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Magius!  作者: 高郷 葱惟
17/67

#4‐2

楓が授業を終えて生徒会室に来た時、なんか制服に着られた子が一生懸命に弁当を食べていた。


当然、その『着られている子』が誠であることや、身長的には楓と大差ない(むしろ縮んでも誠の方が数センチ差程だが大きい)ことは知っている。

だが、『制服に着られている』という状態が小ささを強調してくれてより小さく見えるのだ。


その小ささで弁当を頬張っている姿がなんとなく小動物を思い浮かばせて楓の頬を緩ませる。


「はぁー、なんか癒されるなぁ」

「庇護欲刺激されるわねぇ」

「一年の連中が騒いでたのはコレか。まぁ、二年生うちらも結構騒いでたが」


だんだんと集まる二年生。


上から順番に梨紗、凛、啓作だ。


が、誰も生徒会室に入らず、開け放されたドアの外からこっそりと様子をうかがっている。


「そういえば、さっき職員室に行ったけど男子部の一年で授業を持ってる先生でうわさになってたね。確か一の三の担当だったかな」


そこに三年のひかりも加わる。


生徒会のほぼ全員が外から生徒会室の中を眺めているというのも、なんとも不思議な光景だ。


「………何やってるの、みんな」


そんな一団を人間形態で冷ややかに眺めるマナ。


「…いい加減入ったらどうですか、先輩」


そんな声が生徒会室の中から聞こえてきて、一行はすでに気づかれていた事を思い知った。


* * *


何故か小動物とか、小さな子供を見るような視線を向けてくる先輩や楓たちに疑問を抱きつつ、俺は箸を置く。


どうやら身長と一緒にいろいろ縮んだみたいだ。


三分の一くらい残すことになったが、『味見味見』と楽しそうな先輩やら楓が持って行ってくれてしまったのでまあ、良しとしよう。

食べ物を無駄にするヤツは後で後悔するような目に遭うというのが俺がばあちゃんから受け継いだ教えだ。


「そういえば、こんな写真が出回ってるぞ」


氷室先輩が数枚の写真を差し出してきた。


空になった弁当箱を返してくれた女子陣が写真を覗き込む。

「あ、かわいい」

俺は背後から潰されかけながらも自分で写真を見て絶句した。


被写体は一人の少年(?)だ。周囲との身長差や制服のワイシャツに着られている感が小柄さを強調している。

まくってある袖がいい例だ。


そして細身ではあるが、どちらかと言えば少年というよりも少女と言うべき体つきをしているようにも思える。

顔立ちはやや幼さが残っているようにも見えるが少しだけ凛々しさとか、そう言った要素が見え隠れして中性的な魅力とでも言えるものを持っている。


人によっては『某ファッションモデルの幼少期の写真じゃないか?』とか言いだしそうだ。

が、よくよく見て比べればこちらの方が全体的に丸みを帯びているように見えるし、『女の顔』に見せるための化粧が無い分、『作為的な美しさ(つくりものっぽさ)』もなくなり、より少女らしく見えるだろう。


そんな少年のおそらく授業中だろうか教科書片手に黒板のやや上のあたりに書かれた問題に身長面で四苦八苦して書いている姿やら、音読のために起立しているところとか、休み時間にぼーっとしてる様子とか。





めんどいからぶっちゃけると俺の盗撮写真だ。


撮られる側としては、俺なんか撮っても面白くないだろ、と思うのだが


「これが一セット五百円で取引されてるそうだ。」


写真を裏返してみると写真紙に印刷されている文字が。


『提供:聖奏学園写真部

    景山写真   』


「景山ぁ!」


あの野郎…と俺は中学からの腐れ縁([友人(?)]から格下げにした)に『がー』っ、と吠えてしまった。


「写真部で男子部一年三組の景山君ね。」


楓が財布の中身を改めながら聞き返してくる。

そして五百円玉を見つけ、それを握りしめ生徒会室を出ようとする。


そんな幼馴染の手を俺はつかみ


「…買いに行く気?」

怒りながらにっこりと笑って言ってやった。


「ゴメンナサイ」


素直に謝って来る楓の顔色はかなりの割合で恐怖が含まれていた。

まあ、怒り笑いほど怖い怒り方は無いらしいからな。


「高槻、それはお前にやるよ。処分される前に回収しとけ」


「あ、はーい。ありがとうございます、氷室先輩」


俺が持っていた分やまだ机の上に放置されている写真をすばやく回収する楓。



「…ちっ」


俺としては全部裁断処分する(きりきざむ)つもりだったのだが、手の届かない場所に持っていかれてはどうしようもない。



渋々ながらも諦め鋏を引き出しに仕舞う。



「そういや藤谷。お前、なんでワイシャツなんだ?詰襟(うわぎ)はどうした」


と氷室先輩が気付いたように言ってきた。


「こないだの事件の時に、吹き飛んじゃいましたよ。だから今朝困って、コレにしたんです」


その時、俺もふと気付いた。



あの時、俺は制服と一緒にポケットに入れていた携帯電話やら生徒手帳やらを一緒に吹き飛ばされてしまった。


生徒手帳が無い。それは生徒会役員章が無いという事であり生徒会フロアに進入した時に『強制発動陣』に引っ掛かる筈なのだ。


だというのに、このフロアに足を踏み入れた時には何も起こらなかった。

前の時は取りついていた精霊たちが具現化する為に俺から必要な魔力を吸い上げて大変な事になったというのに。



それは、つまり………


『もう、取りついている消滅しかけの精霊は居ない』



みんな復活を遂げて去っていったのだろう。


よくよく考えればあれだけの魔力があったのだ。

俺の体に大量に流れ込んで収集がつかなくなるほどの量だ。

十分完全復活に至れる量だろう。


むしろ、俺の体が耐えきれなくなるほどの魔力が残ったのだ。

完全復活出来ていないハズが無い。



そう考えたら、永いこと身近に居た存在がいなくなったという思いが浮かび上がって来てちょっと『寂しい』と思ってしまった。



「とーや、どうかした?」


楓が心配そうに顔を覗きこんできた。

急に黙ってしまったから心配してくれたようだ。


「あ、大丈夫。取りついてた精霊たちがいなくなったなって、思っただけ」


取り繕って顔を元に戻す。

戻そうとして変な顔になってしまったが。



困った、この身体になってから感情を押さえるのが苦手になって来たみたいだ



「あら、みんな揃ってる?」


佐伯会長が二人ほど見掛けない付き人を連れてきた。


男女一人づつだ。


二人は会長に連れられて俺たちの前に立たされた


「この二人が新たに生徒会役員に加わることになったわ。はい、二人とも自己紹介」


「えっと、赤城(あかぎ)(あきら)です。よろしくお願いします」

篠田(しのだ)雅人(まさと)です」



妙な時期に…と思ったがまだ入学して一ヶ月ほどしか経っていないことを思い出す。

入学早々の四月に生徒会の役員となった俺たちが異常なのだ。


まあ、その一ヶ月の間に修羅場を何度も経験したせいで、もう長いことこの生徒会に居たような気分になりつつあるが。


「二人とも一年生だから、しっかりと先輩やってあげてよ。それじゃあ、今度は現役役員から自己紹介。」


会長のセリフに従い、氷室先輩、梨紗先輩、矢吹先輩、夏元先輩が俺たちの時と同じように自己紹介をして俺たちに順番が回って来た。


「えっと、高槻楓です。私も今年の四月に入った一年生です」


「同じく、藤谷誠。」


俺は楓の自己紹介にのっかるようにして『以下略』にしてしまう事にした。


これで三年二人、二年が三人、一年が四人という人数構成になるのか。


「それじゃあ、後は適宜親睦を深めておいてね」


その一言で『生徒会室』から談話コーナー状態に戻る。


「えっと、高槻さん?同じ学年って言ってましたけど、何組なんですか?」


「私は三組。あ、よかったら私のことは名前呼びの敬語無しで。同級生だし」

「それじゃあ、私も同じく。藤谷さんは…なんで男子の制服?」


と、赤城(新入生[女子])が聞いてきた。


まあ、意味は判るし正しい意味では的を得た質問だ。


「…俺はおと「嘘だッ!」」


俺は途中で声を遮ってくれた赤城に怒りを込めた視線を送る。


「どう見ても女の子にしか見えないわよ。」


「色々あってこんなんだけど、まあそれは会長の説明を受けてから話すよ」

俺は諦め半分、この先に待つ労力の量の想像に軽い絶望を覚えて溜め息をつく


「そうそう。こんなかわいい子が女の子の筈ないじゃないか」


そんなことを言う篠田(新入生[男])


「それも違うと思うぞ」


氷室先輩がツッコミを入れる。


その時だった。


ピロロロロ…


誰かの携帯電話に連絡が入った。


その場に居たほぼ全員が自分の携帯電話を確認し、違う事にホッとする。


「ちょっとごめんなさい。 はい、佐伯です…はい。」


電話は会長の携帯宛だった。


「判りました。それでは。―――氷室君、各校に招集をかけて。事後処理班総出で例の穴を再確認するわ」


「何が有ったんです?」


パソコンに向かい、メールソフトを起動させながら氷室先輩は尋ねる。


大体、このパターンだな


「例の穴の跡地から魔力反応が出たらしいの。最悪の場合、穴が開くわよ」


「了解。大至急招集をかけます。ポイントはあそこですね」


氷室先輩と佐伯会長のやり取りを聞きながら、俺たちは出動の準備をする。

新入りの二人はどうすればいいのか判らなくてオロオロしてるだけだが。


そんな二人の肩をポン、と叩く佐伯先輩。


「丁度いいわ。二人は『私たち』がどんなことをやっているか生で見れるわよ。氷室君、現場に出てからの二人のお守、よろしくね」


「コンで上空遊覧が精々ですよ?」


「まあ、それも貴重な体験よ。説明も大分省けるわ」


「了解。ちょっと待ってろよ、二人とも。いま出る前の支度を終えるからな」



「梨紗、藤谷くんと楓ちゃんを連れて先発して。現場では護衛役をお願い」



「判りました。行くよ、二人とも」


「はい」

「了解」


その時、なんとなくだが胸騒ぎがする。


だが、それを振り払って先をゆく二人を追いかけた。

はい、今回は『少女化誠』の見た目を一応書きました。


実は『気持ち似てる』だけで『まんま』では無かったりするんですよ。

だって、化粧して作った顔とそのままの顔で同じって、あり得ないじゃないですか。

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