⑨ 次のポータル
「犬王には、ボクから報告しておくから、安心したまえ。では、由理子の事をくれぐれもヨロシク頼む。」
最後にそう言ったミケーネに別れを告げ、サン・ジェルマンは、次の目的地の座標を、操作パネルに入力する事になった。
北極点のポータルは、雪女サミットの会場だった。
アレは、予想外だった。そこはてっきり、地下世界に繋がっていて、緑色の肌をした地底人に会えると、期待していたのだが…。
南極点のポータルは、雪子さんが破壊してしまったし…エジプトのポータルは、現在、鳥族の管理化にある。次に調査するべきなのは…あまり気が進まないが、あそこか。
そこまで考えた彼は以下のように入力した。
並行宇宙No.xxxxxx
西暦1945年12月05日
時刻15時00分
北緯25度00分
西経70度00分
この、妙にキリのイイ座標の数字。
やはりもう、この段階でアヤシイ。
サン・ジェルマンは、そう思いながらも、時空転位のスイッチを入れたのだった。
出口は、とある海上だった。
すぐ目の前を、アメリカ海軍のアヴェンジャー雷撃機が5機、編隊を組んで飛んでいる。
もちろん、彼の黒いビートルには、いつもの光学迷彩が働いているので、見つかる心配は無い。
間もなく、この編隊が、どこかへ消えてしまうのだ。
そう、何を隠そうこの場所は、後に"バミューダ・トライアングル"と呼ばれる事になる、次々に航空機や船舶の失踪事件が起きている、例の"魔の海域"なのである。
今からまさに、その最初の事件が、起きようとしているのだ。
サンジェルマンは、黒いビートルを、光学迷彩の透明モードの状態にしたまま、さり気なく編隊の6番目の位置に着けた。
程無くして、目の前の空間に、真っ暗な穴の様なモノが現れた。そして、ビートルを含めた雷撃機の編隊を、全て飲み込んでしまったのだ。
彼が並行宇宙を旅するマシンを、手にしていなければ、こんなマネは、怖くて出来なかっただろう。イザとなれば、リセットボタン一つで、いつでも元の時空に戻れる自信が有ればこその、この行動であった。
ポータルの出口は、真っ赤な葉が生い茂る、ジャングルの上空だった。
なるほど。コレがウワサに聞く赤い森か。彼は感心した。それを見るのは初めてだったが、様々な地域で、"地球のもう一つの顔"として、有名な伝説になっていたのだ。




