見つかった聖遺物の一つだ。聖教会が保管しているのは『聖者の胎児』と『パラケルルスの魔剣』、そしてそれだと聞いたことがある。我がロマリアーナですら一つも保有していない太陽の時代の忌み子だな」


 興味深そうに本を眺めるアキュリスを尻目に、クリスは器用に片手でページを捲り始めた。


「こいつは使用者の魂を贄に魔の力を増幅させる能力がある。それ故に聖教会の特攻兵器として用いられてたわけだが、そんなものこいつの一側面でしかない。誰もが皆、これが『本』であることを忘れている」


 クリスがあるページで手を止めた。アキュリスが身を乗り出してページを確認してみたが、何かしらの文字列がびっしりと書き込まれている様子は窺えても、内容を理解することは到底出来なかった。


「——やめておけ。覗き見は。それをした聖教会の愚かな人間たちは全身の穴という穴から血を吹き出して死んだのだから。意味を正しく理解できなければ太陽の毒以上の劇物だよ、これは」


 クリスはそう言いながら奇怪な文字列に視線を走らせていた。それはただ眺めているというものではなく、自身に必要な情報が刻まれている部分を見つけ出そうとしている作業そのものだった。


「あった。これか。『bjys@い(4l)h 0t@4w@kt0l』」


 そのときクリスが何を言ったのか、アキュリスは全く聞き取ることができなかった。だが自分たちとは全く違った言語体系からなる発音が成されたことだけは理解ができる。

 そしてその文字列がきちんと意味を成しているものだったというのも、クリスに生じた変化から察することができた。


「……ほう。魔の力に類似したもので構成された腕か」


「ああ、ティンダロスの猟犬と似たような原理だ。もう少しリソースを注ぎ込めば独立稼働する漆黒の生物として命を吹き込むこともできる。まあ当面はこれで何とかなるだろう。剣くらいは握れるはずだ」


 クリスが脇に立てかけておいた剣を手に取った。残された左腕ではなく、切り飛ばされた筈の右腕によって。彼女の右腕にはいつかβがそうだったように、黒い不定形の何かによって構成された義手が生えていた。


「本当に万能なのだな、お前という奴は。出来ないことの方が少ないだろう」


 アキュリスの言葉にクリスは至極つまらなさげに口を開く。


「馬鹿言え。本当にやりたいことは今も昔も出来ないままだよ」


 

01/



 会場の熱気は俺の予想の数倍上をいっていた。

 一度コロッセオに足を踏み入れてみれば、滝のような歓声が観客席から闘技場へと降り注いでいる。

 以前訪れたときも凄まじい熱気ではあったが、今のこれは遙かにそれを上回っているように思えた。


「——白の愚者という絶対強者が消え、ボクや君も街から逃げ出したからトーナメントの勢力図ががらりと変わったんだ。具体的に言えば群雄割拠状態か。あらゆるチームが入れ替わり、立ち替わりで鎬を削っているらしい」


 少し席を外していたレイチェルがコロッセオの外縁で営業している屋台からいろいろとつまめるものを買ってきてくれた。シュトラウトランド特有の酸味がきいた味付けの食べ物たちがいたく懐かしい。

 片手で食べるのを少し難儀していたら、なんと手ずから食べさせてくれることもあった。

 本当に面倒見が良すぎて感動ものである。


「ん、この肉詰めは美味いな。あとでイルミやエンリカたちに買って帰ろう。ヘルドマンも少しだけなら食べられるかな」


 二人してぼんやりと競技の行く末を見守る。おそらく人気のあるチームだったのだろう。オレンジの外装甲を纏った細見の魔導人形が競技場に現れたときには割れんばかりの歓声があちらこちらから吹き上がっていた。

 相対するのは黄銅色の魔導人形。かなりの重装甲に包まれた重量とパワーを活かしたタイプだ。手にしたランスはいつかの白の愚者ほどまでとはいかないが、なかなかの威圧感を誇る一品だった。


「あれが今のトップランカーたちだ。戦績は五分五分。両極端なスタイルをしているせいか、人気を二分している感じだな。ボクたちがいたときにはいなかったタイプだ」


 競技開始のブザーが鳴る。

 あの場に立っていたときはこの音が闘争の合図だった。確かイルミを電池代わりに魔導人形に接続して、今も装着しているチョーカー経由で操作していたっけ。——今考えると人権とはなんぞや、と考えさせられるくらいには酷い戦い方だったな。

 でも、たぶんあの一時の戦いを俺は間違いなく楽しんでいた。


 オレンジの魔導人形が前へと跳んだ。俺がそうだったように先手必勝の動き。

 流石にヘルドマンが用意してくれた特製の魔導人形ほどではなかったが、それでも会場にいる殆どの人間が目で追えないくらいの凄まじい速度だった。


「おっと、前評判を覆しあの子の圧勝か。いつもはそのまま組み合ってからのともすれば泥仕合のような殴り合いになると聞いていたのだが、今日はいつもよりも数段速かったようだ」


 黄銅色の魔導人形の装甲の隙間に剣が突き立っていた。恐らくそれが戦闘不能の判定をもぎ取ったのだろう。勝者を告げるアナウンスがコロッセオに鳴り響いたのに少し遅れて、場内が揺れ動かんばかりの歓声がそこかしこから沸き立った。


「まあでも想像通りと言えば想像通りなのか」


 レイチェルはある程度買ってきた食べ物たちを胃に収めると、「ちょっといこうか」と席を立った。


「どこへ行く?」


「さっき勝ったチームの控え場さ。実はあそこのチーム、ボクが現役だったときの後輩のチームなんだ」


 成る程、確かに全盛期は白の愚者を除いてここで頂点に立っていた彼女のことだ。幅広い人脈がまだまだ残されているのだろう。

 トーナメントのトップランカーが後輩というのも、彼女の現役時代のすさまじさを窺い知ることの出来る側面の一つである。

 そしてその旧交を温めてくると言うのならば、それを邪魔立てすることもあるまい。


「? 何をぼんやり座っているんだ。君もとっとと行くぞ」


 はえ? なんで? そんな話だっけ?

 まだ屋台の食べ物を少し残していたが、立ち上がったレイチェルに再び引っ張られて観客席を離れる。

 まだ人々がひしめいている客席外縁を抜けて、コロッセオの周辺城壁を少しずつ降りていった。階段を一つ降りたらその目の前に次の階下への階段が繋がっており、最外縁をぐるっと回って最下層へと進む感じだ。以前は競技参加者の控え室から直接下へと降りていたからこんな構造になっているのを今更ながら知った。


「エンリカを通じてアポイントメントを昨日取ったんだ。そしたら今日の試合後に来てくれと返答があった。——ボクはその後輩に君は会うべきだと判断した。理由はまあ、会ったらわかるだろう」


 最下層には数分後に到着した。途中、関係者以外立ち入れない旨が書かれた関所のようなものがあったが、何とレイチェルは顔パスだった。それどころかサインをねだられて「またあとでな」とファンとスターのやり取りすらこなしている始末である。

 去ってなお、多大なる影響力を残しているレイチェルの偉大さをまざまざと見せつけられている形だ。


「思ったよりも人が多いな。余り絡まれると時間が勿体ない。急ごう」


 最後に辿り着いたのはコロッセオで働いているであろう職員たちがせわしなく動き回っている場所だった。いつかエンディミオンでも見たように、石造りのくせにやけにだだっ広い空間だった。おそらくここも太陽の時代の遺構がそのまま残されているのかも知れない。


「あっちだな。あのアーチの向こう側が確か控え場だったはずだ」


 足を進める途中、やはりと言うべきか、かなりの数の職員がこちらを見ていることに気がついた。一瞬、ここでスターを張っていたレイチェルのことを見ているのかとも思ったが、どうやら俺も相当数の視線に晒されていることに気がつく。

 まあ白の愚者を殺した疑惑があって、結構滅茶苦茶な戦いぶりをしていたから悪目立ちをしているのかもしれない。


「急な申し出ですまなかった。こうしてボクたちと会ってくれることを感謝するよ」


 数ある控え場の一つにそれ——オレンジ色の魔導人形が佇んでいた。久方ぶりに眼にした競技用の魔導人形はかなり大きく見える。ゴリアテですらそれなりに巨体であるというのに、ここのものはそれをもう二回りほど大きくした形だ。

 そしてそんな巨人の足元に、陶器に入った水分をごくごくと喉を鳴らしながら身体に収めている小さな人影があった。


「久方ぶりだな、キスカ。素晴らしい戦いぶりを見せてくれた」


 キスカと呼ばれた人影はレイチェルの姿を見つけた瞬間、陶器の器を魔導人形の足の甲に放り投げた。そして慌てて口元を拭いつつ直立不動で挨拶を返す。割れた陶器の欠片と中身が周囲にぶちまけられているが、それは気になっていないようだった。


「お、お久しぶりです! クリムゾンさん! シュトラウトランドに帰ってこられているとは! まさかトーナメントに復帰されるつもりなのですか!」


 キラキラとした真っ直ぐな瞳だった。この世界でそんな綺麗なものを見た記憶はもうしばらくない。レイチェルはそんな美しいものを真っ直ぐ受け止めながら「あはは」と軽く笑い声をあげた。


「全部が終わったらそうしてもいいかもしれないな。けれどもまあ、今はやらなければならないことがある。そしてその第一弾としてほら、君に会わせたい人間を連れてきた。これがあの黒い魔導人形に乗り込んでいた男だよ」


 じっと二つの瞳に見つめられた。栗毛の髪をレイチェルのように後ろで纏めた、可愛らしい女性だった。ともすれば今のイルミよりも幼く見えかねない、そんな体躯。けれども全身から仄かに感じさせる上質な魔の力のお陰か少しばかり実存在よりも大きく感じられる。


「あなたが、黒い魔導人形を操って、白の愚者様の魔導人形と相打ちになった方なのですか?」


 あの時、どうやって引き分けに持ち込んだのか俺は覚えていない。クリスやエンリカの弁をつなぎ合わせて、暴走状態になって何とかした、くらいの認識だった。

 だからだろうか。彼女の問いに正直答えあぐねてしまう。ただはてまてどうしたものか、と口を噤んでいる俺に助け船を出したのはいつも通りレイチェルその人だった。


「その通りだ。見ての通り口下手な男だが実力は本物だぞ。ボクが許可するからほら、やってみればいい」


 瞬間、キスカの影がブレた。こちらがまともに認識するよりも先に、咄嗟に左腕が動いていた。側頭部に差し出したそれにはキスカの右足がぶつかり合っている。彼女がハイキックでこちらを蹴り上げたと理解したときには、思わずその足を取って床に彼女を打ち据えてしまっていた。

 不幸中の幸いだったのはぎりぎり力を抜くことが間に合ったことだろうか。

 ——怪我はしていないだろう。多分。


「はは、凄いですね。いつ投げられたのか全くわかりませんでした。私、すばしっこさには自信があったのですけれど、まだまだ届いていないと言うことなんですね。精進します。有り難うございました」


 背を摩りながら立ち上がったキスカが直角に頭を下げた。何が何だかわからないままに戸惑っていると、レイチェルがフォローするように口を開く。


「白の愚者とお前の戦いを見てから、この子は君のファンなんだよ。もともとはボクに憧れてこの世界に入ってきてくれたというのにとんだ略奪愛だ。——本人の口からどこに憧れたか聞いてみれば良い」


 えと、とキスカが頬を掻く。どうやら照れているらしいことは察しの悪い俺でもなんとなくわかった。しかし何でまた俺なんかに。そこそこの成績は残したと考えてはいるが完全にヒールで嫌われ役だったろう。


「——疾さですかね。速さではなく疾さ。迷い無く強敵に踏み込んでいく勇気が私には何よりも眩しかったんです。クリムゾンさんに憧れてトーナメントの競技者になりましたけれど、あの頃は成績も悪くって、戦い方も守りに入っていてつまらなかった。そんなとき、あなたのような黒い魔導人形の戦い方を見てこれだ、って思ったんです」


 何故か少しばかり心が軽くなったような気がした。

 この世界に来て暫く、人に恨まれ憎まれ罵倒されることはもう数え切れないくらいある。誰かに感謝されることはイルミやレイチェルたちを除いて殆ど無かった。誰かを怒らせ、悲しませ、絶望させ続けてしまっている自分自身の生き方に嫌気も正直差していた。


 だけど、けれども。


「みんなはあなたのことを白の愚者殺しだの、トーナメントを荒らし回った面汚しだの滅茶苦茶言っています。でも私はそんなあなたを格好良いと思いました。自由に思い切りよく、ただ前に進むあなたの生き方を私もしてみたいです」


 ——こうしてたった一人でも希望を持ってくれたのならそれだけで救われた気がする。

 心の何処かで後ろめたく思っていた様々な出来事や感情を受け止められた気がした。


「握手、してくれませんか。私、まだまだ未熟者ですけれどいつかあなたに挑めるくらいには強くなって見せますから」


 小さいながらも暖かい手だった。恐らくこれから先、忘れようのない感覚。

 大事にしていかなければならないと、決意させてくれるに余りある大きな温もり。


















「あ、あとできればこの魔導人形にサインをいただけませんか? 乗り込み口の蓋にキスカへ、アルテよりとか描いて貰いたいんです。いや、銘を刻んで貰った方が良いかな? それにさっきの私の戦いは見てくれましたか? 踏み込みは良かったと思うんですけれどインパクトの瞬間にどうしても最後の一歩をためらってしまっている気がするんです。アルテさんはどうやってインパクトの恐怖を克服したんですか? あとそれに剣のリーチと魔導人形の間合いの取り方なんですけれど、白の愚者様相手にはかなり間合いを詰めておられましたよね。あれってご自身の間合いも殺しかねないと思うんですけれどどのような意図が? 私はアレを見切れるだけの動体視力が無いのでどうしても思いつかなくて。やっぱり見えている世界が違うんですかね。私たちと吸血鬼ハンターの人は。私も呪いを刻まれれば出来るようになるのかな。他にもあの黒い魔導人形のことなんですけれども、私たちの魔導人形と装甲の材質は違いますよね? アレって重たいんですか、それとも軽いんですか? 軽くないと相手の斬撃をいなしきれないと思うのですけれど、そうは見えないくらい重たい装甲に感じられるんですよね。あ、さっき握手して貰いましたけれどできれば片手だけでもハグしていただけませんか? 一生の思い出にしたいので。この手はもちろん、お風呂も二度と入りませんから。それにこのシュトラウトランドを出てからのお話も聞いていたいです。アルテさんはきっと名のあるハンターさんでしょうからいっぱい冒険譚をお持ちですよね? 私この世界に飛び込むまではそういった本や物語を読むのが好きだったんです。今までの人生で一番苦戦した相手って誰なんでしょう? クリムゾンさんですか? それとも白の愚者様ですか? まさかとは思いますが他の愚者様たちとも戦っていたりしますか? だとしたらどの愚者が最強なのでしょう? やっぱり赤の愚者様ですか? 赤の愚者は世界最強と皆思っていますけれど何が最強でしたか? 単純な強さ? 魔の力の量? それともアルテさんのように速度なのでしょうか? 速いとしたらアルテさんとどちらが速いのですか? もしかして勝っちゃったりしてます? それならアルテさんのトレーニング方法を是非とも教えて頂きたく。私も毎日シュトラウトランドの外周を走ったり、自重を使ったトレーニングはしているのですがやっぱり足りないですよね。追加するとしたらどのようなものがいいと思いますか? あと私、見ての通りちんちくりんなんですけれど、クリムゾンさんと比べてどうでしょう? 何やらお二人はただならぬ仲に見えますが、私にも付け入る隙ってあるのでしょうか? 趣味嗜好の棲み分けは出来ていると思うんです。大きいばかりだと胸焼けしませんか? あ、でもお連れのもう一人の方は私と同じような感じでしたよね。ならサブでいかがでしょう? あ、でもアルテさんほどになるともう女性だとか興味が無いのかな? 戦うことが至上かも知れないですよね。でしたら私と魔導人形を使って一戦はどうでしょう? まだまだ足元にも及ばないかも知れませんが、一矢くらいなら報いることができるかもしれません。いえ、むしろ完膚なまでにボコボコにしていただけると幸せかもしれません。きっと気持ちいし。あ、いえ、ごめんなさい。ちょっと不謹慎でしたね。まあとにかくご指導ご鞭撻を頂ければとっても嬉しいです。さっき投げられたのもとても良い経験になりました。できたら今この場でもう一度投げて頂けませんか? さっきは最後に手加減して頂いてすこし嬉しかったんですけれど、やっぱり全力も味わってみたいです。大丈夫です、ここの医療スタッフは治癒の術式に長けているので背骨を粉々にされたくらいなら大丈夫です。むしろ地面に叩きつけてからストンピングくらいしてもらうのがいいかも。いいですか? お腹のここを踏んで下さいね。決して消えない傷痕が残るくらいに。優秀な術者ならば傷を残したまま治せちゃいますし……」


 

 う、うーん。心は軽くなったけれど、他のところでプラマイ大幅マイナスかなこれは。

 おーい、レイチェルさーん、にこにこしながら少しずつ距離を取らないで。

 こっちに戻ってきて下さーい!

 

 あっ、ちょ、待て! 逃がすか! コラ!


 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 狂人の狂人的なファンが誕生。 正直すき
[良い点] お疲れ様でした。 ヤンデレ一歩手前なヘビーなファンですね(笑) こういう奴が少なからずいる訳かw 狂人としてトーナメント参加当時に、決勝でバーサーカーっぷりを披露しちゃったからなぁ。…
[良い点] 最後がひどい(褒め言葉)。 また楽しみにしております。
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