#6‐4
第六話分はこれで終わり。
なんというか、よく人を庇って死にかける主人公だなぁ…とか書いてて思ってしまった。
本気で死ぬかと思ったけど、どうやら助かったらしい。
まあ、あの場だと防壁は間に合わないし、それ以外の攻撃も間に合わなかっただろうから、次善か次々善くらいの策だった筈だ。
「大丈夫か?」
「…なんとか、制服は血まみれですけどね」
少々ふらつくが立ち上がる。
「次の集団に行きましょう」
調子は悪いが、固定砲台役くらいなら出来ると思いそう言ったが
「氷室くん、楓ちゃん。強制連行」
「アイマム」
「はい」
氷室先輩と楓に拘束され遥と一緒にコンの背中に乗せられた。
「ついさっきまで死にかけてた重傷者が無理しない。本当だったら即病院送りの輸血が必要なレベルなんだよ?」
なんとか降りようとする俺に夏元先輩が迫って来た。
「でも…」
戦力が足らないんじゃ…そう言おうと思ったが
「いいから行く!ていうか連行。氷室くん、行っちゃって。遥ちゃんはこの子が動かないように見張ってて」
遮られた。
「あっ…はい!」
突然振られたので慌てる遥。
というか、見張りまで必要なのか?
「それじゃ、ちょっくら送って来ます」
「お願いね」
「了解。行くぞ、コン!」
それからあっという間に臨時に後方支援系の術師やら予備戦力やら指揮通信部門やらが展開する公園に運ばれた俺と遥は『動くな』と厳命されてしまった。
臨時本部付きの医術系術師に貧血以外の症状が無いことを確認されたあとは『安静に』と言われただけ。
結果、ここに居る以外のする事が無くなってしまった。
「ねぇ。聞いていい?」
「何?」
不意に遥が話しかけてきた。
やることもないので、話す位しかやれることが無いからだろうか。
「あの骨とかって、なんなの…それにあの壁みたいなの…」
…正直、困った。
テンプレート解答だと『会長に聞いてくれ』な訳だが、それだと先ず納得しないだろう。
「…壁に方に関しては、防御結界の魔術だよ。俺が作った符に遥が魔力を流し込んだから発動した。」
「…私の!?」
「まあ、会長にだって魔力があるんだから、妹である遥にない筈がないよな」
「………じゃあ、あの骨は?」
「…幻魔っていう、詳しくは判らないけど突然現れる『忌むべき来訪者』ってところか」
正直、全ての資料を目を通してもアレの存在は全く判らない。
「それじゃあさ――「うわぁぁぁぁ!!」えっ!?」
悲鳴のような声があがって、俺たちが目にしたのは公園のど真ん中の広場…救護所となった、俺たちのいる場所の至近に現れた濃紺のローブ姿の仮面付だった。
「くっ…!」
俺は体に鞭打って走り出し、何やら黒い球を周囲に浮かべ始めたそいつと背後のケガ人との間に滑り込み、防御符を三枚かざす。
放たれた黒い球と防御符が展開した防壁が接触し双方がはじけ飛ぶ。
「なんつー、バカ威力」
そうこぼしながらも、俺は笑っていた。
「だが、これならッ!」
今度は自分自身の魔力を使って編んでおいた保護用の結界(半球状のヤツ)を展開して身動きの取れない負傷者や戦闘力のない医術師の壁に廻る。
外側では急襲から立ち直った幾人かが防御や反撃の為の行動を取り始める…が、
「くっ…」
微かだが目が霞む。
原因は判り切っている。
『貧血』。
血は『魔術回路』と呼ばれる体内の魔力を循環させる器官に流していない魔力の保管場所でもある。
それを失うという事は回路に流せる魔力量が減るという事だ。
「確かに、これは即輸血レベルだったかもな…」
なんとなく回らなくなってきた頭を無理に回転させて打開案を探す。
その時だった。
突然、対峙していた仮面の術師が巨大な雷撃に撃たれて、消し飛んだ。
「助かったぁ…」
正直、防壁展開しながらの攻撃系術式の並列発動するには頭の回転も魔力も足りなかったから、本気で助かった。
雷の放たれた方向に視線を向けて、驚いた。
「はぁ…はぁ…はぁ…で、できた?」
遥が、なにやら呪符のようなモノを手にして呼吸を荒くしていた。
「は、遥ぁ!?」
びっくりした拍子に結界が解け、ついでに脱力する。
「だ、大丈夫!?」
駆け寄って来る遥。
「だ、大丈夫…それより遥、さっきのアレは…?」
「ええっと………」
視線を外しながら遥が差し出してくるのは、先ほどの札。
「これって…」
それは俺が試作して、とりあえず持ってきていた攻撃用の符だった。
「ゴメン。さっき飛び出してった時に落してったから…」
「まあ、いいよ。助かったから」
それでも、確か俺が作ったのは…『魔力放出』
ぶっちゃけるとただ魔力を破壊力に変えて撃ちだすだけの簡単なものだった筈だ。
だというのに、あれだけの雷が起こった…ということは
「遥も魔術師ってこと、か」
先輩たちに報告しないと…そう思いつつ、無理させたせいで限界を超えたらしく意識が途切れそうになっていた。
「ちょ…ちょっと!?」
なんというか、今日や厄日なのかな?
そんな気がしつつも俺は本日二度目の気絶を迎える羽目になった。
* * *
目が覚めてみれば、最早お馴染みとなった聖奏学園の保健室の一番右端のベッドだった。
「まったく、無茶するんだから」
そして、目が覚めると同時にひかり先輩のお説教が始まった。
「でも、あの場じゃそうするしかなかった訳だし、これからはもうちょっと防御上手になってね」
それでも、『どれだけ周囲が心配したのか』とか『死にかけだった』とか言われただけだ。
「で、遥ちゃんの件なんだけど。この符、雷撃の術式が組まれた物なの?」
ひかり先輩が差し出してきたのは遥に渡った攻撃用の試作符。
「いえ、『ただの魔力弾を撃ちだす』だけの術式の筈で、せいぜい牽制用程度の威力しかもってない筈なんですけど…」
それなのに、極太の雷撃を放った上に一撃で魔術師タイプ(むしろ死体使いだった気がする)の幻魔を消滅させた。
「…なんというか、今年の一年生は本当に豊作ね。まるでそれくらいの戦力がないと立ち向かえないような事が起こる前兆みたい」
「こ、怖い事言わないでくださいよ」
「でも、可能性としては否定しきれないでしょ。」
やれやれ、と言わんばかりのひかり先輩。
「ともかく、明日から遥ちゃんも生徒会の仲間入り確定だから、色々教えてあげてね」
「はぁ…いろいろ?」
「魔術の教師役、奈緒ちゃんからご指名だよ」
「えぇぇぇぇぇ!?」
本気で驚いた。
何故に俺が魔術を教える教師役をやることになったんだ!?
「だって、魔術をお札で発動させられるような術式を組みあげちゃったんだから、ね」
結局押し切られ、翌日に正式に生徒会に籍を置くことになった遥(ついでに赤城と篠田)に魔術を教える事になったのだが…
「…なんというか、出鱈目だな」
遥は『放出』の札が無ければ攻撃術系を使えず、『防御』の札が無ければ防壁展開が出来ず、逆にそれらが有れば平均以上の術が使えるという、とんでもない術師だった。
「むぅ、唯奈ちゃんに言われたくないよ」
「はいはい。とりあえず、札なしで放出できるようになるまでそれの反復練習ね」
「うぅー」
遥は一週間かかってようやっと単純放出が使えるようになった事を追記しておく。
これで、大体の主要キャラは登場が終わりました。
そろそろ、一度キャラ一覧でもつくりますかねぇ。
あの、小説のカバーの所にある簡単なヤツを。