表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Magius!  作者: 高郷 葱惟
20/67

#5‐1

更新です。


今回、やっと主人公視点に戻れましたよ。


ついでに

読者の皆さまのおかげで1000ユニーク、10000PV達成しました。


達成企画として何やろう、何時入れよう、みたいのを考えてますので『是非これをやってくれ』というのが有りましたら感想か活動報告の『第五話投稿しました』まで。


ネタと本編の整合性次第で選び、UPを持って当選連絡とさせていただきます。


とか、言ってみる

真っ白だった世界が急に色を帯び始めた。


全身にしびれるような感覚が走り、だんだんと薄れてゆく

それはまるで、忘れてしまっていた『感覚』を取り戻しているかのように。


『――回路形成(サーキット)確認(チェック)………形成完了確認(オールグリーン)同調開始(アクセス)


全身に空気と何か細い糸状の物が触れる感触

足にかかる自重と硬い床の感触


『―――回路分岐点(スイッチ)形成確認(チェック)。――身体状態(チェック)万全(オールグリーン)術式(マギコード)正常稼働(オールグリーン)


『誰かが居る』

人の気配が六つか七つ…いや、八つか?。それ以外の気配もいくつか。

彼らのモノだろう、息をのむ音が聞こえる。


起動準備(ファイナライズ)……問題なし(オールグリーン)回路(サーキット)閉鎖(クローズ)



急速に靄が晴れ始める『世界』。


同時に全身の力が抜け、言うことをきかなくなる。



でも、これだけは…言わないと…


『俺』は散々待たせてしまったのだから


「ただいま」



聞こえたかどうかは全くわからない。

急速に落ちてゆく意識は外界からの情報を拒むかのようだ…



『お帰り』

そう聞こえたのと同時に温かい何かに包まれたような感覚を感じ、『俺』の意識は暗闇に包まれた。


 * * *


「ホント、何が何だか…」


「まあ、理解の範疇の外側に有るのは確かよ。」


『繭』の崩壊から数刻後、奈緒、遥、楓の三人は藤谷家の居間で『ある人物』の到着を待っていた。


その時間を使って『知ってしまった』遥に説明が行われていた。


説明をする奈緒としては『裏』と深いつながりのある佐伯家の人間だから、教えておく必要があり良い機会だという事だろう。


「まあ、それ以上に驚いた訳だけど…」


遥はあえて『何に驚いたか』を言わない。


それもまあ、当然だろう。

『惚れたかも』と思った相手が友人の『想い人(おさななじみ)』だと、誰が声を大にして言うのだろうか。


まあ、遥自身が何度も『吊り橋効果、吊り橋効果』と自分に言い聞かせて思い違いだと思い込もうとしているからもあるのだが。


「さて、和葉さんは私が待ってるから、遥はあの二人の所に行ったら?」


「べ、べつにあたしは…」


「吊り橋効果の思い込みなのか、本気なのか、はっきりさせて来なさいって言ってるの。まあ、友情と愛情は別物って言うし」


「なな、な…」

『何故把握してる!?』そう言いたいが上手く口が回らない遥


それどころか

「何故知ってるかって?そりゃねぇ。家の場所を聞いてきたらそりゃそう思うわよ。」


あっさりと言いたいことを見抜かれ、理由まで返された。


「ほら、早く決めたら?」


「…わかった」


『何を言い合ってもこの姉には勝てない』そう悟った遥は戦略的撤退を選ぶしか無かった。




「楓、入るよ」


奈緒の元から離脱した遥は結局、楓とマナがつきそう『繭から出てきた少女(?)』の所へ行くことにした。


落ち込んでないだろうか、思いつめてないだろうか、


『自分だったらきっとそうなるであろう姿』の友人の姿を思いうかべ、どうやって慰めれば良いのか。


そう思いながらふすまを開けたら。



「マナちゃん、お疲れ様」

「ゴロゴロ」


笑顔で黒猫と戯れていた




「…何やってんの?」


遥は思わず尋ねてしまった。


「んーと、まあ、付きっきりで様子を見ててくれたから撫でてるの。」



「あ、そう」


納得するしかないのでそうとしか答えられなかった。


「…心配したあたしがバカみたいじゃない」


そう呟きながら良い笑顔で黒猫(マナ)と戯れる楓のすぐ傍らに寝かされた少女に視線を移す。


なんというか、非の打ちどころを探す方が難しいような美少女と美女の中間くらいの女性だった。

眠っている為詳しいところや性格は判らない。

すっきりと通った鼻筋とか、きりっと引き締まった唇とか、艶やかで正に『漆黒』と評するべきな、腰ほどまである長い黒髪とかに、同性の遥も僅かな時間だが見惚れてしまったほどだ。


そして視線を少しずらすと掛けられた毛布が突然隆起し、すぐにまた平坦に戻る。


「はぁ…」


たわわに実った果実を思わせるその女性の象徴ともいえる部分…ぶっちゃけると胸は見るたびに遥を鬱にさせた。


なんというか、純正品が模造品に負けてるような気になって。


それにしても…


「ホント、こうしてじっくり見てみると似てるわよね。橘高統夜と」


それでも違うところはかなりある。

先ず、肌の色が統夜よりも彼女の方が色白ながらも日本人らしい色だ。

次に全体的にちょっと角ばったイメージがあるが、こちらは丸みを帯びている。

ついでに髪の毛もこちらの方が艶やかだし。まあ写真と実物の差はあるが…

顔つきだって、統夜はどこか中性的な魅力のある顔だが、この彼女は純粋に女性的な魅力のある顔だ。


僅かな差にしか見えないが、人物像を別人足らせるには十分。


それでも、初見でパッと見たイメージは『似ている』となるのだろう。


「ま、当然じゃないの?本人だし。」


「ま、正しくはこうなる前の姿が、だけどね」

何気に爆弾を投下したマナと楓。


「へー………えっ」

余りに自然だったから流しそうになったがすんでのところで気付くことが出来た。


「本人って、どういう事?」


「んー、橘高統夜の正体が女装した誠って事?」


「……………」

遥はパクパクと口は動くが声が出ない、なんて状況に初めて陥った。


「ついでに言えば和葉おばさま…誠のお母さんが『ゆうきかずは』だし」


楓は『ま、私もこの間知ったばっかりなんだけどねー』と付け足すが遥はそれどころではなかった。


「最初は出来心だったんだけど、予想以上に似合っちゃって調子のっちゃったのよ」


そこに現れる第四の人物、誠の母、和葉。


「ふーん、随分とまた…」


和葉は布団に寝かされた少女を眺めて呟く。


「ワガママボディになった物ね。」


気持ち顔が引きつって見えるのはまあ、仕方ないと思う。


「ところで楓ちゃん、この朴念仁は何かしてくれた?」


「えっと…繭から出てきた時に『ただいま』って…」


「ふーん。じゃあ、今から襲っちゃえ」


「「えっ!?」」


爆弾発言に凍りつく遥と楓。


「幸い、相手は身動きとれないどころか意識もないんだし…ヤリたい放題できるわよ?」


何とも問題アリ、突っ込みどころ満載な和葉の発言だが、それに対する反応は予想外の所から来た。


「―――母さん。何、トンデモ発言、してんだよ」


 * * *


『――――――――ヤリたい放題、できるわよ』


覚醒しかけていた意識を完全に覚醒まで持っていったのは、そんな聞き覚えのある声による物凄く不穏なセリフだった。


「母さん、何トンデモ発言してんだよ」


慣れない体で、うまく動くか判らないが声はちゃんと出ていたようで一斉に四人分の気配が俺に近づいてきたのが判った。


ずっと寝てたせいか視界がうすらぼやけているが知り合いの顔を見分ける程度なら造作もない程度には見える。


楓も遥も、母さんも、マナも、心配そうにこっちを見ている。


「…誠、本当に大丈夫なの?」

恐る恐る、と言った風に楓が尋ねてきた。


ずっと『とーや』という苗字を基にした渾名で呼んでくる楓に名前の呼び捨てで呼ばれるのはなんだか、新鮮だ。


「ああ、長いこと寝てたみたいだが…」


それでも、不思議と悪くは無い。


「まあ、一週間以上繭の中に居た訳だけど…」


「また、心配かけたみたいだな」


それにしても、自分の声と言葉づかいの合わないこと合わないこと。

どう考えても今の俺の声はやや高めな女声。口調は男言葉のままだから違和感がかなりある。



「それじゃあ、ちょっと奈緒ちゃんを呼んでくるとしましょうか。行くわよ、遥ちゃん」


「え?ちょ…」


ずるずる、と引き摺られてゆく遥。

マナも巻き添えを食って退出させられて部屋には俺と楓の二人だけが取り残された。


「…本当に…心配したよ…」


俯く楓の声が震えていた。


「…楓、ちょっと起こしてくれないか?」


「う、うん…」


ちょっとうるんだ目になった楓の手を借りる。


正直言うとまだ体の調子がよく分からない。


ゆっくりと確認したいが、それは後回しだ。



俺にはやらなきゃならないことが一つ、ある。



起こすと言っても腕を引っ張る訳にはいかないので、当然背中側に手を入れる事になる。


コレが元の俺みたいに男ならひょいと片腕でもできるかもしれないが、楓みたいに普通の女の子の場合、両腕を使わないと難しい。



「よっこいしょっと」


そうなると、当然頭と頭が接近する。


肩に掛かる重量に少々哀しくなるが、それよりも…


「これでいい?」


そう尋ねてきた楓の、至近距離にある頬に俺は唇を押しつけた。



「ッ!?」


僅かに触れる程度だったが、楓の側が一気に熱を持ったのが判った。


「ななななな…何を…!?」


慌てて後ずさった楓は耳まで真っ赤だった。


そういう俺もきっと赤い。『顔から火を吹く』と言われる所以がよくわかった。


「…言ったのは楓の方だろ。その…『キスしなきゃ許さない』って」


恥ずかしさからやや小声になってしまったが、十分聞こえたみたいで楓は「あ」という微かな声をこぼした。


「聞こえて…たの?」


「…一応な。まあ、今は同性だからノーカウントって事でも…」


そう言ったら楓は顔の赤さが一気に引いていった。


「『今は同性』って…もしかして…自分の体の事…」


「ああ、判ってる。」

自分の体がどんな状態なのか、よく分かってる。

詳しい、細かい確認は取って無いが自分がどんな外見になっているか位は理解している。


いや、不思議と理解させられているというべきか…


あとは『こう』なる前から女になっていたから予想以上に抵抗が少ないのかもしれない。


「だが、俺は俺だ。どんな外見であろうと」


「…うん、そうだね!」


そういう楓の目じりには涙が溜まっていた。




その後、会長が母さんと遥、それにマナに連れられてやって来て、遥が楓にライバル宣言したり、楓がそれを受けて立ったり、母さんが目を輝かせてたり、会長が『女子部に転入する?』とか言い出したりといろんなトラブルが起こった。


が、そんなあわただしい雰囲気が俺に『戻って来たんだな』という実感を持たせてくれた。



…さて、さしあたって考えなきゃならないことに専念してしまおう。





それはすなわち―――『今日の夕飯、どうしよう』だが。


【感想返信コーナー】

りい様


感想ありがとうございました。

早めにコメントを返そうかと思いましたが、ネタばらしになってしまうので今日まで待たせてしまいました。


実際のところ、顔立ちとかのヒントは出しても基本的な部分は読者の皆さまのイメージです。

キャラクター像は読んでいらっしゃる方々の数だけある、と言う事で。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ