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Magius!  作者: 高郷 葱惟
2/67

#1‐2

あさ、おきたらへやになんかいた。




















訂正。

朝、起きたら空中に中学生くらいの女の子が漂って寝ていた。

ご丁寧にオレンジのパジャマを着ている、ボブカットで中々かわいらしい。



…が、問題はそこじゃなくてその漂う女の子(らしきもの)には見覚えがある。

………俺の背後騒霊ズの一人だ。


遂に『実体』を持ちやがったのか?


……実体を持つ幽霊って、幽霊に分類出来るんだろうか…


とりあえず、俺は見なかったことにして学校に行く支度をし始める事にした。



俺は一人暮らししてるから、朝飯から弁当ほか家事一切は自分でやらなきゃならないから、やるべきことは少なくない。


ま、家事は得意だから問題はないんだけどな。



『…んにゃ――』


………面倒だし気付かれる前の離脱を脳内会議で決定。



ガラガラガラ…かたっ


俺は少々慌てて部屋(畳間だ)から離脱し襖を閉じる


『んにゃー………おおっ!?実体が戻った!?これもしかしてマナちゃん完全復活!?いやっほーい―――あれ?なんか魔力の供給ラインが通ってる?ってことはあたし精霊じゃなくて使い魔化した?』


なんか物凄く陽気な声が部屋から聞こえてきて、頭が痛くなった。


つーか、事情を説明してくれ。背後騒霊が精霊とか使い魔とかって、そもそもで『精霊』とか『使い魔』ってなんだよ…


その少し後、着替えに戻らなきゃならない事に気付いた俺は諦めて部屋に突入した。




したら、『びくっ!』と擬音をわざわざ口で言ってくれた、霊の浮遊少女は俺の部屋のタンスを好き勝手に掘り返していた。


「………えっと、きみが御主人(マスター)?」


俺は怒りでふるふると振るえる手を押さえつつ、その元幽霊の少女の襟首をつまんで部屋の外に放り出し「ぎにゃっ!?」さっさと着替える。


壁に掛けてある聖奏の制服(一般的な学ランだ)に上着だけ残して着替え朝食と弁当を作るべく台所に向かう


「きゅー」


途中、廊下で目を回してる少女を見なかったことにして。




で、さっさと弁当とみそ汁を作りを終え、弁当の粗熱を取る間に朝食を―――


「いただきます」


ずずー


「ちょっとちょっとちょっとちょっと!あたしの扱い酷くない!?ネコみたいに『ぽい』ってされたの初めてだよ!?」


丁度食べ始めた時、廊下で撃沈していた少女が『ぷんぷん』とか言いながら文句を言ってきた。

投げ捨てた張本人が言うのも何だが、額と鼻の頭のところがちょっと赤くなってるから頭から床にダイブしたらしい。


「………とりあえず、事情を説明してくれ。俺はごく普通の一般人なんだ。『精霊』とか『使い魔』とか言われても判らん」


「あるぇ?まあ、あんだけ魔力ダダ漏れにしてるから変だなとか思いつつエネルギー補充にキミを使ってた訳だけど」


「おい」


「じゃ、自己紹介ね。あたし、元精霊でキミの魔力をちょろまかして完全ふッかーつを遂げた使い魔のマナリアミュネサリル。」


「あー、はいはい。マナね」


「物凄い省略!?でもなんかしっくりきた」

とりあえず俺は箸を休めずにその自称精霊で自称使い魔の自己紹介を聞くことにした。


「で、細かいとこはあたしも知らんからどっかホン投げといて、実はあたしとキミの間に魔力の受け渡しをする回線(ライン)が出来てるんだよね。」



「…で?」


「つまり、あたしはキミから魔力を貰ってこの身体を維持してる訳。まあ精霊は精神エネルギーみたいのを貰う訳なんだけど…とりあえず、そういう『主から魔力をもらって活動する』存在を使い魔って言うんだ」


………とりあえず判ったことが一つ。


「お前…説明、苦手だろ」


「………うん」


項垂れながら浮遊少女は肯定した。



「ごちそうさま。……とりあえず、お前が普通の人間じゃないって事は解った。なんかを持ってかれてるの感じるしな」


「はー、理解力の高いマスターでよかった。…あれ?マスター、何処行くの?」


さっさと流し台で軽くゆすいで使った茶碗やらを食器洗浄機に入れてスイッチを入れ、粗熱のとれた弁当を片手に部屋に戻ろうとした時に呼び止められた


「…学校だよ」


「ほう、学校。」

マナがオモチャを見つけたみたいに『ニヤリ』とした笑みを浮かべるので


「お前は留守番な。来たら面倒事が増える」

とりあえず釘をさす。

そりゃもう、問答無用の情け容赦無しで。


「お前じゃなくてマナ!来ちゃダメってなんでよ!」


「…お前はうちの学校の生徒じゃないだろ?部外者は入れないの」


「だからお前じゃなくてマナって呼んで!大丈夫だよ。見えないようになれるし」


そう言って目の前から消えるマナ


一応、本当に見えないようになれるらしい。


この分だと、延々と続きそうな気がした。

遅刻は勘弁してほしいので妥協点に落ち着ける


「……わかったよ。ついてくる分には構わないがうるさくするなよ。あと騒ぎを起こすな」


「はーい」


元気に返事だけが聞こえてきた。


…これ、マジモンの怪奇現象じゃないか?


とか思いつつ俺は部屋に戻って上着と鞄を拾い、学校に向かう事にした。


頭上で『へー』とか『ほー』とか『わきゃー』と言いながらなマナを放置して


 * * *


昼休み、俺は中央棟にある生徒会室に向かっていた。


うちの学校、聖奏学園はなんとも不思議な構造をしている。


まず、男子と女子が別だ。『女子高と男子高を無理矢理くっつけた構造をしている』と言えば判り易いだろうか。


そして、男子と女子で校舎が別になっていて、女子が本校舎、男子がボロい急造校舎(プレハブ)。どっちも四階建てで下半分が中等部、上半分が高等部になっている。

その間に共用施設(職員室とか保健室、講堂、部室、図書室など)が入った中央棟があり一階と三階でそれぞれの校舎に繋がる渡り廊下がある。

おそらく、上空から見れば歪だが中央に箱の入った『H』字に見えるように校舎が配置されている筈だ。 

ちなみに南側が正門とエントランス、北側には校庭があり、プールは存在しない。(そのせいで何人もの同級生(バカども)が血涙を流してた)


ちなみに、生徒会室も中央棟最上階の六階に入っていて、そのフロアは用が無い限り(基本的に生徒会による呼び出しが無い限り)立ち入らないという暗黙の了解がある。


中央棟の屋上は基本的に立ち入り禁止だから用もないのに最上階に行くなんて事もないんだけど。



三階から六階まで階段を上り(エレベーターは運悪く下に行ってしまった)六階フロアに足を踏み入れた時、マナが不可視化を強制的に解除された。


「あれ?」


来る道すがら、マナからは『精霊』についての講釈を受けた。


言う事をうのみにすれば、精霊とは『意思を持つエネルギー』らしい。

その体は高密度のエネルギーの塊で、ちょっと薄くしてやれば人間の目には映らない。これが不可視化のからくりらしい。


実際、マナは精霊ではないが元は精霊なので大体一緒と考えていいらしい。


…それを考えると、この校舎の六階には『強制的にエネルギーを凝縮させる何か』が仕掛けてある事になる。


てか、一介の私立高校にそんなことする必要があるのか?


「………あれ?」


そして俺からはどんどんと『何か』が吸い上げられてゆく。


なんでだ?


がっくり、と膝をつく


「あれ?マスター、かなり死にそうな顔してるけどだいじょーぶ?」


「………大丈夫に見えたらお前の目は異常だよ」


「あ、そんだけ減らず口叩けるなら大丈夫だねー」


「………んな訳あるか………」


だんだんと酷くなる倦怠感。


なんとか背後を見ようとしたら背後騒霊ズがみんなしてうっすら実体化し始めていた。



ちーん


エレベータの到着音



「さてさて、例のヤツはどんなヤツ…って、おいおい」


男子部の先輩がエレベーターから出てきたところで驚いた

まあ、俺だってエレベーター降りてすぐに誰かうずくまってれば驚くと思う。


「お前、その背中のはどうしたんだ?」


「………昔っから背後霊みたいのがいっぱい居たんですけどね、この階に入ったら皆して実体化する為に俺からいろんなもん引き上げてるみたいで」


「…ひい、ふう、みぃ………随分と沢山いるな…とりあえず会長に連絡だな。もうちょい耐えとけ」


ずるずる、と見えない何かに引き摺られて生徒会室に放り込まれ、突然吸い上げが止まりなんとか死にかけの状況から復活することが出来た。


『ちっ…』


おい、そこの背後騒霊ズ、舌打ちスンナ。


「いやー、まいったねー。確かあたしが十三柱目で現在最古参だから…何十柱いるんだろ…」


「いや、それ確実に干上がるから。」


マナの発言がすっごく不穏だ。

それって俺の知らない間に十二人もの精霊が俺からいろんなモノ吸い上げて復活したってことでしょ?


「マスターの魔力は『透明』だから精霊も『自分を変える』事無くいけるんだよ。まあ、あたしは大分弱ってたから根本からマスターの魔力で構成されたも同然だけど」


だから使い魔化しちゃったんだよー と朗らかに笑いながら言うマナ。

笑い顔は可愛いのは認めるけど、かなり困る。


ガラっ


「あら、もう来てたの。まあ、いいわ。事情聴取させてもらうわよ。啓作、調書速記よろしくね」

大分復活してきたところで、生徒会長が現れた。



「うぃっす。ワードでいいですよね」


「読めれば問題ないわ」


「了解」


「それじゃ、こっち座って。…正直に話してもらうわよ」


一瞬、会長の目が赤くなったような気がした。


『全てを包み隠さず喋ろ』と言われているような気分になる…まあ嘘ついても仕方ないしな。


こくり、と頷き、『啓作』という名前らしい男の先輩がワードの準備を終えたところで俺に対する事情聴取が始まった。


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