#6 幸せの電話帳 VI
部数は6月号と同じ500部、値段は下げて250円。
果たして利益を出すことは本当に出来るのか?
教室のベルが鳴る。試験時間が終わり、私はうんと伸びをする。
最終科目の英語が終わった。まあまあの出来かな。
テストが終わったとあって、教室内が活気に満ちている。でも私はこのまま家に帰るわけにはいかない。部室へ向かわないと。
すると、なっちゃんが突然私の肩をポン、と叩いて
「さ、最終科目だぞ」
わかってますとも。そう言って、なっちゃんの背中についていく。
「やったな」
なっちゃんを始めとするみんなが喜びを噛みしめていた。
7月号の利益は6月号の赤字分をものにしないほどの莫大なものだった。
これで学園通信編集部は生き残ることが決まったのだ。
「やったねー、奈津君が頑張った甲斐があるじゃないかー」
ゆかりも喜んでいる。もちろん私だって。
すると、部室の扉がノックされた。珍しい来客だ。そう思って開けてみると、いたのは教頭だった。
「皆さんにこれから重大なお知らせがあります。職員室へ来なさい」
教頭の声は不機嫌そうだったが、まんざらでも無さそうな様子だった。
「失礼しまぁす」
3人で職員室に入る。何故か我々は教員の注目の的になる。こんなに職員室って怖いところだったっけ?
「君達学園通信編集部はこの1学期の功績から、正式に課外活動として認められることになった。あの部屋は君達の部室だし、予算も部活運営委員会から支給される。来年度の進入部員の募集も認められる。とりあえずまずは、予算の希望票と部活動名簿を提出しなさい」
「はい、わかりました」
職員室の教員からの暖かい拍手。皆我々がしたことを全て知らされているのだろうか。
すると教頭の後ろにいた理事長先生が、
「頑張ってこの学校で誇れる学園通信を作り上げていってください。生徒達が発信する媒体のほうが、生徒達も読みたいと思うでしょう。それにどうです、取材などは楽しいもんでしょう」
「はい」
これは私が返事した。この3人の中で一番取材をしたっていう自信があるから。
「頑張ってくださいね」
優しい笑みを返してくれた。
「じゃあ、部室帰るぞ」
なっちゃんはぶっきらぼうに、でも心なしか嬉しそうに私達を呼びかけた。
「でもさ」
職員室から部室への帰り道、私は気になることがあってなっちゃんに聞いた。
「何であんなに自信を持って利益を出せるって言ったの?」
「ああ、それか」
「あたしも気になるなー」
ゆかりも便乗。
「実は1部も売れなくても利益は出たんだ。広告収入でね」
声が出なかった。そこまで広告収入でまかなうことができたなんて。
「その上、安くなった分売れ行きも伸びたからな。ボロ儲けだ」
心配事は無くなった。我々は勝ったのだ。
私たちは高校時代を、学園通信編集部で過ごすことになった。
そういえばその後、ゆかりからプレゼントがあった。
「こんなもん作ってみたんだよねー。うちの部室寂しいから、看板くらいと思ってさ」
ゆかりがバッグから出したのは、小さな木のプレート。紐がついていて、部室の扉にかけられそうだ。そのプレートには「ナツ編集部室」と一文字一文字木の文字の部品がボンドで貼られていた。
「くだらないもの作りやがって」
となっちゃんは言ったが、きちんと部室の扉に付けて帰った。素直じゃないなぁ。
「ナツ編集部室」。この部室でこれからいろいろなことがありそうだ。
そんなことを思いつつ、部室の鍵を閉めた。
短編「幸せの電話帳」
ここまでが前置きです。
ここからはこの学園通信編集部を舞台とした短い話が続いていくことになります。
これからもよろしくお願いします。




