#1‐1
はじめまして、初投稿の高郷葱です。
『ネギ』ではないのでご注意を…
この小説は自分が大学受験の年に現実逃避の為に書いていた物の書き直し版です。
データがロストしているので一から書き直しも同然ですが、完結目指して頑張りますのでよろしければお付き合いください。
「危ない!?」
四月…それも聖奏学園高等部の入学式から一週間しかたっていないその日、俺は突然襲い掛かって来た謎の男から楓を庇って殺された。
胸を突き破ったその『男』の指先が背中を割いた感覚は有った。
おそらく、即死。
楓は…無事だろうか……………
死んだ後って、どんなふうになっているんだろうか…
そんなことを『考えて』いたら物凄い衝撃が外から加えられて俺は強制的に『覚醒』させられたのだった
* * *
恐る恐る目を開けてみたら、何のことはなく数十分前まで翌日の健康診断の準備を手伝わされていた保健室だった。
……状況がよく分からない。
とりあえず確認しよう。
俺は藤谷誠。つい一週間前にこの学校、私立聖奏学園の高等部に入学した一年生。
ついでに多数の背後騒霊持ち。
今いる場所はその聖奏学園高等部の保健室。
…確か、下校途中の路上で俺は胴体貫かれて死んだ筈じゃ?
再び思考の海にもぐりこみそうになった時、突如として視界のど真ん中に現れた医療用の鋏をなんとかかわして…始めて自分以外の誰かが保健室に居る事に気がついた。
「ふう。やっと起きた。」
なんだこの人。人を殺しかけておいて達成感満々な表情…あれ?俺って路上で死んでなかったっけ?
「さて、ここが何処で自分が誰か、判る?」
「…一応……」
自信はないが、その人の言いたいことは解る。
「よろしい。そんじゃ、気をつけて帰りなさいよ」
そう言って、声の主―女の人だった―は保健室を出てゆこうとする
その声には少しだけ聞き覚えがあった。
確か、入学式の時の在校生代表の祝辞をやってた、生徒会長の………なんて名前だっけな…
ぱたん
俺が思考を空回りさせている間に会長殿はいなくなり、その少し後に楓―幼馴染の高槻楓が血相を変えて飛び込んできてふと何かに気付き、妙に『何時も通り』を取り繕っていた。
とりあえず『さっさと帰れ』的な事を言われたのでさっさと楓を送って帰る事にする。
あの『殺人鬼(仮)』がまた出るかもしれないし、何が起こったのか聞きたいからな。
…けれども、楓の家まで送る間、気絶している(?)間に何があったのか尋ねてみたが楓は『な、何のことかな?』と知ってるのバレバレな態度ではぐらかしてきて何も言おうとしなかった。
* * *
さて、状況を確認しよう。
俺は楓を家まで送り届け、自分の家に帰る途中だ。
その途中の一キロ弱の間に、犬を飼っている家はいくつかあるがその大抵は柴犬やゴールデンレトリバーのような中型犬か大人しい大型犬であって…
今現在、俺に襲いかかって来ている『地獄の番犬かよ』と突っ込みを入れたいくらいに真っ黒でドーベルマンを一回りでかくしたような犬(?)なんて居る筈無いのである。
「どーなってんだよ! 一度殺される!ケルベロス(仮)には襲われる!背後霊は全員が存在感が増して騒霊にクラスアップする!なんだ!?今日は厄日か!?」
とりあえず、全速力で逃げながらどうするべきかを考える。
「コマンド?
たたかう
にげる
あきらめる 」
…戦うなんてバカげた選択肢を選ぶ気はコレっぽっちもない事は確かだ。
あんなとと戦うなら命がダース単位で必要になる…というか、そもそもで不可能だし。
それにしても…まだそんなに遅くないのになんでこんなに人気が無いんだ?
住宅地のど真ん中だぞ!?
「ぐるるる……」
「げっ!前からも来やがった!」
後ろから追いかけてきた二匹に加えてさらに一匹が逃げる進行方向の闇からぬるり、と現れた。
アレの瞬発力の高さはさっきから追いかけられて把握済み。横をすり抜けるのは難しい。
けれども、人間は急には止まれないもので俺はどうしてもそのケルベロス(仮)に突っ込んでいってしまい
「ぅわっ!?」
案の定、正面からケルベロス(仮)に突き倒されてしまう
こうなっらた俺に出来ることは蹴り上げることぐらいだが、生物共通の弱点『腹』をさらけ出している時点で『詰み』だ
ふと、明日の新聞かニュースが思い浮かんだ
『男子高校生、犬に襲われ死亡』
きっとグロすぎて細かい死に様はのらないだろうけど。
…冗談じゃない。
そう思ったら自然と左手がケルベロス(仮)の顎の下に添えられていた
「!?」
自分でも何をやろうとしているのかわからない。
盾にするなら利き手じゃない右手を出すべきだ。
「―――ッ!」
目の前で掌から発生した銀色の閃光にケルベロス(仮)の頭が…いや上半身が呑み込まれる。
自分でも何がなんだかよくわからない。
『魔法』とでも思いこむ方が精神の健康的に良さそうなワケの解らない力。
けれども、これで形勢が逆転できる。
銀色の光は数秒間猛威をふるった後そのまま光の粒子となって散ってゆき、その閃光に呑まれていた部分が消し飛んだケルベロス(仮)の亡骸は塵となって散ってゆく。
新手の一匹が消えたことで逃げ道ができた。
けれども俺は逃げることよりも散々追いかけまわしてくれた『犬ッコロ』に逆襲することに、決めた。
銀色の光が掌から発生した時の感覚は『なんとなく』だが覚えてる。
勢いに任せて『犬ッコロ』の胴体に手を当てる。
掌から『何かを押し出すような感覚』と共に膨れ上がる銀色の閃光。
悲鳴も断末魔もなく、三匹のケルベロス(仮)改め黒い犬ッコロは全て塵と消えて行った。
「これで終わりか?」
けれども、なんとなく違和感みたいのが今だにまとわりついてきている
がさり
すぐ横の生垣から音がして慌てて振り向いたらさっきまでのヤツより一回りは大きい、熊と言った方が納得できるようなサイズの狼みたいなのが飛び出してきた
「親玉かっ!」
跳びかかって来たソレをなんとか避けて背後から手を向ける。
触れてなくても、三十センチくらいなら問題はない筈…!
気合いとイメージを込めて左手から絞り出された銀色の閃光は熊モドキに直径十センチほどの風穴をどてっぱらに開けていた。
けれども、それまでの『犬ッコロ』とは違い、今回の熊モドキは塵になったりしないで、逃げだしてゆく。
追いかけるべきなのだろうけど、足腰から力が抜けてその場にへたり込む。
その時になって、ようかく気がついた。
「…足音?」
少なくとも二人くらいが走る足音が無音の世界に響いてくる
「奴らはッ!?」
曲がり角から現れたのは白地に蒼いラインの入ったセーラー服に紺のタイというデザイン…聖奏の高等部女子が着用する制服を着た、ショートカットの女の子だった。
物騒なことに抜き身の日本刀を片手に町中を走って来たらしい。
「………」
俺の事は意識の外に置いているのか、まったく気に掛けずに辺りをうかがう少女。
「おっかしーな。このあたりでハデな魔力反応が有ったんだけど………」
そう呟いてからようやっと俺の事に意識が回ったらしい
「梨紗、状況は?」
後からもう一人、加わったのだがその声には聞き覚えが合った。
「えっと………幻魔には逃げられました。かなりのダメージを受けてるのは確かです。で、この子…」
先に来ていた少女は後から来た人に報告をする
そうしたら後から来たセミロングの何処となく偉そうな感じのする少女…聖奏の高等部生徒会会長はあたりに視線をやってから俺の方に向き
「まったく、一日に二度も厄介事におんなじ生徒が絡んでるなんてね…君、クラスと名前」
会長はそう言った。
「…男子部一年三組の藤谷です」
「一の三の藤谷ね。明日の昼休み、生徒会室に出頭すること。いいわね?」
「…?はい」
生徒会室に?
何のためだ?
「あと、このことは他言無用よ。まあ、信じてもらえるとは思えないけど」
…確かに、こんな夢物語みたいな事、直接体験したりしなければ俺だって信じないだろうさ。
俺が首を縦に振ったら会長は俺から興味を失ったのかどこからかトランシーバーを引っ張り出してきた
「凛、結界の解除をお願い。啓作は凛と合流ポイントに。」
俺は訳が全く分からなくて
「あの…」
声をかけようとしたらその時にはもう会長や帯刀少女は姿を消していた。
住宅街には灯りが戻り人気も感じられる。
「…一体、なんだったんだ?」
俺は状況が全く分からないのを、『明日生徒会室で聞けばいいか。』と居り合いをつけて帰宅することにした。
なんせ、あの『化け物』との戦闘で随分と体力を消費したようでくたくたになっていたのだから。
家に帰って、暇な時間に『何が起こっているのか』を考えてみたのだけれど、結局答えは出なかった。
そういや、明日は昼休みと放課後、生徒会室だったな
そんなことを考えつつ、気がついたら意識は夢の中だった。
…笑えないことに夢の中でもケルベロス(笑)に追いかけられていたが