表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

遭遇


激しい頭痛で優綺の意識は覚醒した。

もうだいぶ意識を失っていた様だ。


「ここは…?」


立ち上がり、土を払う。

優綺は昨日寝たままここに連れられて来たので、スウェットのままだ。

肌寒いことは感じられないが、靴が無いのが痛い。


優綺は辺りをキョロキョロと見回した。

鬱蒼と木が生い茂っている。

枯れ葉のカーッペット、太陽光を遮る葉のドーム。

ここは誰が見ても明らかに森だった。


「綺麗な森だな。」


優綺はそう呟くと、スウェットのポケットに入れておいたゴムで後ろ髪を束ね、ポニーテールにした。

優綺は極度の女顔のクセに、長髪を好んでいる。

サラサラとしたこの黒長髪と、並大抵の女では敵わない程の優綺の可愛らしい女顔があれば、大抵の男は惚れてしまう。

そのせいで、優綺は男に迫られた事もたまに、いや、しばしば、いや、だいぶあったがもうそれにも慣れてしまった様だ。


何も無い森に、可憐な少女<少年>が一人。


優綺はしばらくポツンと立ち尽くしていた。

しかし、それも長く続かなかった。


「なんだこの音…?」


静寂に包まれていたさっきまでの様子が嘘の様。

木々が折れる音、獣の甲高い鳴き声、爆発する様な轟音。

音は優綺よりだいぶ遠くに位置する場所で発生しているが、それでも辺りは喧騒に包まれた。

優綺の意識が弓の弦の様に、ピン、と張り詰める。


「獣がいるのか…?それも、この騒音…狼や熊じゃ済みそうもないぞ?」


じわり、と背中を嫌な汗が伝う。

しばらくすると、優綺は大変な事に気付いた。


「まさかこの音…俺に近づいてる⁉」


その時だ。

優綺の一番近くに生えていた巨木が、根元を残し、吹き飛んでいった。

バリバリと木が破壊される暴力的な音が辺りに轟く。

あまりに突然の事で、優綺はステンと転けてしまった。


何だなんだ⁉と飛び上がる優綺。

優綺は現実を目の当たりにして、声を失った。

瞳は恐怖に揺れ、身体は自然と震えてしまう有様だ。


「なんなんだよコイツ‼」


熊型の獣が、悠々と立っている。

しかし安易に熊などと生易しく表現できないそれは、恐怖をそのまま具現化した様な風貌だ。

鮫の様にギョロリとした瞳。

熊の様な体躯に、ビッチリと隙間無く生えた真紅の鱗。

そして何よりも目を惹かれてしまうのが、その両腕に生えた爪。

鋭利な刃物の様にぎらつくその爪は、長く、その獣の体躯の半分程もある。

やはり、図体もデカく、およそ体長三メートルは下らないだろう。


そして、その化け物が今、優綺の目の前に立っている。

優綺は恐怖を原動力に、震える足を叱咤し、走り出した。

バクバクと高鳴る心臓を抑え、初めて目の当たりにした"恐怖"から逃げる、逃げる。

程無くして、辺りが再び轟音に包まれた。

あの化け物が吠えた様だ。

優綺の心臓がまた、ドクリ、と心拍数を上げた。



ーーヤツが、自分目掛けて駆けてくる…‼






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ